【ダイエー】中内功社長の店舗巡回の出来事
サラリーマン時代の14年間で、私が「株式会社ダイエーに大きな利益」を生み出した功績は、中内功社長や取締役たちの耳にも入っていたようで、わざわざ、中内功社長が三度、私の店を訪ねてくれて、両手で握手をしてくれて「吉岡さん、ありがとう。ありがとう」と言われたことがあります。
4店舗目のお店のダイエー札幌店の「社長巡回」の時、なぜか、社長の後ろにカメラマンと、筆頭取締役と本社の執行役員数名と、北海道ダイエーの労働組合の委員長と、全ダイエー労働組合の委員長がいました。
私が入社した頃は、どの店でも「社長巡回」の日程が決まると、どことどこの店に何時に来るのか時間ごとのスケジュールが組まれて、全ての店の売り場を、本社のバイヤーと取引先が前日にやってきて完璧に整えるのですが、実際には、地元のお客様のニーズに合わない商品を山積みするし、目立つ売り場の全てをバイヤーたちが勝手に作るので、社長が帰ったあとは、売り場の陳列を全てやり直すことになるので、「いつも無駄な残業が増える」というバカなことが起きていました。
予定に無いお店に急に来る可能性もあるからと、全ての店に売れない商品を大量に投入するバイヤーたちもたくさんいました。
ダイエーの執行役員や筆頭取締役たちが「顔見知り」だったので、会った時にそのことをそっと伝えると、ある時から、
「普段のままの売り場を見たい」
と社長からのメッセージが全国の店長に指示が出て、無駄な残業や本部から勝手な商品導入が無くなりました。
それと同時に、社長の「売場巡回」の問題は、北海道の専務、常務、取締役7名に加え、お店の店長・課長たちと、本社の執行役員たちがずらりと並び、下手をすると25名くらいの列になるので、
「とてもお客様に迷惑をかけている」
と「筆頭取締役」に報告すると、すぐに、大行列は一切、無くなりました。
※私は最初のダイエー清田店の頃から、、個人的に「ロジスティックス担当の筆頭取締役の携帯番号」を知っていたからです。
売り場の問題点を「筆頭取締役」に言うと、すぐに改善されるので、仲良しの北海道の商品本部のバイヤーたちや、お店の店長・次長・課長たちからの要望を伝えることも時々、ありました。
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三度目に売り場にやってきた中内功社長は、固い両手の握手をしたあと、「おい!写真を撮れ!」と言いました。
売り場全体の写真を撮るのかと思っていると、社長は私の右側に立って、「二人だけの写真を写せ!」と言うし、私を左側に押しやって、「君は、ここで良いんだ」と言ってくれました。
私の立ち位置が、このマッカーサー元帥の「立ち位置」と同じ「上座」だったので、反対側に行こうとしても、ガンとして動かない社長は、「君は、そこでいいんだ!」と繰り返し、満面の笑みで「二人だけの写真」に収まりました。
「あとで、わしのデスクに飾っておいてくれ!」
と一言だけ言って、もう一度、「じゃあ!」と言って、また、両手の握手をしたので、カメラマンが写真を撮ろうとすると、
「これは、撮るな!!」
と怒りました。
「こんな姿を他の社員が見たら、彼が困るだろう。」
と、優しく諭してくれました。
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何がなんだかわからないまま、通り過ぎていくお偉いさんたちの中に、知り合いの「ロジスティックスの筆頭取締役」がいたので、「今日は、とても社長の機嫌が良いんだ。よかったな!」と教えてくれました。
このあと、すぐに、社長と写した二人だけの写真がお店に送られてきたので、店長に差し上げました。
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冷や汗ものの体験をしたのに、意味が分からずバックルームに戻ると、店長と課長が走ってきて、「お前、何か社長に言ったのか?」と困惑した顔で聞いてきました。
「大丈夫ですよ、誰も飛ばしませんて!」と答えておきました。
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大きな会社は毎年一度は、大きな「組織変更」がありますが、それに伴い、無駄な「人事異動」にお金がかかるうえに、「上におべっかを使う人」の出世は「効果が出ない人事異動」になるので、そういう情報が入った時は、全国の労働組合中央執行委員たちに、「お店の実情」を調べてもらい、すぐに本社の「人事本部長」に問題点を報告すると、一度、出された全国の「人事異動」でさえ変更になる「全店FAX」が送られてくることもありました。
「社長巡回」が終わって、社長が次のお店に移動したと聞いたのに、「筆頭取締役」から電話が入り、「お前と話したい人がいる」と紹介された人は、「本社の人事本部長」で、次の「筆頭役員候補」でした。
※お二人の役員が店長室を借りて、社長に聞かせるための「ボイスレコーダー」をテーブルに置いて話が始まりました。
「次の組織変更をどうしたら良いか?」を社長から「吉岡さんに聞いて来い!」と言われた「ロジスティックス本部長」と「人事本部長」の二人は、次の役員会議までに決めたいと言うので、もし、自分がこの会社を「風通しのいい会社」にする案を事前に考えてメモしていたので、私の「新しい組織図」を見せながら説明し、「中間管理職」を思いっきりカットしたシンプルな組織図を見せました。
経験年数は豊富でも、「部下を指導できない人間」を上司にすると、部下のやる気が無くなるので、そういう人たちを150社以上ある関連会社に送り込み、「ダイー本体の物流のノウハウ」を教えることと、役職名を上げることと、同じ給料を保証してやれば、飛ばされた人のやる気も失わないですよ、と教えました。
あまりに私が見せた「新しい組織図」が革新的すぎたので、
少しづつやるから、ちょっと、待っててくれな!
