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命のローソク 10 大僧正と禅問答対決

すっかり、忘れていた幼稚園時代のことを急に思い出したので、ここに記録として追加します。

👉命のローソク」シリーズを、まだお読みでない人はこちらを読んでからにして下さい。

腹切りをしたお寺の住職の魂を鎮魂するお祈りが、亡くなって1ヶ月以上経ってから、道向かいのお寺で行われるというので、母と二人で行きました。

先頭に、ものすごく派手な袈裟を着た高齢の坊主が一人で歩き出し、その後ろに20名近い若い坊主が連なる派手な登場に、参加者も驚き、声が出たほどです。

最初に、派手な袈裟を着た坊主が挨拶をして、長々、こちらの住職にお世話になった思い出を語ったあと、全員で長いお経を上げましたが、私はすぐに「あのバカ坊主」だとわかったので、きちんと声を出しているかを確認したくて、すぐ後ろに座りました。

若い坊主の声は合唱のように綺麗な声でお経を唱えていますが、中央に座っている派手な坊主は、やはり、声を出していません。

この坊主、何のためにお経を唱えに来たのかわかってないと思ったので、小声で「声を出してお経を唱えて下さい!」と何度も言いましたが、聞こえていないふりをして最後まで座っていました。

ものすごく頭に来たので、母の席に戻り、どうしようか考えていると、坊主たちのお経が終わり、列が戻ったあと、若坊主が一人、やってきて、「あのう、さっき、大僧正に声をかけたのはあなたですか?」と聞くので、「はい、そうです」と答えました。

「大僧正が、あなたと二人だけで話をしたいと言っているので、すいませんが、着替えが終わるまで、この本堂にそのまま、いてもらえますか?」と言うので、「はい、いつまでのお待ちしますので、どうぞ、ゆっくり着替えて下さい。」と返事をしました。

参加した人たちが一人づつ、お焼香をして帰りましたが、母が一緒に帰ろうと言いましたが、「いえ、私はあのバカ坊主と話をしなきゃいけないので、母は家に帰っていて下さい。」と答えて、母にも帰ってもらいました。

大きな本堂の中心に一人で正座し、亡くなった「住職の魂」といろんな話をしましたが、最後に込み上げてくるような思いが出てきたので、そのまま言葉にしてみました。

「少しづつ、声を大きくして、唱えなさい」と亡くなった住職から指導の声が聞こえたので、私は自分ができる範囲で溢れ出る「お経」を口ずさみながら住職の魂の鎮魂のお経を唱えていました。

約30分くらいの長いお経を口にしたあと、目を開けて周りを見ると、先ほどのバカ坊主と若い坊主たちが私を囲むように座っていました。

若い坊主が私に声をかけ、「あなたが先ほど口にしたお経は何というお経ですか?」と聞きますが、「お経の名前はわかりませんが、亡くなった住職が僕の体を通して、込み上げさせた言葉とフシをそのまま口にしただけです」と答えました。

すると、他の若坊主も「もう一度、先ほどのお経を唱えてくれれば、今、カセットで録音しますので、お願いできませんか?」と聞くので、天上界にいる亡くなった住職に聞いてみると、

「お経は、カセットに録音して覚えるものじゃない!

お経は心と魂を開いて、全身で受け止めながら覚えるものだから、書いたり、録音した奴は、絶対に、本当のお経は覚えられないぞ!」と怒っていると伝えました。

若坊主たちは全員、シュンとなり、次の言葉が出ないまま時間が過ぎると、あの「バカ坊主」が口を切りました。

「なあ、若いの。俺のことは覚えているかい?一度しか会ってないから、覚えてないかな?」

「あのう、バカにしないでくれますか?

僕はどんな人でも会った人の顔は一瞬で覚えてしまいますし、その人が何をしたのか、どういう人間かも、きっちり覚えています。

あなたは、亡くなった住職と禅問答対決をして、三度、負けたので、「バカ」の位ではなく、「坊主」の位まで下がったはずなのに、なぜ、今日のお経はあなたが先頭になったのですか?

本当なら、一番後ろからそっと出てくるレベルの人間のはずなのに、なぜ、あんなに派手な袈裟を着て、声も出さずに、ただ座っていたんですか?

