【労働組合】ススキノのホステスに「所作」を教えた体験談 2
30年前のサラリーマンの頃、昼間のスーパーのお店に「ある男」がやってきて、突然、「相談事」が始まりました。
ススキノを牛耳る「はじめ組」の関係者で顔見知りだったので、まずは話を聞いてみることにしました。
私は自分のスナックを経営しているのですが、最近、綺麗な女の子をどんどん引き抜かれて売上が落ち続けているので、今ではブスと年寄りしか残っていないのですが、何かできることはありますか?
やる気があればどんな仕事でも、巻き返しはできるけど、女の子たちの「やる気」は、まだ残ってるの?
「やる気」というより、やらなきゃいけない理由を抱えた人たちばかりで、借金漬けの女もいるし、亭主がグウタラな男なので自分で子供を育てている女もいるし、体を売っていた時代を懐かしむ40代の女もいるけど、今では誰もアイツを買う客は来ないんですよ。
でも、みんな毎日、きちんと出勤してくるけど、お客がいないので、縫い物をしたり、刺繍で可愛いハンカチを作ったりしています。
だからスナックなのに、いつの間にか家庭科の授業みたいになっていて、俺、困ってるんです。
上の組に払う「上納金」も足りないし、女の子に払うお金もないので、もう、にっちもさっちも行かない状況なので、あなたに、ぜひ、「最後のご指導」をお願いしたくてやってきました。
あのね、あなたに会うのは今日が初めてだし、それで「最後のお願い」って、おかしいでしょ。
誰が僕のところへ行け!と言ったの?
「はじめ組の組長」です!
なんかそんな気がしたけど、ちょっと、電話してみるわ!
ルルル・・・・ルルル・・・
あ!組長!僕ですけど、どうして、「スナックの売上対策」を僕に押し付けたんですか?意味がわかりません!
あー、吉岡の・・・すまんなあ。
今よ、ススキノも不景気で、客の取り合いだし、店同士も女の子の引き抜き合戦が激しくてよ・・・こういう時こそ、お前の出番だろ!
あの大きなスーパーで従業員をたくさん抱えて経営しているなら、きっと、俺たちでは考えつかないことが思いつくと思って行かせたのよ!
もし、ダメならダメだと言ってやってくれ!
お前がダメなら、あの女たちは、売り飛ばすしかないからな!
アイツら借金まみれなので、もう、真っ直ぐ中国行きの「ミンチ」になるしかないのさ!
ま、俺は、どっちでもいいけどな!
それは、俺に「命の最後の審判」をしろと言っているようなもんじゃないですか!!!
どうしてそういう役目を俺に押し付けるんですか!!!意味がわかりません!
まあ、どっちでもいいけどよ、期限はあと一週間なので、それでも「シノギ料」を払えないなら、全員、「ミンチ」だな!
ま!あとは、よろしくな!(ガチャ)
いやあ、頭に来た!これはやりすぎでしょ!!!
なんで売り上げが悪いと、「ミンチ」にならないといけないの?
これはあまり、素人のあなたに言いたくないのですが、もう3軒のお店の全ての従業員が「ミンチ送り」になっているんです。
私の店の期限も、あと「一週間」なので、ほとんど可能性はないのですが、藁をも掴む思いでやってきました!
どうか、よろしくお願いします!(土下座)
売り場で「土下座」なんて、するなよ!!!おい!立てよ!!
昼間の仕事も忙しいし、夜の組合の仕事も忙しいのに、さらにお前たちのフォローが増えるなら、俺、組長に条件を出すわ!
1ヶ月間、待ってもらうように交渉するから、待ってな!
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これまでの功績を認めさせてから、期限を「1ヶ月間」にしてもらったので、まず、お前の「従業員全員」にすぐに、会わせてくれ!
売り物の「商品」を見定めてから、判断するわ!
多分、この昼間の時間ならみんなお店で寝てると思います。
全員、家賃が払えなくて、家を追い出されたので、お店で寝泊まりしているのです。
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昼間のスーパーの仕事を抜け出して、「問題のスナック」に行ってみると、ススキノではなく、私のお店から徒歩3分と近い商店街の中にあり、全員が縫い物をしたり、料理を作ったりしていたので、どこかの「家みたい」だと思いました。
おい、これを逆に「売り」にしようぜ!
