命のローソク 4 管理人
宇宙のある星の、「赤いローソク」がズラッと並んでいる前で、いろんなことを考えると、すぐに答えが聞こえました。
このローソクは、何の意味で存在しているんだろう?
そのローソクはな、「命のローソク」なんだ。
ひとつひとつのローソクが、「人間の命の長さ」を示しているんだぞ。
ローソクをよく見て見ろ、「名前と生年月日」が刻まれているだろう。
そう、それがお前が「名前と生年月日」だけで、相手のことがわかる理由だ。
この場所を管理している存在達より、もっと高い次元にいたお前は、「名前と生年月日」だけで過去も未来もわかるし、「死の瞬間」も見ることもできるだろう。
そのことを周りの人に話したか?
言えるわけないじゃないですか・・・。
幼稚園の頃から、家にやってきたおじさんを見た瞬間に、死ぬ時間と場所と方法がわかるなんて、辛いに決まっているでしょ。
そんな力はいらないって、何度も言ったのに、あまりにしつこいから誰にも言わないって決めたんです。
でも、なんで、「名前と生年月日」だけで相手のことがわかるのか、これで納得しました。
じゃあ、またな、ゆっくりしていろ。こっちも忙しいんだ・・・。
ここを守っている管理人さんは、きっと、幾つもの星の命を管理しているのだと、この会話で思いました。
また一人ぼっちになったので、じっくり、赤いローソクを眺めていると、生年月日から3歳になるローソクが、もうすぐ消えそうになっていました。
え!この子、3歳だよ!
なんで、死ななきゃいけないの?おかしくない???
それはなあ、その子のお母さんとの約束で、お母さんが次に生まれた時に、「自分の子供の子供」になって生まれたいと頼んだので、前の星のお母さんが子供になって、3歳までの契約で終わる命だから、それは最高に「愛が成就したローソク」なんだぞ!
そんな願いが、あるのですね?
あることは、ある。
しかし、「命の駆け引き」というルールがあって、親子だけは命の時間のやり取りをしても良いルールになっているんだ。
他人の命の交換はできないが、親子なら、どちらかを長くして、どちらかを短くすることは可能なのだ。
だから、生まれる時に、母の命か、子供の命のどちらかを選ぶ時があるはずだが、それは、母になった魂の経験によって、自分の命を優先する者と、子供の命を優先する者がいるだけなんだ。
親子は、親子で「命の駆け引き」をしているので、どちらかが長い場合は、必ず、どちらかの命が短くなるようになっているのだ。
もし、兄弟姉妹がいれば、その駆け引きはもっと複雑になるが、「命の時間」には限りがあるので、当然のルールなのだ。
これも、地球だけのサービスだし、他の星には無いので、理解できたら、いつか、人間達に教えてあげなさい。
今の人間は、医療や薬を使って命を長らえているが、それは同時に、子供達の命を縮めていることになることを知らないのだ。
昔は、自分が死を感じたら、食べ物も水も飲まずに、一人で静かに眠るように死んだものだが、「今の死」は、静かでは無いだろう。
死ぬまで過ごした時間が、冥土へ行った時に、永遠に続けて体験する時間になるとは、誰も知らないからな。
お前が今回、知ったことを世の中の人間が知ると、きっと、生きる価値観や死の価値観が変わるだろうから、お前がその導きをしてあげなさい。
いやですよ!
できるからといって、知ってるからといっても、誰も、僕の言葉なんか、聞こうともしませんよ。
この世は、「生き地獄」の中で、お金だけに執着しているし、そのうえ、親子でも男女でも、争いばかりで、もう疲れました。
そんな仕事は、誰か他の人に任せて、私はいつでも早く死にたいので、どうか、ここにある僕のローソクを消して下さい。
あなたが消さないなら、自分で消しますよ!
さあ、自分のローソクを探そ!
おいおい、早まるなよ!
お前は俺以上の魂経験があるので、自分で消すことはできないはずだが、もし見つけても手を出すなよ!!!
急いで、これから帰るから、そこで少し待っていろ!
そう言われると、俄然、本気になって自分のローソクを消したくなり、必死に、1本1本のローソクの文字を読みました。
しかし、ローソクの数が、本当に多いのです。
もう、100mは探しているのに、まだまだ先が見えないし、その奥にもっとあり、さらに奥にも段があって、ズラッと並んでいるので、途方に暮れました。
よし!ここで「霊力」を使えるかどうか、試してみよ!