亡くなった住職も、ものすごく怒っていましたよ!」

・・・・・・・・・・・・・

「バカ坊主」は、次の言葉が出てこなくなり、しばらくじっとしていました。

すると、こんなバカなことを言い出しました。

「確か、お前は、亡くなった住職と禅問答で勝ったと聞いているが、それは本当か?

もし、本当なら、今、ここでワシと対決しようではないか?

それとも、お前が勝ったと言うのは、ウソなのか?出まかせか?」

私は「神に嘘はつかない契約」をしているので、私の言ったことを嘘と言った人間を、絶対に許しません。

ものすごい地獄に落ちるような呪いをかけてやろうか?それとも、この人の家族を気狂いにしてやろうかと、「悪魔心」も動きましたが、住職の追悼祈りの日なので、「いいですよ」とだけ言って、バカ坊主と向き合いました。

「お前たち、これからワシは、この坊やと禅問答の対決をする!

お前たちはそのやりとりを聞いて、どちらに軍配が上がるかを自分が座る位置で示しなさい。

お前たちがどちらに座っても、一切、あとで問うことはしないので、正直に感じたまま、座る位置を決めなさい。

さあ、はじめようか?坊主・・・。」

20名以上いる若坊主たちの前で「バカ坊主」がこう言ったので、バカだなあと思いましたが、私は黙っていました。

バカ坊主に「坊主」と言われるのも頭に来たけど、まあ、対決したらきっと、その答えは出ると思ったので、黙って頭を下げて、「よろしくお願いします」と言いました。

 

「では、最初の問いだ。お前はなぜ、このワシと対決しようとしたのか、その理由を分かりやすく言いなさい。

その答えによっては、どのレベルの禅問答にするか考えるので、素直に、今の気持ちを言いなさい。」

・・・・・・・・・・・・・・・

私はあなたが勝手に、「禅問答をしよう」と言ったので、答えたまでですので、私からあなたに喧嘩を売った記憶はありません。

もし、そうあなたが捉えているなら、あなたは記憶喪失か、バカのどちらかだと思います。

あんまり、こんなバカな会話をしていると、聞いている若坊主たちも嫌になると思うので、早く最初の「問いかけ」をして下さい。

それと、きっと、あなたはちゃんと勉強していないと思うので、あなたたちが習っているお経の最高レベルの質問でもいいので、どうぞ、聞いて下さい。

私が答える返答は、きっと、亡くなった住職がサポートに入るので、どんな質問でも、私は答えてみせます。

どうぞ、最初の問いをお願いします。

「わかった!そこまで言うなら、最後にしようと思っていた質問をするぞ!

「無」とは、何か?

「無」の意味を分かりやすく答えてみよ!!!」

・・・・・・・・・・・・・・・

「無」という字は「無い」と書きますが、もう、文字にした段階で書いた人の「思い」が、そこに写っています。

坊主はお経の「写経」をして、自分の身を削ぐ訓練をすると、亡くなった住職から聞いていますが、実は、「写経」では身を削ぐことはできません。

ただの「時間の無駄」です。

「無」を本当に悟りたければ、無ではない「有」を先に体験して、徹底的にこの世の中にあるものを知り尽くすべきなのです。

「有」を知らぬものが、「無」を語るとは、片腹痛いですわ、ハ、ハ、ハ!

・・・・・・・・・・・・・・・・

怒った顔をしたバカ坊主が、また、こんな質問をしました。

「お前はまだ幼稚園だと思うが、そんなお前がこの世の中にある全ての「有」を知っているわけないと思うが、そんな無知なお前がなぜ、「有」を学んでから「無」を悟りなさいというのか?

ワシの方が、片腹痛いわ!ハ、ハ、ハ!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・

優しく答えてやろうと思ったのに、この言葉で一気に我慢できなくなり、本気で次の返答をしました。

では、あなたに問います。

この世の中で、長生きした人は、誰よりも、知識や見識が豊富で、誰よりも「人を導く知恵」を持っているのですか?

あなたは、このたくさんいる坊主の中で「最年長」だと思いますが、なぜ、亡くなった住職に捧げるお経で、声も出さず、ただボーと座っていたのです?

それは、つまり、お経をきちんと覚えていないということだし、坊主の修行も真面目にちゃんとやってきて無いということですよね!