こんな高そうな看板の店なのに、中に入ると「家庭の雰囲気」のスナックならば、客は落ち着くだろう。
俺も組合の接待で、よくスナックに出入りするけど、接待される側もする側も真剣なので、ほとんどまともに食べられないので、温かい煮物やおむすびなんてあると、嬉しいと思うぞ!
カップラーメンでも、丼に入れて出せば、それで一品出来上がりよ!
接待で疲れた客の「心の癒し場」にしようぜ!
あとは、ゴロンと横になって寝れる場所があるといいなあ。
そこに女の子が、そっと添い寝してくれたら、男たちは喜ぶぞ!
そこでもし、やりたくなったら、そっと交渉してお金を稼げがせればいいだろ!
もっと、薄暗くすれば目も気持ちも休まるし、奥のほうはよく見えないから、寝ながらエッチしてもわからんだろ!
「小遣い稼ぎ」も女の子たちに自由にさせれば、噂になっていい店になるぞ!
ソープならススキノにたくさんあるけど、そうじゃなくて、リラックスして温かい家庭料理を食べると、次にしたくなるのは「セックス」だろ!
おい!これは、いけるぞ!
あとは、上手に流行らせればいいだけだな!
わかりました。すぐにそのようにします!あとは何をすればいいですか?
まずは、全員の挨拶と接客を見るわ!
全員をここに一列に並べて!
私が働いていたのは全国チェーンのスーパーなので「デパート接客」じゃないですが、基本は同じで「お客様を大事しているかどうか」を中心に、お辞儀の仕方、目線、手捌き、足捌き、言葉遣い、足運び、お盆で物を出す時の「座り所作」を毎日、徹底的に教えました。
11月だったので寒空ですが、ミニスカートをはかせて、外で呼び込みをさせて、自分たちが手書きで書いた看板を持たせて、「癒しのスナック オープンです!」と書いてススキノの街を歩かせました。
「癒しのスナック」なんて、どこにもないし、下手をすれば、ボラれて高い金を払わされると客に思われるから、「不安なお客様は、30分間は無料です!」と付け加えました。
この文言を見たサラリーマンが少しづつやってきて、自分たちが食べるための料理に手を加えて小鉢に入れて出して、膝を折って、下から目線の笑顔で料理を運ぶ「所作」を教えました。
「食べ物が不味かったら、作り直します!」と全員の女の子たちに言わせた理由は、実際に、スナックの食べ物で美味しい店はなかったからです。
「毎日、1品、新しい料理を作りなさい!」と教えた理由は、もし、2日続けて通ってくれた客が来た場合、同じ料理はガッカリするので、客が来ても来なくても、毎日、交代で1品は作りなさい。
もし、売れ残ったら、翌日、自分達が食べるおかずにしなさい。
それとできれば、「おばあちゃんが作ってくれた料理を電話で聞いて、自分達で作りなさい」と教えました。
おばあちゃんの味は、コストも安く、手間も少ないのに、美味しいものを作る天才だから、きっと、今の人たちはそんな味を忘れているので、きっと癒されるはずだと教えました。
この「おばあちゃんが作ってくれた料理」を食べたお客さんたちは、涙を流しながら、こう話してくれたそうです。
僕はこれまでいろんな高級スナックに行きましたが、この店が最高です。
お店はボロいし、女の子も最低ですが、逆に、このレベルのサービスは他にはないので最高だと思うので、今度、僕の上司も連れていきます。
僕の上司は東北出身なので、できれば東北の味の料理を1品出して下さい。予算は一人3万円で5名連れてきますので、お願いします!
この電話の「報告」をお店で受けた時、僕も涙してしまいました。
みんな必死で働いています!
もし、1ヶ月で「みかじめ料」が払えなければ、ミンチになることは知っているので、寝ないで料理を勉強し、「所作」を何度も何度も訓練して、デパートへ行って、言葉使いもデパガの女性の後ろで言葉を覚えたそうです。
もう、聞けば聞くほど、涙が出ました。
私たちは釧路出身や函館出身もいるので、どうしても訛りが出るので、デパートのお姉さんたちの会話を後ろで聞いて一生懸命、「標準語」を覚えたのです。
でも、お客さんから、慣れない標準語より、「浜言葉」の訛りのほうが好きだという人が多いので、今は逆に、お婆ちゃんから田舎訛りのイントネーションを教えてもらっています。
今まであんまり実家に電話しなかったのに、今は、ほぼ毎日、お婆ちゃんに電話するので、懐かしいやら会いたいやら、最近、とても実家に帰りたいんですが、「ミンチ」になったら帰れませんよね?
