母の教え:他人にできて出来ないことはない!
ある時、家に帰ってきた母が怒るように私にこう言いました。
いいかい、人生に出来ないことなんて無いんだよ!
だから、「出来ない」なんて言い訳は一切、言うんじゃないよ!
きっと、何かあったのだと思っていると、母はイライラしていたようで、台所の包丁で指を切りました。
すると、我に帰ったようで、私のところに戻って来て、こう言いました。
さっきは、ごめんね。
今、レジャーセンターの食事を作るアルバイトをしているんだけど、本当に頭にきたのでお前にぶつけたのさ。
そうしてら、包丁でほら!指を切ったわけさ。
これは、ご先祖様に怒られたとわかったので冷静になれたんだ。
なんでさっきは、怒っていたの?
また、考えるだけでイライラするけど、お前のために教えておくわ。
3日前から新人の40代の主婦のアルバイトが入ったんだ。
私は先にやっているから手順を教えてあげて、3日も立ったので自分でできることはやりなさいと言うと・・・。
「えー、わかりません。どうやっていいのか、わからないので教えて下さい」、と言うのさ。
あんたは何日、私の仕事の何を見てたんだい!
先輩の仕事を見て、仕事を覚えようという気持ちは無いのかい!
タバコは吸いに行くし、お客さんとべちゃくちゃ話しているし、仕事が溜まっているのに、どうして自分で段取りを考えて仕事をしないのさ。
「だってえ、私は今まで専業主婦で、仕事なってやったことないし、ここの仕事も時間だけ過ぎればお金をもらえると聞いたので来ただけなんです。
だからあんまり、厳しく言わないで下さい!」
この言葉は、母を最高潮に怒らせる言葉だと、子供でもわかりました。
よく手を挙げなかったね!?
いや、本当にお前だったらぶん殴っていたのに、さすがに、女が女を殴ったら、殴った私が悪くなるでしょ。だから、我慢したよ。
でも、頭に来たので、その女に言ってやったさ。
あんたねえ、「仕事の意味」を勘違いしているよ。
「仕事」ってね、お金をもらうためだけに働くんじゃないんだよ!
私も家に帰れば、農家の仕事も、子育ても、炊事も、掃除もあるけど、これも「女の仕事」さ。
でも、父さんは一銭も私にはくれないのさ。
だから、裁縫の仕事で内職してるけど、今度、私の父親の誕生日があるので、自分で稼いだお金でプレゼントを買ってやりたくなったんだ。
だから、お金を頂ける仕事があることに私は感謝して毎日、ここまで通っているんだ。
なのに、なんだい、あんたは!
あんたみたいな人間は、外へ出て働こうなんて思っちゃいけないよ。
家の中で、父ちゃんと子供にだけ適当にやって生きてなさい。
そんな生き方しかできない女は、さっさとこの仕事をやめて家に帰りなさい。」
その奥さんがすぐにアルバイトを辞めたのは当然です。
母は、最後にこう教えてくれました。
「人生には、ふた通りの人間しかいないんだ。
自分のことばっかり考えて生きている人間と、他人に喜んでもらおうと努力している人間さ。
どんな偉い人でも、お母さんのお腹から産まれて、おっぱいを飲んで育ったはずさ。
だから、人間に「差」なんてないんだよ。
他人が出来て、自分に出来ないことは無いと覚えておきなさい。
最初からやらない奴か、途中であきらめた奴が、ゴチャゴチャ、あとで言ってる奴もいるけど、そんな話は聞くんじゃないよ!
他人にできて、自分にできないことなんて無いのさ。
最初は、失敗もたくさんするけど、怒られて怒られて、悔しかったら上手くなるまで努力することさ。
どんな仕事でも、やり続ければ絶対に、「一人前」になるんだ。
そう、覚えておきなさい。
やる前に「できない」なんて言う奴は、おっぱい飲んでるガキと同じさ。
大人なら、できるできないじゃなくて、どうやってうまくやるかを考えて取り組みなさい。
それが、大人ってもんだよ!」
小学4年生の子供にとって、他のおばさんたちがバカに見えるくらい、私の母は努力家ですが、他人から「頑張っているね」と言われるのが、いやなんだそうです。
だから、暗いうちから畑に出て仕事をして、みんなが働き出す頃に、ゆっくり家を出てノンビリやってるように見せている母でした。
「農家は、一生、農家だ!」と自分の父に厳しく言われた母の悔しさなのでしょう。
自分だって努力すれば、どんなことでもできる母だからこそ、町内の女性で一番最初に車の免許を取り、トラクターを運転する男勝りの母ですが、私はそういう真っ直ぐな母が大好きです。
貴重な教えをありがとうございます。
私も社会へ出て、母と同じ気持ちに何度もなりますが、「自分に言い訳する人生」だけは嫌なので、一生懸命やることしかできません。
これも「母譲り」だと分かっていても、そういう自分も大好きです。
ありがとうございます、お母さん。