頼むぞ!吉岡!
勝手に、社長に直接、言うなよ!!!
頼んだぞ!!!!
これは、上司からの命令だからな!
と言うので・・・、
あなたたち「本部長」がそんなレベルなら、「組織改革」の必要はないんじゃないですか?
本来、「組織変更」とは、大きく組織をシンプル化して、「情報と人の繋がり」を太くするためのものだと、私は自分でいろんな本を読んで勉強して知っています。
もし、あなたたちがそういう仕事をできない人なら、「本部長」という役職を無くしてもいいし、「取締役の数も半分でいい」と社長に言いますわ!
確かに、社長はお年を召していますが、あまりにも「金魚のフン」みたいに、たくさん周りに偉そうな人がいる意味はないと思いますので、バッサリ、お偉いさんたちをカットして、若い世代の優秀な人材を入れて下さい。
あなたたちみたいなロートルがたくさんいるから、「ダイエーは大企業病か?」と、流通新聞や雑誌に書かれるんですよ!!!
もう、仕事ができないのなら、さっさと会社を辞めて、関連会社に行くか、引退して下さい!
おい!今の部分はあとでカットしような!
これ、あとで編集できるよな?
中内功社長は、「すぐに聞かせろ!」と言うはずなので、今すぐに編集できる奴は、誰かいないかな?
こんな話を社長に聞かせたら、社長はすぐに俺たちをカットするし、きっと、多くのロートルが関連会社に飛ばされるので、お前、「人事本部長」なんだから上手くやれよ!
お前だって、ロジスティクスの「本部長」だろ!
「組織変更」というのは、本来、「ロジスティクスの仕事」だと、俺は他の会社の人から聞いたぞ!
それに伴う「人事異動」があるので、お前と一緒に「吉岡さんに聞いて来い!」と社長に言われたのに、俺一人に押し付けるのか!?
それはないだろう・・・
昔からの付き合いじゃないか・・・。
もしかして、お二人は、同期入社ですか?
そうよ!
俺たちは中途採用の同期入社なんだが、コイツは歳を食ってるうえに頭が硬いし、現場でもどうしようもない奴なのに、「人事本部長」になったんだぞ!?
おかしいだろ?!
こんな頭の硬い人間を「人事本部長」なんて、俺はいらないと思うな!!
お前にだけは、言われたくないわ!
お前は最初から頭が悪いくせに、何で、ロジスティクスの「本部長」になんてなったんだ?
社長、頭が狂ったのか?
きっと、酔っ払った時に、たまたま、お前が横にいたから決めたんだろう!
気分が悪いと人をバッサリ切る人だけど、気分がいい時は、「何でも好きにしろ!」って言うので、周りの人間はいつも「社長のご機嫌伺い」をしているが、俺たちは最初から言いたいことは言うし、よく喧嘩も社長とするので、なぜか知らんが、二人とも「本部長」になったのよ。
でも、なってよかったと、つくづく思うわ。
俺の子供が学校でお父さんの職業を聞かれた時に、「ダイエー」と答えると「スーパーの定員さん?」と聞かれていたので、口にしないようにしていた娘に、「本部長」になったことを教えると、学校中に言いふらすほど喜んで、家でも優しくなったからなあ・・・。
うちの息子もそうよ!
まあ、「本部長」になるまではボロボロに言われたのに、「本部長」になった途端、「給料明細」を妻が息子に見せると、息子が「お父さん、本部長就任、おめでとうございます!」と挨拶しやがって、妻と二人で大きなケーキを買ってきてお祝いしてくれたからなあ・・・。
やっぱり、俺たち、「本部長」にならないと、最低の夫だったと思うなあ・・・。
現実が厳しいのはよく分かりましたが、仕事に「人情」はいりませんので、この部分もカットしてもらいましょう!