こんなことなら、もっと早く教えてあげれば良かったと思いましたが、これもご縁とタイミング!
今、できることを一生懸命にするかしないし、どうなるかも、自分の責任次第!頑張るしかないさ!
この日から僕は、夜のススキノへ行く前にご飯を食べに行っていたいつもの居酒屋へは行かず、このスナックへ行って1品食べて、1品飲んで帰ることにしました。
自分があまり長居をすると、女の子たちが緊張するからです。
毎日、お店に行くと、お店を任されている男から「売上の報告」がありました。
「今、売上はいくら?あと、残りはいくら?」と聞いて、細かい指導を出しました。
自分の体を売っていた女の子は、自分の体で稼いだお金をお店のために入れてくれました。
他の女の子たちも、実家に送る予定のお金をお店に入れてくれました。
だって、もし、売り上げが足りない場合、自分が持っている「お金の意味」がなくなることを誰もが知っているからです。
それでもまだ「15万円足りない」と言われたので、私は決断しました。
最終日は、自分が昼間のお店の部下を連れて行くし、そのあとは、組合の人間を呼んで、お店の売り上げを作るから最終日前まで、みんな頑張ってくれな!と言い残して店を去りました。
最終日、お店に部下を連れて入ろうとすると、お店の外にいた女の子にこう言われました。
吉岡さん、本当にすいません。
今日はお店がいっぱいで入れないので、もし、よろしければ、他のお店をご紹介します。
おい!ちょっと、どういうことよ?
俺、部下を連れて行くと言っておいたでしょ!
はい、だから本当にすいません。
この前、あなたが来てくれて、お店の売上の足りない分を自分で払う覚悟を聞いたあと、みんな真剣に話し合ったんです。
私たちの人生は、ろくなものじゃないのに、なんで吉岡さんは自分たちのために、ここまで必死になってくれているのかを話し合いました。
誰にも優しくしてもらったことはないし、お金を渡してセックスできる女としか思われたことがないので、みんな女の子たちは、人を信用できなくなっていたんです。
でも、吉岡さんは違うとわかったんです!
だから、その日の翌日からみんなもう一度、真剣に仕事に取り組もうと、トイレ掃除をしたり、お店の周りの商店街の清掃をしたり、床や椅子をみんなでピカピカに磨き上げました。
最後は、「自分で床を舐めれるくらい綺麗」にしようねって約束したんです!
だって、お客様が落とした食べ物を箸で拾うのは失礼だと思ったので、自分の手でとって、自分で食べてあげようと思ったので、真剣に床を磨き上げました。
吉岡さんが教えてくれたお母さんの話を思い出して、「絶対に、食べ物を無駄にしない、粗末にしない」ように徹底しました。
もし、売り上げが行かなくて、ミンチにされても悔いがないくらい真剣に仕事をして、吉岡さんにお礼を言いたいと、全員が言ったので、私たち頑張りました。
みんなが本気で決断した日から、なぜか、毎日、お客様の予約が続いて、来月分も埋まったほど、予約でいっぱいなんです。
だから今日も、明日もお店には入れないので、ごめんなさい!
この言葉を聞いた時、自分の部下にも会話が聞こえていましたが、僕はつい涙してしまいました。
うしろにいた部下たちも、自分の仕事の甘さを反省したのか、
「吉岡さん、今日、俺たち、帰ります!
明日から、この女の子たちに負けない仕事をしますので、どうか、明日からの俺たちの仕事を見ていて下さい。
あなたに褒めてもらえるような仕事をしてみせます!じゃあ、失礼します!」
一人ぼっちになったので、いつもの「はじめ組のスナック」で飲んでいると、組長がお礼にやってきました。
吉岡さん、本当に、あんたはすごい人だな?
あんたが教えたお店の従業員は、ススキノでも「最低クラス」の女の子だから、「最後のチャンス」をあげただけなのに、あんたが教えたことがすごいのかわからんが、アイツら人間が変わったみたいになったんだぞ!