僕のローソク君、今、どこにいるんだい?
僕は、あなた自身であり、あなたは僕の命そのものだから、ただ会いたくて来たので、どこにいるか教えて!!!
・・・・・・・・
しばらくすると、声が聞こえてきました。
こっち!こっち!、こっち!こっち!!!
遠いところからですが、そこには今までにない大きな祭壇があって、その一番上に並んだ太いローソクの数本の中に、自分の名前を見つけました。
いやあ、高いところにあるなあ。
あそこまで行くには、この祭壇をよじ登って行かないと行けないし、もしかすると、祭壇が壊れてしまうかもしれないし、どうしようかな・・・。
でも、自分は1日でも早く死にたかったことを思い出したので、祭壇を一気に駆け上がる決断をして、「気」をためました。
そこへ、管理人の声が聞こえてきて、
どうした?
何か、しようと思っているのか?
やめた方がいいぞ!
ここは、俺が管理しているので、この場所の見えている映像を変えることも、場所を入れ替えることもできるので、もし、お前が自分のローソクめがけて走り出したら、この見えている赤色ローソクを一瞬で消すぞ!
実際に消すのか、見えなくするのかは、お前次第だが、どうだ、チャレンジするか?
何だあ?この挑発的な言い方は・・・。
「本当に管理人か?」と思いましたが、一旦、言われた言葉はこちらも引けませんので、私はどんな風に映像が変わっても、魂の力で絶対に自分のローソクを掴んでやると決めてダッシュしました。
一瞬で画面が消えて見えなくなりましたが、実際は、まだあるのを感じるので、手を伸ばしました。
すると、手の先にローソクが当たったのに、奥へローソクが引っ込んでいきました。
それなら自分の体を柔軟にして、その先に届くように設定し直し、「こんにゃく」みたいな体にして手を伸ばすと、赤い自分のローソクを掴むことができました。
よし!やったぞ!
あとは、火を消せばいいだけだ!
さあ、ふーーーーーー!
あれ?
思いっきり息を吸い込んで、ふーーーーー!!!
いくら吹いても、炎が消えない!
じゃあ、床にローソクの芯を擦り付けて消してやる!と思ってすぐにやってみても、全く火は消えません。
少し、悲しくなりました。
ここで消せれば、肉体は終わるはずなのに・・・。
なぜ?どうして、僕のローソクは消えないの?
お前のローソクを含めて、あの祭壇の最上段のローソク数本は、俺でもどうにもできない力で守られているんだ。
だから、俺はただ、この場所を守っているだけさ。
他の人間のローソクならすぐに火を消して、人間を殺すことは簡単だが、お前のローソクは俺でも消せないんだ。
何度も挑戦してみたが、何度やってもダメなのさ・・・。
あのう、すいません。
もしかして、あなた、私の過去世で、何か私に恨みがありますか?
今の言葉を聞いていると、私のローソクを消したいのは、私以上にあなたのような気がするんですが、勘違いですか?
よくわかったな、坊主!
俺は、この場所へ連れて来られる前は、大きな星の民を束ねる王族の一人だったが、ある時、星同士の反乱が起きて、その先頭で戦ったのが、お前と俺だったのさ。
お前は、記憶を消されているので気づかないと思うが、俺は一番最初に会った時からすぐにわかったぞ!
でも、どうやっても、お前を殺すことはできないと、わかったのさ。
さっきまで、他の星を守っている奴らにも、色々、聞いてみたんだが、お前ほど強い魂はいないので、誰もお前を殺せる奴はいないということが、さっき、わかったばかりなんだ。
こんなことを子供のお前に言うのもなんだが、辛いんだぞ、こっちも!
もう、僕の気持ちなど、関係ない世界の話になっています。
ふと、現実世界の自分を思い出し、幼稚園児の自分がお釈迦さんの仏像の前で座っている姿が見えたので、もう、帰ることにしました。
ここへ来る「ライン」はもうわかったので、また、ここに来ようと決めました。
将来、僕がやることを攻撃する人や、僕の大切な人を苦しめる人は、そっと、ローソクの炎を消せばいいだけなので、現実で戦わなくて良いので安心です。
お釈迦さんは門の前で待っているだろうから、帰り道でいろんなことを教えてあげよっと!