今、店にいる社員の私の可愛い女の子が、趣味でこういう「編集が得意だ」と言っていたので、今、呼びますね。
他の人に聞かれるとマズイので、この店長室をもう少し使う許可を店長にもらって下さい。
しかし何ですね・・・「お父さん」って、そんなに辛い立場になるんですか?
もう、最低よ!!!
結婚した時は、好き好きと言っていた妻も、子供が一人出来るたびに、「ねえ、お金、大丈夫?」と聞くし、二人目なんかは「もう、次は産まないからね!」と言うし、間違ってできた三人目の時は、「あんた、今日はあの日だからダメだって言ったでしょ!」って、子供を妊娠してから怒るんだぞ!
それならそうと、先に言えば、外に出すのに・・・。
ほんと、妻は理不尽なことばかり言うので、まだ、社長の理不尽さのほうが可愛いよな?
ほんと、そうよ!
ここまで俺が頑張って働いてきたのに、給料袋を渡す時代から「振り込み」になった途端、ボーナスの日でも給料日でも、一切、「ご苦労さま」も言わないし、頭を下げない女になりやがったのさ。
でもよ、お互い歳を取ったので、今さら別れるわけにはいかんのよ・・・。
他に、女はたくさんいるんだけどなあ・・・。
さすが、年の効ですね!
年はとっても、あそこは硬い!!
できれば、その「硬さ」を仕事に活かして欲しいんですがね・・・。
ま、仕事ができない場合は、外へ出しましょうかね???
精子みたいに・・・・(^^)
二人とも、椅子から床に座って、土下座してました・・・。
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夕方、仕事を終えて、帰る準備をしていると、電話交換手から、
「社長の側近の方からお電話です」と言われ、電話を取ると、
「今日の夜7時過ぎに、社長があなたに会いたいと言っているので、時間を空けておいて下さい。」と言われました。
今日は、デートもあるし、そのあと、「はじめ組のスナック」にも行かなければいけないと思いましたが、自分に給料を払ってくれている「社長命令」とあれば、全てを横においてでも時間を作らないといけないので、一人で喫茶店で連絡を待ちました。
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午後7時を過ぎた頃、指定されたホテルに行くと、ワンフロアの広い中華レストランのずっと奥の奥に、二人の男性が座っていました。
どうやら、レストラン自体を借り切ったみたいです。
一人は「中○功社長」だとすぐに分かりましたが、後ろを向いて座っている人がわからないので、離れた場所から様子を見ていると、社長のSPの人が近寄ってきて、「お待ちですので、奥の席へ行って下さい。」と言われました。
30m先にある奥の奥のテーブルに着くと、中内功社長がこう言いました。
吉岡君、急にお呼びだてして、すまんな。
今日は、あなたに合わせたい人がいるので、無理を言ってきてもらったんだ。
この人を知っているかい?
と聞かれたので、振り返って顔を見ると、テレビや新聞でよく見ていた
松下電気産業の松下幸之助さんじゃありませんか!!!!
深々と礼をすると、握手を求められ、「厚い手だなあ」と言ってくれました。
はい、私の実家は無農薬の米農家だったので、子供の頃からよく農家の手伝いをしたので、こんな、ごっつい手になってしまいました。
私の手を裏返して、なぜなぜして、こう言いました。
この男は、良い仕事をするわ。
男はなあ、手を見ればどんな人間かがわかるのさ。
お前、よくこんないい社員を見つけたな!
吉岡さんを俺の会社にくれんか?
言っている意味があまりにもおかしいので、中内功社長の顔を見ると、笑っていました。
その場に立ったまま、松下幸之助社長からいろんな質問をされました。
なあ、君はなぜ、ダイエーに入社しようと思ったんだい?
私は学生の頃、岡山県のニチイ系の専門店のプロのオーディオショップでアルバイトしていたんですが、いつも、ダイエーの安売りのチラシが入ると、それまで何回も接客していたお客様が来なくなり、「ダイエーのほうが安いので買ってしまった」と言われました。
それが悔しくて、ダイエーの売り場を見に行ったんですが、誰も接客しないし、レジでも待たせるし、それでも安いのでお客様は待ってでもレジで買い物をしている姿を見て、頭に来たんです!
それで、ダイエーという会社をいろいろ調べたんですが、中内功社長が戦後の闇市から一人で商売を始めたと書いてあったので、感動したんです。
私の家の「吉岡一族」は富山県で武全国の武士をまとめる頭領の武士でしたが、廃藩置県で田畑を取られたため、四男以降が北海道にやってきてコメ農家を始めました。
母の実家も南部鉄器で有名な「岩手県の南部藩の武士」でしたが、薩長連合に「逆賊扱い」されて幕府に追われる立場になり、北海道まで逃げ延びてきた一族です。
だから、本当に子供の頃は「食べ物」がないので、水を腹一杯飲んで、空腹を満たしていた毎日だったので、戦後の闇市の厳しさも、ちょっとだけわかる気がして、ダイエーが気になったんです。
最終的に、会社訪問に行った時、面白い人事の人がいたので、いろいろ言い合いになりましたが、「この会社は面白い!」と思ったので、入社を決めました。
こんな話で良いですか?