ススキノのスナックは、管理している「組」もそれぞれ違うし、シノギ代も違うから「客の奪い合い」や女の子の「引き抜き」ばかりしてたのに、アイツらの本気さが、ススキノ全体を変えたのさ。
どこかのスナックの女の子が困っていれば、すぐに飛んで行って相談に乗るし、食べ物が食べられない女の子には料理を作って食べさせるし、家に戻れない女の子たちもあの店に泊めてやるし、風呂の代わりに子供用のビニールプールを買って、順番に体を洗ってお金を貯めていたそうだ。
そして、最後に、あんたの言葉を聞いた時、まだ自分たちの努力が足りないと開き直って、ススキノ中の女の子たちに、自分が「ミンチになる話」をしたんだとさ。
「明日は我が身」だと思っている奴も多いので、みんな、他の店の客をあの店に送り込んでくれたのさ。
でもな、あまりにあの店の接客が素晴らしくて、もともと通っていたスナックと、あのスナックの両方を行き来する客が増えたんだとさ。
だから、ススキノ全体の客数は減ったけど、混んでるスナックが多くなったので、俺はウハウハよ!
ちょっと、確認しますが、そういう話なら、もう「ミンチはなし」でいいんですよね?
まあ、今年は大丈夫だ!
でも来年は来年なので、売り上げが落ちればミンチコースだから、たまにはあの店にも行ってあげてくれな!
これ、お礼の金だ!
俺、初めて人に「お礼の金」を渡したわ。
他人から巻き上げるのは得意だが、これは「女の子たちの気持ち」だと言って、俺から渡してくれと頼まれたのさ。
だから、遠慮なくもらっておけ!
しわくちゃで、ボロボロの千円札を輪ゴムで止めたお札の札束に、デパートの破れた包装紙をセロテープで繋ぎ止めて包んだものを渡してくれました。
もう、苦労しか感じないほど、使い古した分厚い札束を数えてみると、ちょうど、1日千円×1ヶ月分の金額でした。
あんなに厳しい状況の中で、よく毎日、千円を貯めれたと感動したので、あとから聞いてみると、私が行った日から毎日、自分たちのお金を千円入れる「千円貯金」を始めたそうです。
これはお店のお金じゃなくて、親に送ろうと思ったお金だったり、自分が好きなものを買おうと思ったお金を貯金したので、「お客さんから頂いたお金じゃない」と、あとで教えてくれました。
本当に、心が綺麗な女性たちばかりでした。
年はいってますし、顔はブスですが、女性は最後は「美味しいご飯」と、「愛情を素直に表現できる女」が最高だと思いました。
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あとから「はじめ組」の組長に聞いた話ですが、この話がどんどん広がって、どのスナックも「清掃と挨拶」を徹底しだしたので、ふらっと来たお客が「常連客」になり、他の仲間を連れてくるので、どの店も前年比を上回り、ススキノで働く女性たちは、「助け合うのは当然です」と誰もが口にするようになったそうです。
本州の〇〇組の資本が入っているお店の女の子でさえ、「困った時は助けるルール」になったそうで、呼び込みの客の取り合いの喧嘩も無くなったし、逆に、お客様が望むライバル組の店を紹介するようになったそうです。
その結果が、日本で初めて開設した「ススキノ無料案内所」と書いてある飲食店とスナックと、ピンサロとソープの案内所ができたのです。
必ず、ススキノにやってきたお客様に気持ち良く帰ってもらう努力は、自分のスーパーの従業員にも言っていたことなので、嬉しくてたまりませんでした。
自分が務めるお店の閉店が「3年後」と決まっていたので、同じように、「背水の陣」を心に刻んで仕事に取り組んでいたので、その心で取り組めば「言い訳」なんて出るはずもありません。
誰もが真剣に仕事をしているからこそ、これからの時代は「癒しの時代」になると、体験からわかっていたからこそのアドバイスでした。
私は「表向きの癒し」はしませんが、「女性の心の深さ」と「胸の谷間の深さ」にいつも癒されるので、男は一生、同じことを言うバカな動物だと自分を含めて思いました。
若い娘がいい、おっぱいは大きい方がいい、ブスより綺麗な方がいいと・・・(^^)
でも結局、結婚できてる奥様たちは、その反対の人もたくさんいますし、意外に綺麗でナイスバデイの女性ほど「男選び」に時間をかけすぎたのか、結婚はできていない人がたくさんいます。
だから、私は全ての女性に言い続けています。
自分の家で、料理を作りなさい!
男を自分に通わせるのは、「上の口と下の口を掴めばいいだけさ!」と。