【ダイエー】サラリーマン時代のクレーマーのおばちゃんと対話 5
お店の開店時間は朝10時なので、朝礼をして作業指示を出したあと、パートさんや社員たちが私に「問題のおばちゃん」がどうなったのかを聞きたくて質問してきました。
でも、まだ言葉にできる状態じゃないので、「今日1日で決まると思う」とだけ伝えて、また今日も仕事ができないかもしれないと伝えて、いつでも動けるように売り場で仕事をしながら、「問題のおばちゃん」が来るのを待ちました。
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午前中に来なかったので、パートさんに伝言して、5分でご飯と味噌汁を飲み込んで売り場に戻り、「問題のおばちゃん」を待ちました。
でも、いくら待ってもポケットベルはならないし、店内の呼び出しもないし、やってこない「問題のおばちゃん」のせいで、その日は全く仕事に手がつけられなかった1日でした。
私が決めなければ行けない作業指示も、全て「代行」に一任させたので、これも部下を育てるためだと自分に言い聞かせて、従業員がバタバタしていても、何も言わない聞かない日にしました。
私の部下たちも「私の性格」を知っているので、「任せる」と言ったのに質問してきた人間には、徹底的に怒鳴りつけます。
「やります!任せて下さい!」と言っておきながら、問題が起きた報告もしなかったり、周りの人に相談できない馬鹿者を、私は容赦無く叱りつけますので、親以上に怖い存在なのは、いつどこにいても同じです。
私より勤続年数が長い年上のパートさん数名とは、この店に転勤になったすぐの時、本気で喧嘩して、全てのパートたちが結託して、「一週間、口を聞かない時」もあったほど、本気で喧嘩していますので、ある意味、夫や自分の子供以上に、「本気で付き合っているパートさん」なので、力強い人たちです。
お上品ではないし、文句も良く言いますが、まあ、自分が口にしたことに対しての言い分と責任感は、強い強い!
自分の売り場の商品は全て把握しているうえに、周りのパートさんたちの担当部署までカバーできる力もあり、そのうえ、「この店全てのパートさんたちとも繋がっている」ので、このつながりはトップダウンの上下関係ではできない「横のつながり」を持っているのがスーパーのパートさんなので、正社員にとっては重要な存在なのです。
そのパートさんを敵に回して喧嘩した転勤すぐの時は、店長や課長からも文句を言われるし、関係ない食品フロアのパートさんや、衣料品売り場のパートさんたちが私の売り場までやってきて、「私から頭を下げるよう」に言うほど、「強い横のつながり」があったお店でした。
この時の「トラブル」は、最終的に、私もパートさんも両方のプライドを潰さず、上司や部下から問題が出ない解決方法を見つけたので、「労働組合中央執行委員」という前に、お店の350名のほとんどの人が私を知っているほど濃い「人のつながり」があるお店の中で働いていました。
夫婦も一緒で、文句を言い合っているうちは「仲が良い証拠」と言われますが、問題は、会話することが無くなった時から、「問題は深刻」になります。
まあ、家で妻と話すこともないので、私のほとんどの時間は、毎日、いかに気持ちよくパートさんたちに仕事をしてもらうかだけを考えて仕事をしていました。
「社員の仕事」なんて、上司に言われたことだけやれば問題ないのですが、「言われてない仕事」を自分で見つけてやるかどうかが、「出世」に大きく影響することを知っている人は、意外と少ないものです。
だから、私は自分の部下に、「仕事の手が空いた時は、他の課の社員に、仕事のやり方を聞きにいきなさい」と教えていました。
私の担当売り場は日用品ですが、衣料品でも食品でもお客様に喜んでもらうために仕事をしているのは同じなので、「他の課の社員にこう聞きなさい」と教えていました。
忙しいところすいません。あなたの仕事を見ていると、自分より何か素晴らしいコツか、知恵を持っていると思ったので、ヒントだけで良いので、教えて下さい!と頭を下げろ!と教えていました。
これができない人間は、どこへ行っても出世しないのは当然です。
「他人に頭を下げること」が素直にできない人間は、皆、自分の「くそプライド」が邪魔しているだけですが、頭を下げる以上に「なりたい自分」や「目指したいこと」がハッキリしている人間は、どんな人にでも素直に頭を下げられるものです。
私が常に、大事にしていることは「自分のプライド」ではなく、「素直な相手の価値観」だからこそ、素直じゃない人間に出会った時は、ボロクソ怒ります。
言い訳、愚痴、文句、陰口、陰湿なイジメ、親をバカにする息子や娘、年上の人間対する言葉使いができない人間は、基本的に信用しません。
「ええ歳こいて、何やってんだ!!」
とつい、口に出てしまう男ですので、部下も周りの人たちも私に気を使うし、上司であっても人間的に愚かな人間には、滅多切りしてボロボロになるまで言い切ります。
言いたいことを言ったあとは、相手に頭を下げて、「どうぞ、よろしくお願いします」と全てを一任すれば、まともな人間なら大事なことに気づくはずだからです。
だから、私はひどいヤクザまがいのクレームでも、因縁をごちゃごちゃ言うクレーマーのモンスターペアレンツでも、相手が言いたいことを聞いたあとは、ボロクソに言います。
いくらスーパーの従業員であっても、「人間としてのプライド」まで下げる気はないので、上司はきっと使いづらい面と利用しやすい面の、両面があったはずです。
そんなこんなの人間関係のお店なので、お店全体が「問題のおばちゃん」の私の対応を気にしてくれていました。
しかし、結局、その日は、一切、連絡が入らなかったので、夜に呼び出しが来るかもしれないと思い、ススキノに行くのもやめて、真っ直ぐ家に帰り、晩酌も控えてジュースで寝るまでの時間を過ごしました
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こんな日が続くと、さすがに自分の判断業務が溜まるので、今日か明日が限界だなと思って、翌日、いつも通りにお店に出勤しました。
開店前に全ての作業指示を出すと、パートのおばちゃんたちの動きがすごくて驚きました。
自分の課のマネージャーが、「お店全体のクレーマー」になるはずの「問題のおばちゃん」を対応していることが、全ての課のパートさんたちに「通達」が回っているようで、誰も何も文句も言わず、質問もせず、
自分たちで、考えてやろうね!
