【社長会】「経営の神様」松下幸之助社長にグループ企業の再編をアドバイス!
入社4年目の27歳のダイエーのサラリーマンの頃、自分が勤める株式会社ダイエーの「中内功社長(当時64歳)」から「松下幸之助社長(当時92歳)」を個人的に紹介されて気に入られ、銀座の高級クラブで、毎月のように二人で飲む機会がありましたが、松下幸之助社長はいつも体調がすぐれないと言いながら1杯のビールを注文して、飲まずに、私の話を聞くことを楽しみにされていました。
札幌にいる時にも、何度も、会いましたが、これからアメリカに行って車のレースをやると息巻くお孫さんの「ヒロ松下」君にも合わせてもらいましたので、「若い時は好きなことをやって、いつか、日本に戻ってきたら、おじいちゃんの会社の何かの社長になってね!」とだけ頼んでおきました。
私は松下幸之助社長に会う時は、逆に「経営の神様」なので、松下幸之助社長が体験したことを全て細かく質問しましたが、二人の共通点は、私の祖父が戦争に二度、行って、生き残ったことと、そのあと、日本がとても貧乏で食べるものさえなかった話をすると、私の体験と松下幸之助社長の体験が同じだったので、大笑いしていました。
大阪の戦後の焼け野原の▶️「闇市」で、野菜の屑を拾ってスープにしていて中内功さんを見ていた松下幸之助さんは、鉄やネジを溶接しておもちゃを作って売っていたそうで、そこから二人は仲良くなり、紆余屈折のあと、「二人で日本を変えるぞ!」と経営者になったそうです。
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ある時、とても大事な話をした日がありました。
話の内容は、「今のままでは、松下電器産業全体が倒産してしまうので、松下電器産業のグループ関連企業の統廃合のアドバイスを欲しい」という話だったので、「経営の神様」と呼ばれていた松下幸之助社長に、本気のアドバイスをして倒産の危険を回避しました。
※一般的には、バブル崩壊とは、1991年から1993年頃にかけて起きた株価や地価(土地の値段)の急落のことですが、
実は、「製造業」というのは、5年先、10年先、20年先の製品の研究開発をしていますので、バブル崩壊のずっと前から「部品のコスト」が大幅に値上がりし、海外から調達する輸送コストも大幅に値上がりし、出荷数量も激減していたし、海外のメーカーが日本の製品を真似て安く売ったので、松下グループの新規投資部門の赤字が膨らみ、大変な経営数字になっていましたが、社員には何も知らされていませんでした。
バブルの影響は、日本の全ての企業も同じように多くの企業が倒産寸前の危機だったからからこそ、毎週1回、札幌で個人的に「知り合いの社長だけの社長会」を開催して、無料で、本気のアドバイスと資金繰りの相談に乗って多くの一部上場企業の倒産を回避しました。
当時の経団連の全ての企業の社長は来ていたし、ドンドン私を紹介する人が増えたので、「紹介禁止」を言い渡したほど、毎週、20名以上の社長たちが集まる「社長会」は極秘で会社を辞めるまで続けていました。
私が1年間で、都銀3行から借り入れた長期と短期の借入金の総額は「6000億円」だったので、全ての話を横で聞いてた日銀 三重野泰総裁も驚いていました。
「日本中のどんな政治家でも、これだけ大きなお金を1年間で銀行から引き出すことはできないので、あなたは日本一の経営アドバイスをしていることになりますので、どうか、ダイエーを辞めた時は、日銀でお待ちしております。」
と言って頂きました。
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3000人以上の社長たちにアドバイスした結果、日本のバブル崩壊の影響は最低限になり、徐々にですが、日本の一部上場企業の業績は改善しました。
松下幸之助社長がスタッフに作らせて私に見せたリストラ計画書は、思い切った人員削減だったので、全て白紙に戻して、最低限の人員削減をしながら、会社と会社の統廃合を細かくアドバイスして雇用を守りました。
労働者の意欲と権利を守る労働組合の幹部の人間としては、当然の判断でした。
会社が人を切るのは簡単ですが、一度、人を切ると、次は自分が切られるのかと不安になり、長期的な良い仕事ができなくなるし、家族も不安になるので、人を切るのは最後の最後にしましょう。
それよりも、現在の主力販売商品の収支と、製造工場の収支を全て見せて下さい。
それと、売上人件費分配率と、利益に対する人件費分配率と、部門別の在庫比率もすぐに計算して見せて下さい。
同行していた秘書のトップの男性は、全国の工場長に電話して、すぐに数字を書き出してくれました。
部門別の売上と利益と人件費比率を計算して、不採算部門で他のメーカーが欲しがっている技術を持っている部門は、人と技術を他メーカーに売って、給料と職位を保証させる契約にしました。
やる気が下がっている「中間管理職」を見つけ出す方法は、直属の部下に直接、聞くことでわかりますので、全国の工場長の部下にすぐに電話して一気に「いらない管理職リスト」を送ってもらい、人事課に電話して全ての中間管理職の「年間給与」を書き出してもらい、一気にリストラして、子会社に出向か、それとも自主退職を迫ることに決めました。
「やる気がない中間管理職」がいるだけで若いやる気のある人間は潰れますので、中間管理職の職位の数をトコトン減らして、工場長からすぐに社員に指示命令が出せて、結果の報告もすぐに伝わるように関連企業を含む全ての会社の組織図も大幅に変更させました。
「各地域別の本部長」は解雇して、工場長から直接、本社に実際の数字と問題が上がり、途中で数値の改ざんができないようにしました。
これは、どこの大きな企業も同じですが、「地域マネージャー」とか、「本部付マネージャー」とかのどうでもいい中間管理職の人間は、「取締役のランキング争い」をしているので、数字は改竄するし、その上、優秀な部下を蹴落としてしまうので、いない方が企業はスッキリして業績はすぐに改善できるのです。