ならば、その無能なあなたが、私に「生きた年数が少ない」と言って、私をコケにする理由がわかりません。

もし、あなたが、私より「有能」ならば、こんなバカは話のやり取りではなく、本気の禅問答に早く入りましょうよ。

そうじゃないと、ここで私たちの対話を聞いている若坊主たちに、申し訳ありません。

さあ、真剣に、禅問答を始めましょう!

・・・・・・・・・・・・・・・・

頭から湯気が出るほど「バカ坊主」は怒っていましたが、隣にいた側近らしき坊主にアドバイスされて、こう質問してきました。

 

「仏教の世界には、胎蔵界曼荼羅と、金剛界曼荼羅があるのだが、その違いをわかりやすく答えよ!!」

ほほう、ちゃんと勉強している側近らしい質問なので、私はこう答えました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「この世の仕組みに嘆いたお釈迦様が自分を問うかのようにインド中を歩き回り、亡くなる前に気づいた悟りの一つの問いですね?

じゃあ、お答えしましょう。

「胎蔵界曼荼羅」と「金剛界曼荼羅」という言葉の本当の意味は、私たち人間が母の子宮から生まれる前の時間を「胎蔵界曼荼羅」と呼び、肉体を持ってこの世に生まれた時間のことを「金剛界曼荼羅」と呼びました。

しかし、この「金剛界曼荼羅」は、あとで他の人が書き換えた言葉であり、お釈迦様が言った言葉とは違います。

現世(げんせ)と俗世(ぞくせ)を表す意味では同じですが、この言葉は、生きている人間の視点で、誰かが言った言葉ですし、「胎蔵界曼荼羅」と「金剛界曼荼羅」を口にしたお釈迦様の思いは、自分が生まれる前に、もし、カースト制度の一番下に生まれていたら、どんなに相手の気持ちがわかる人間になれただろうか、と反省した言葉なので、「金剛界曼荼羅」と勝手に呼び名を変えられたことをとても悔やんでおられます。

「金剛界曼荼羅」の意味をいいように言い換えた人たちの心の中は、「この世は金じゃ」と言わんばかりに、困った時は金を持って寺に来い!、困った時は食べ物を持って寺に来い!、そうすれば少しくらいは心が軽くなるお経を唱えてやるぞ!という、「仏教の営業」をするための言葉なので、亡くなった住職も、この言葉は間違いだと言っておられました。

つまり、俗世は俗世であって、奪い合いもたくさんある世界だけど、みんなが生まれたお母さんのお腹の中に戻れば「同じ子供だ」と言う意味でを表した言葉です。

つまり、あなたが今、使った「金剛界曼荼羅」には、欲と金がくっついている言葉なので、庶民の食べ物とお金を巻き上げる言葉だと私は理解しています。

もし、本当にお釈迦様が言った言葉を知っているのなら、今、ここで教えてください。

その教えの言葉と意味をあなたが答えなければ、私の言い分を打ち負かしたことにはならないので、どうぞ、最高のお知恵を今、ここでご披露下さいませ。

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

とても長い時間が流れました。

「バカ坊主」と、隣にいた側近の賢い坊主も、次の答えをどうするか決まらず、何度も話し合いをしていました。

・・・・・・・・・・・

あのう、すいません。禅問答って、本当は「一対一の対決」ですよね?

まあ、「バカ坊主」のあなたが、私に勝てるとは思えないので、どうぞ、その横に座って「バカ坊主」にアドバイスしている賢いお坊さんと直接、対決しましょう。

その賢いお坊さんが、もし、私に負けたら、バカ坊主と二人で、私に土下座して下さい。

私はあなたたちを「バカ」と呼んでも意味がないので、この若い修行僧たちの前で、きちんと土下座するだけで私は結構です。

ささ、お年寄りは下がって、賢いあなた、私と一対一でやり取りしましょう!

「バカ坊主」の隣にいた賢いお坊さんは、文句を言いたそうな顔をしながら、私の正面に座ろうとしたので、私はこう言いました。

たぶん、あなたと私の禅問答は、腹を切って亡くなった住職の「追悼禅問答」になると思うので、本堂の扉を全て開けて、冥道の奥にいる住職に、聞こえるような禅問答にいたしましょう。

だからこそ、あなたたちがいつも座る席の真ん中に私たち二人が座り、亡くなった住職の魂に恥じない、禅問答を致しましょう。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

続きは明日です。

 

 

 

 

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