【ダイエー】「物流輸送ツール」を開発した体験談 2 カゴ台車
翌日、「次長」は全ての課のアルバイトを集めて、強制的に「受け渡し課」で一気に荷下ろし作業を指示していましたが、マネージャーたちの文句を一切、聞かない人なので、マネージャーたちと喧嘩になりました。
でも、さすが魚屋で鍛えた体と腕力はすごくて、全てのマネージャーの顔をボコボコに殴ったので、翌日の朝礼は、マネージャー全員の顔と目が腫れていました。
次長:「文句があるならいつでも俺のところにこい!」と朝礼で言ったほど、気迫がある「次長」だったので、部下からは好き嫌いがあってか、よくバックルームで殴り合いをしていました。
どこかでマネージャー同士が喧嘩を始めて「次長」に電話すると、ダッシュで走ってきて、二人ともボコボコにする「次長」なので、いつも、私は喧嘩している二人に、「次長を呼ぶよ!」と脅して、喧嘩をやめさせていました。
平和が一番!でも、「暴力を使ってでも平和は守らないと」、必ず、周りに飛び火することを私は体験で学んでいるので、「自己防御法」は身につけています。
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「受け渡し課」の荷物の積み下ろしが早くなったおかげで、並んでいたドライバーたちの待ち時間も減り、本社に取引先から「お礼の電話」が入ったほど、うちの店の「業務改善」は有名になりました。
新店オープンから働いていた私は、毎月、ジリ貧で売り上げが落ちるのを悩んでいましたが、清田店という札幌市内のハズレなので、人口がまだ増えていないからこそ、「別な対策」を考えることにしました。
「受け渡し課」によく来る「赤帽さん」と話していると、「何でもいいので荷物を運ばせて欲しい」と言う言葉から、「お店独自の宅配サービス」を提案しましたが、赤帽と契約すると経費が高いことが問題になり、最初の提案はボツになりました。
じゃあ、赤帽さんの代わりに、「売上が悪い暇な課の社員を集めて宅配をやればいいでしょ」と「次長」にいうと、店長に掛け合ってくれて、即、「宅配サービス課」ができました。
「宅配サービス課」のマネージャーは、受け渡し課のマネージャーが兼任し、NO2の「代行」は、提案者の私になりました。
つまり、私は日用品の担当者でありながら、「宅配サービス課」の代行になったわけです。
同時に毎週、代行者だけが集まる「代行者会議」にも出席するようになり、皆さんの売り場の商品でお客様が持ち帰りづらい物に、「お届けしますシール」を貼ってもらうことになりました。
どうせ送るならと、食糧品や他の物もたっぷり送れることを伝えると、どんどん顧客が増えました。
利用したお客様から、「届けてくれた段ボールの処理に困るので持ち帰って欲しい」と言われたので、予算を持っている「店長」に直談判しに行きました。
「専用のプラスチックの箱」を使って、お客様自身に玄関前に置いてもらえば、捨てるものも無くなるし、何度でも使える入れ物を回収できるから経費は安いと主張したのです。
バックルームにあった、あり合わせのプラスチック箱のサイズがまちまちでしたが、「届けた箱は持ち帰ります」と、表示すると、さらに「宅配利用者」が増えてきたので、私も時々、仕事中に自分の車で配達と入れ物の回収をしたほどです。
店内にあるプラスチックの箱はサイズも違い、使いづらいサイズだったので、自分が休みの日に、札幌市内のプラスチック成形の専門会社に一人で交渉しに行き、私の要望を言うと、全く同じものを作るつもりで「ラフな図面はできている」と手書きの図面を見せてくれました。
しかし、この会社の社長から、「運転資金がもう底をつくので、従業員の給料も払えるかどうかわからない」と言ったので、まず、100個、試作品を作るお金を自分の給料から払いました。
30万円弱だったと思いますが、親と祖父に渡そうと思ったお金を社長に渡すと、涙を流して喜んでくれました。
その代わり、私は毎日、白いご飯にお湯をかけて食べる日々が続き、次の給料日まで無駄なお金は一切、使わないことを覚悟しました。