松下幸之助社長と、中内功社長は、目に涙を溜めていました。
おい、コイツ、面白いなあ・・・。
俺が入社の動機を聞いただけなのに、身の上話までしやがって、俺たちの戦後を思い出させるなんて、なんて奴だ!
やっぱり、お前、俺の会社へこ来いよ!
俺の会社も、電気産業では、日本一なんだぞ!
知ってるか?
はい、存じております。
子供の頃に、唯一、家にあった電化製品は、松下電気産業の真空管の大きな木の箱型のラジオだけだったので、朝起きると、まず、電源を入れて、しばらくして温まってから、ガーーー、ジーーー、ゴー〜ー、と音が鳴ってから、アナウンサーの声が聞こえるのが、面白かったです!
「母の嫁入り道具」として、大切にしていたものを祖父がくれたものですが・・・。
あれ、松下社長が作られたんですか?
おお!そうよ!
「二股ソケット」の次に作ったのが、「真空管ラジオ」で、お前の家にあったのは、初代のやつだなあ。
時々、真空管が切れるだろう!
あれはな、電圧を安定させる「安定器」を入れる前のものだったので、よく途中で真空管が切れると、お客さんからクレームが来ていた代物さ。
やっぱり、そうなんですね!
メーカーの問題だったんですね!
うちは、いつも切れる真空管が同じだったので、真空管の予備は持っていましたが、私が「メーカーの問題だと思う」と両親に言ったのに、母はいつも、「父のせい」にして怒っていました。
女って、ほんと、「真空管」みたいですよね?
すぐに、赤くなってキレますものね(^^)
おい、お前!座れよ!
さっきから立ちっぱなしで、足も疲れたろ!
おい、席を用意させろ!
それと、こいつにビールか酒か、飲みたいものを飲ませてやれ!
私が椅子に座る予定がなかったようで、ウエイターが必死に椅子を持って走ってきますが、何せ、30mも離れているし、ビールを運んでいるウエイトレスもこぼれないように、必死でお盆にビールジョッキを載せて走ってきました。
もう少しのところで、ウエイトレスがこけたので、また、ダッシュで戻っていきましたが、その後ろから違うウエイターがビール2杯運んできて、残ったコップのビールをひとつのグラスに足して、やっと、乾杯できました。
おい、面白いだろ?
これが、うちの会社のエリートさ!
この人のおかげで、俺の会社は6000億円の経費損失を消せたし、それ以外にも、たくさん会社に貢献してくれたので、今日は、お前と偶然、札幌で会えたので、この人に会わせてあげたかったのさ。
でも、絶対に、お前の会社には、やらないからな!
エへへへ!
初めて、中内功社長の「エヘヘへ」を見たので、笑えました。
しばらくすると、中内社長が、こう切り出しました。
おい、松下!
お前の会社も、この吉岡さんからアドバイスをもらったほうが、いいぞ!
この吉岡さんは、本当に頭が切れる人なので、俺たちみたいな「直感人間」とは違って、本当に頭がいいと思うわ。
うちで抱えている東大卒の「エリート集団」より実践的だし、すぐに結果が出るから、今、ここで聞いてみろ!!
俺が数十年かけて作ったダイエーというお城を、屋台骨から変えやがったので、もう、俺はお手上げさ!
君は、僕の会社をどう思う?
これからどうしたらいいのか、ぜひ、教えて下さい!
どうぞ、よろしくお願いします。
やめてくださいよ!松下社長!
あなたみたいにすごい人に、そんな丁寧な言い方をされると緊張して何も言えなくなるじゃないですか!
ただ、ひとつだけ言えることは、もう、「白物家電」の時代は終わりで、これからはカラーコーディネートした「色物家電」を販売して下さい。
いろんな話をしながら、三人で大声を出して笑っていると、やっと、お二人の食事が届いたので、私はその場を離れて一礼し・・・
今日は、本当にありがとうございます。
これ以上、この席にいると、私は緊張でオシッコをちびりそうなので、ここで退散いたします。
あとは、どうぞ、お二人でごゆっくり、お過ごし下さいませ。
実際に、ビールの飲み過ぎで膀胱はパンパンでしたが、中内功社長と松下幸之助社長と「最後の握手」をする時、二人とも席を立って両手で握手して下さいました。
本当に貴重な体験をさせていただき、ありがとうございます。
本日は本当に、「素敵な出会い」のご報告させて頂けて、私も大変嬉しく思います。