絶対に、マネージャーにご迷惑をかけてはダメだよ!
とお互いを励まし合って働いている後ろ姿を見て、泣けてきました・・・。
良い従業員だなあ・・・あれほど去年、思いっきり喧嘩したのに、スッキリサッパリ、ぐちぐち言わず、私の思いを一番、理解してくれているパートさんこそ、実は、お店で「最高に問題があるパートさん」だったので、どこの課のパートさんでも、決して、彼女たちの悪口を言ってはいけない「影のボス的な存在」のパートさんでした。
その最高齢のパートさんの号令は、マイクも電話を使わず、伝言ゲームのように30分くらいで9階建ての全てのパートさんたちに通達が行くので、店長も驚いていたほどです。
さて、今日は来るのかな?「問題のおばちゃん」は・・・。
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開店のベルがなり、シャッターが上がる音が聞こえたので、エスカレーターの横に立って、デパートの真似をして、お客さんたちに頭を下げていると、誰かが私の肩を叩きます。
ねえ!あんた!おはよう!!!おはよう!!おはよう!!
3回も言わなくても聞こえるのに、と思って頭を上げると、「問題のおばちゃん」が目の前に立っていました。
あのね、昨日は連絡しなくてごめんなさいね!
私のこと、心配してくれた?
心配するに決まっているじゃないですか・・・!
詐欺事件に巻き込まれているのか、お祝いの報告なのかをずっと考えていたら、ススキノにも行けないし、晩食もゆっくり食えないし、酒も飲めないので、疲れも取れず、ヘロヘロですよ、と笑顔で言ってあげました。
あっらあ〜、ごめんなさいね!
私ね、興奮しすぎて、自分のことしか考えられなくても、周りのお友達や迷惑をかけたデパートの人たちに、一人づつ、お詫びとご報告をしに行って、昨日が終わってしまったの。
夜になってから、あなたのことを思い出したんだけど、御免なさいね、あなたに挨拶するのが、一番遅くなって・・・。
いいですよ、どうせ、この店はボロボロのスーパーだし、気が効かない従業員ばかりの店なので、一番最後になるのは当然です。
あなたをお客さまではなく、「お母さん」と呼ばせてもらっていたのは、私はあなたの問題を「自分ごと」に捉えて接していたからですが・・・、良いいですよ、どうせ、私は「次男坊」なので、いつも、大事なことは長男にしか話さないのは、子供の頃から慣れています。
だから、「お母さん」、気にしないで下さい・・・。
たかが、「スーパーの従業員」ですから、いつでも切り捨てて下さい。
この周りにも、スーパーはたくさんあるし、うちの店より値段が安い店もあるので、そちらがよければどうぞ、そちらに行って下さい。
私は「たかがスーパーの店員」ですが、さすがに人間として、「お母さん」の役に立ちたくて、一生懸命に接したのに、こんな対応をされるのなら、私は、「お母さん」ではなく、「お客さま」と呼ばせてもらいます。
うちの店の全ての従業員を代表して、どうか、お好きなものを買ってお帰り下さい。
お客様、本日は、お越し下さいまして、ありがとうございます!!
こう言うと私は相手の目も見ずに、振り返り、売り場に消えようとすると、大きな声で・・・
「待ってーーーー!!」と声が聞こえました。
「ごめんなさい!!!!待ってえ・・・・・!!」
その声が涙声になっていたので、さすがに振り返り、「問題のおばちゃん」をじっと見つめました。
「問題のおばちゃん」は私に抱きつき、お詫びの言葉を繰り返すので、仕方なく、彼女を支えて立たせ、目を見ました。
もう、言いたい言葉が見つからないのか、目から涙は止まらないし、言葉が言いたくでもシャックリが出ているし、「ダメだ、このおばちゃん」と思ったほどです。
ふと顔を上げると、後ろに綺麗な女性が立っていて、深々と頭を下げました。
いつも、母が本当にお世話をかけて申し訳ありませんでした。
私は、このお母さんの「息子の嫁」になる女です。
あなたが、もしかすると、「詐欺師」かもしれないと言った女です。
あ!!!!!あの女の人・・・・なの????
あなた、本人????
はいそうです。少しだけ、お話ししてもよろしいでしょうか?
じゃあ、そこのベンチにお母さんを座らせて話を聞きましょうと、お母さんを抱き上げて、ベンチに座らせました。
この続きは明日です。