1ヶ月後に、プラスチック成形会社の社長から「出来上がった!』と連絡があり、清田店に納品してもらい、各課に数個と、食品と日用品にたっぷり渡して、残りは、毎日のように納品してくれる「仲良しの取引先」にお願いして使ってもらいました。
まず、すぐ「食品の取引先」から連絡があり、お菓子の小分けに使いやすいのと、納品後に折りたためることに感動したと電話を頂きました。
その社長から「できればもっとたくさん欲しいのだが、どこで買えるのか?」を聞かれたので、「プラスチック成形会社の社長」から連絡させることにしました。
「販売権」を固定するには、購入先を一箇所にすることなので、全ての問い合わせと営業は、「プラスチック成形会社の社長」からさせることでリピートが生まれるからです。
他の取引先も使いたいと言い出したし、売り場の担当者たちももっと欲しいと言うので、問題点を集約をして、納品する台車にあわせたサイズに変更してもらい、色を何パターンかを作ってもらって、パートさんでも最運びやすく片付けやすい折りたたみ式のプラスチック製のケースのサイズを決定しました。
「特許」を出願するかどうかを悩んでいたプラスチック成形会社の社長に、それまでプラスチック業界では、似た形を「折りたたみ式コンテナ」と呼んでいると言いましたが、私が言いづらいから「オリコン」という名前で「特許」を申請して下さいとお願いしました。
調べると特許申請はされていないことが判明したので、「オリコン」という名称を「商標登録」して、どの会社でも作れる「条件付き特許申請」にしてもらい、安い値段でどこの会社でも作れるようにしたので、工場拡大の投資をしなくても収入が入るように、「特許」は社長に全て渡すことにしました。
天無神人:もし、この「オリコン」が便利で使いたいと思った会社は、あなたの会社に特許申請して、1個につき300円という「利用権付きの特許」を申請させて下さい。
通常は、特許を10年、使わせないように申請するのですが、それだとアメリカに負けるので、もし、本州のプラスチック成形会社が作りたいと言ったら、いくらでもいいので「利用権」を買ってもらってから、一個につき、「100円を使用料」として回収して下さい。
つまり、オリコンをいくつ作るのかをあなたの申請しないと、作れないし、型を使わせないので、絶対に、作りたい会社は利用権を払います。
そうすれば、どこでいくつ作っても、作るたびに「100円が入る仕組み」なので、あなたが自分で作れば300円入り、次の会社は200円入り、その次の会社は100円入る仕組みになるので、お互いに信頼し合える仕組みができると思います。
売るほうも、買うほうも、使うほうも、「三方よし」になる仕組みです。
私のスーパーの関連会社にも、すぐに広まると思うので、たぶん、爆発的に利用したい会社も増えますが、まずは、スーパーやコンビニの流通業と運送業と納品業者さんに営業をかけて下さい。
「色別に納品されると、商品がわかるのでいいな!」と従業員も言っていたので、仕分け作業も楽になる七種類の色も作って営業して下さい。
この全ての「権利」は社長個人に渡しますので、私のお礼として、各色100個の無料サンプルを作って私の店に届けて下さい。
無料で頂いた700個の「オリコン」をお店の従業員とアルバイトに使ってもらって意見を聞きながら、仲良くなった取引先にも半分プレゼントして、商品の区分けに使ってもらい、意見を集めて札幌の物流課に、「次長」から「全店導入の提案」をしてもらいました。
私の提案は、北海道本社の「物流本部長」がとても気に入ってくれたそうで、北海道の全部のお店で採用が決まり、取引先にも我が社から買えば安く買えることを条件として、一気に食品と日用品の取引先に納入が決まりました。
すぐに、プラスチック会社に「1万個」の注文が入り、社長からお礼の電話があったので、こう言いました。
天無神人:これだけ早く一気に物事が進むのは、我が社の社風なので、きっと、一気に全国展開にもなると思うので、本州で同じようなプラスチック成形会社に連絡して、早く「特許の使用権を買え!」と伝えて下さい。
きっと、100万個、1000万個と注文が入るので、1日も早く電話して下さい。