同時に、取締役も半分以下にしましたが、自分と一緒に苦労した仲間を切ることに、松下幸之助社長は口をつぐんで我慢していました。
アメリカには、決定権がある人の下には、余計な部下は一切、いません。だから、即断即決のビジネスができる人が多いのです。
私が松下幸之助社長に指導した計画を実施するだけで、3000人分の人件費が浮く計算になりましたので、年間30億円の人件費の削減になりました。
「年間30億円の人件費の削減」は、10年間で300億円、30年間で900億円の利益が損失するのを止めますで、業績が悪化した時は、社長は、こういう対策を断行して、企業の利益を確保して有能な社員を育てるべきなのです。
どこの企業も同じですが、40歳を過ぎた中間管理職の「係長、課長補佐、補佐の補佐、課長代理」と呼ばれる人がいるだけで企業は衰退していきますので、公務員も同じようにしたほうが良いと私は思います。
他社へ売買する部門の収入と、中間管理職の人件費削減、閉鎖する工場13工場で得る収支を計算すると、6000億円が浮くと分かったので、「新規事業」を計画して新しく銀行から借り入れることで、その借入金を長期金利の支払いに充てました。
都銀3行の頭取たちも「私の社長会」のメンバーだったので、新しい事業計画を出せば銀行から「新しい長期借り入れ」ができることを聞いていたからこそのアドバイスでした。
私のアドバイスは「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助社長の思いをぶった斬る大きな事業再編ですので、松下幸之助社社長にはこう言いました。
まず、全てのグループ企業の名前と、代表者の名前を見せて下さい。
そして、その会社ごとの収支と借入金を全て教えて下さい。
1時間ほどで、横にいた谷井昭雄副社長が、各会社に電話してすぐにFAXが送られてきました。
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あなたは、松下電器産業の本体からは退いて「相談役」になっていますが、それ以外の全てのグループ会社では、「松下」の名前が残っている会社もあるし、社長のままの会社もあるので、全てのグループ企業全体の「社長」という職位を全て降りて、「相談役」か「会長」に退いて下さい。
それと、全てのグループ企業の社名からも「松下」の文字を消して「パナソニックに統一」して、会社全体が大きく変わることを社員たちにイメージさせて下さい。
それが、会社の名前を変えたり、ロゴを変える業態変換の第一歩となる「ロゴ戦略」の基本です。
谷井昭雄副社長:
あまりに松下幸之助社長が偉大すぎるので、すぐにはできないと思いますが、順番に社名を統一していきますので、それでよろしいでしょうか?
▶️2008年 松下電器産業株式会社が「パナソニック株式会社」に社名変更
私の言葉を聞いた時、松下幸之助社長は、初めて大泣きして、
俺、まだこの会社にいていいのか?
なあ、吉岡、本当にいいのか?
俺は腹を切る覚悟で、今日、お前に話したが、お前はいつも歯に衣を着せず、バッサリ言うので、今日は、俺は会社を退く覚悟で家族にも言ってきたんだぞ!
そんな俺なのに、本当にまだ、俺はこの会社にできることはあるのか?
教えてくれ!吉岡!!!
お前が言うなら、俺は何でもするから、トイレ掃除でも、ゴミ拾いでもするから本音で本気で言ってくれ!!!
隣にいたスタッフのトップの男も、涙が止まらず、泣き続けていました。
あのう、松下幸之助社長!!
今更、何を言っているのですか?
うちの中内功社長と、ここまで本気で日本経済を立て直してきたじゃないですか!!
あなたたち二人が日本の経済界にいなかったらこんなに早く日本経済は、戦後から立ち直っていませんよ!!
だからね、松下幸之助社長!!
あなたはどこにいても、何をしていて松下電器産業の看板なんです!!
うちのダイエーの中内功社長もそうですが、きっと、松下電器産業で働く全ての人が、あなたを見本にして生きていると思います。
だから、ゴミ拾いとか便所掃除とかはやめて下さい。
それなら、私が代わりにやりますよ!
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二人とも、本気で泣いていたのに、私の言葉を聞いて、大笑いしてしまいました!!
おい、こいつ、今、何て言った?
吉岡が、便所掃除とゴミ拾いをするってか??
おい、吉岡よお、お前が、もし、便所掃除とゴミ拾いをするとなると、俺たちは、「便所掃除とゴミ拾いをしている人間」から経営アドバイスをしてもらっていることになるんだぞ!
それは、いかん!!
やっぱり、お前はダイエーを辞めて、うちの会社に来い!!
年間、100億円払っても損はない男だぞ、お前は!
社長、そんな大ボラふきは辞めて下さいよ。
まず、会社を立て直して、それから利益を出して、無駄遣いせずに、ゆとりができたら私を経営陣に呼んで下さい。
その頃ならきっと、俺、ダイエーも辞めていると思うので、考えますよ!!
本当か?吉岡!!
本当に、うちの会社に来てくれるのか!!!
いやあ、今まで何度、誘ってもダメだったが、今回は信じていいんだな!!
だからね、松下幸之助社長、まずは、女の数を減らして利益を出して、それから私を呼んで下さい!
女のことは、お前に言われなくても分かっとるわい!
でもな、女のほうが俺を離さんのよ、いやあ、モテる男は困ったものよの!!(^^)
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それとよ、俺が下がる代わりに、こいつ「谷井昭雄」を社長にしようぜ!
俺と吉岡が、承認だ!
取締役会も俺が押せば、文句は言わないからこれで決定だ!
じゃあ、次の予定があるので、これで今日は帰りますね!!