北海道には我が社の直営店は7店舗しかありませんが、これから関連会社にも納品されるので、一気に北海道内で60店舗まで伸びますし、本州の「物流本部」に採用されれば、全国の直営店で250店舗あるし、関連会社を入れると、600店舗はあるので、莫大な売り上げになると思います。
どうか、その収益を「従業員のボーナス」で配ってあげて下さい。
プラスチック成形の現場を見させてもらった時に、アルバイトもパートさんも、本当に大変な仕事をしているのがわかったので、僕からもお願いします。
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10万個、50万個、100万個と、次々に、本社から追加注文が入るたびに、プラスチック成形会社の社長から連絡が来て、「吉岡さんの取り分もとってあるんだけど…」と言いましたが、「全て従業員のボーナスとして渡してあげて下さい。僕は一切、お金をもらうつもりは無い。」と伝えました。
しばらくすると、オリコンをプレゼントした仲良しの「取引先の社長たち」が私のお店の店長を訪ねてきて、こう言いました。
ダイエーさんの納品は、「オリコン」のおかげでたいぶ楽になりましたが、他のスーパーやドラックストアやコンビニに納品する時の「台車のサイズ」が違うので、何か「業務改善のプロ」がいると聞いたので教えて下さい。
と、私が店長室に呼ばれて、店長と次長と取引先の前でこう言いました。
天無神人:私は毎日のように「受け渡し課」で荷物の動きを見ていましたが、それまでいろんなトラックから出てくる荷物の台車を見ていた私は、運転手さんたちに、「どの台車が一番扱いやすいか?」を聞いて回ったので、みんなが使いやすいという「縦横高さのサイズ」を絵に描いた紙を渡しました。
6トン車、8トン車、12トン車と車の荷台の大きさが違うので、どの車でも無駄なく台車が乗せられるように、自分でトラックの中のサイズを測り、最も隙間が狭い効率が良いサイズを見つけました。
トラック別の「サイズ表」は、ある一社のお取引先の会社の社長さんが、従業員の仕事を見ていて、少しでも作業が楽になるようにと自分でオーダーして作った「カゴ台車」なので、値段は少し高いけど、ドライバーが喜ぶからと作った台車でした。
研究熱心なその社長さんは、さらに、「折りたためる形状」に改善した台車も見せてくれましたが、荷物を下ろしたあとにトラックの隅に折りたたんで重ねられる「優れ物」でしたので、その設計図と、鉄を加工した業者も紹介してもらい、「特許申請をして下さい」と教えました。
「特許」が登録された電話がきたあと、マージャン仲間の「次長」から本社の物流本部の課長に連絡して下さいと伝えました。
それと、できれば、「オリコンとカゴ台車をセット」で販売して、申し込み窓口を「札幌の物流本部」にしてもらうようにしました。
理由は、「新しい仕組み」を上から言われると、どこの従業員も文句が出ますし、それも次々に新しいやり方に変わると従業員は爆発するので、できれば、「オリコンと台車をセット」で販売すれば、従業員の負担は確実に減るからです。
あとの細かい調整は、お偉いさんの皆様にお任せしますと伝えました。
私が提案したことが、うまく「次長」から物流本部に話が広まって、結果的に、北海道の全ての関連会社60社と取引先に「オリコンと台車」が、すぐに納入されたことがとてもうれしい出来事でした。
同時に、「次長」の評価も「業務改善のプロ」と呼ばれるようになり、本社でドンドン評価も上がり、何度もススキノに飲みに連れて行ってくれたほどです。
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しばらくすると、北海道の「輸送コストの改善結果」が数字でハッキリ出たそうで、物流コストの1/3が下がったことで、関連会社の「ローソン」がすぐに飛びつきました。
当時のローソンは、コンビニ第2位の売り上げだったからこそ、「コストを改善して利益を増やす対策」にした結果、大きな収益を上げたと「北海道の物流の責任者」から、あとで教えてもらい、麻雀好きな「次長」が社長賞をもらって表彰されました。
つづく