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朝食を食べられなかった同級生の話

小学3年生のある日、学校へ行くと、毎朝、うるさかった同級生の男の子が机にうつぶして、じっとしていました。

変だと思って声をかけても、顔を上げません。

「おいお前、人が話している時は、相手の目を見て答えろ!」と怒鳴り付けると顔を上げましたが、左の頬が真っ赤に腫れています。

「どうした?」と聞くと・・・。

「朝、起きて台所に行くと、誰もいないし朝食もないので、そっと、母さんの寝室をのぞいて朝ごはんは?と聞いたんだ。

そしたら、突然、母さんが起き上がって頬をぶって、お前に食わせる朝食なんてないから、早く学校へ行ってしまえ!と怒られたんだ。

仕方なく兄ちゃんを起こして、事情を説明して一緒に学校へ来たんだけど、もう腹が減って、腹が減って死にそうなんだ。」と言います。

私の家は学校に近いので、家にご飯を取りに行こうかと思ったけど、そういえば、今朝は、兄と僕とでご飯を全部食べ切ったと母に怒られたばかりだったので、あきらめました。

どうするか考えて、クラス全員にこう言いました。

「おい、みんな!今日は、◯◯が朝ごはんを食べ損ねたみたいで腹が減って死にそうだと言ってるんだ。

みんなのカバンの中に、昨日の食べ残してもおやつでもいいので、何かこいつに恵んでやってくれ!頼む!」と大声で言いました。

すると、貧乏は家のはずの女の子が、お菓子をひとつ持ってきてくれました。

「あれ?お前の家は俺の家より貧乏なのに、おやつなんてあるの?」と聞くと・・・。

「今朝、珍しく母さんが近所の頂き物だからお前にあげる。

いつも、姉さんばかりで妹にはやれなかったので、姉さんの分はないから内緒だよって、くれたの。

でも、いいの。もうお母さんの優しさで嬉しいから、これ、あげる!

私の家も、父さんと母さんがよく喧嘩すると、母さんが朝ごはんを作らない時があるので、自分で作るようになったんだけど、男の子は自分で朝ごはんを作れないから、あげるよ。」

 

優しい子だなあと感動しましたが、こんな量では足りないので、お金がある公務員やお父さんが社長の家の子に、一人一人頼んで周りました。

本当は、お昼のおやつだったのにと文句を言いながらもお菓子を出す女の子は、幼稚園時代からの同級生なので「助け合い」は幼稚園時代からお互い様だと知っています。

自分の家より貧乏な農家の子供たちは当然、余計な食べ物などあるはずないので、一人一人顔を見つめて回ると、警察官の子供が目をそらしました。

「おい、お前!何か隠しているだろう!

お前の父さんは警察官だろう?どうして、隠し事をするんだ!何か隠しているなら、だせ!」と言うと・・・。

しぶしぶ、サンドイッチを出してきました。

お前、こんなすごいもんを持っていたのか!ずるいやつだ!と叫ぶと・・・。

「ずるくはないよ!ちゃんと事情を聞いてくれよ。

今、俺の父さんと母さんは離婚をするらしいんだ。

毎日、喧嘩ばかりだから離婚は仕方ないと思っていたけど、母さんが怒ると、父さんへの腹いせで朝食を作らない時があるのさ。

でも、お前にだけはと今朝、早く起きて作ってくれたサンドイッチなんだ。

母さんも殴られてしんどいはずなのに、僕のために早起きして作ってくれたサンドイッチが、ありがたくて食べられないので、取っておいたんだ。

でも、あいつにやってくれ。

俺の家より、あいつの家の方が貧乏なのはよく知っているもの。

あいつの父さんは、よく酒を飲んで大声で近所に怒鳴り付けるから、警察のうちの父さんがよく言っていたんだ。

あの家の人間には気をつけろよと。

でも、俺より貧乏な奴を見捨てることはできないから、あいつにやってくれ!」

お前、いい奴だなあ。

そのサンドイッチを持って、◯◯君のところへ行くと、会話が聞こえていたようで、

「俺にそんな愛情たっぷりのサンドイッチなんか、よこすな!

俺は母さんの思いと戦っているのに・・・。」

それもそうだな・・・。

サンドイッチを警察官の子供に戻して、そういうことだからお前は今、ありがたくお母さんのサンドイッチを食べろ!

こんなやりとりをしていると授業のベルが鳴り、先生がやってきました。

まだ、食べ終わっていない二人のために、教室の入り口に行き、先生にこう言いました。

「先生、今、ちょっと、同級生同士の大事な話をしているので、すいませんが、15分だけ授業の開始を遅らせて下さい。

時間が足りないなら、次の休み時間を削って授業をしてもいいので、お願いします。」

そう言うと、先生はみんなの顔を見て、「それでいいのか?お前ら!?」と聞きますが、全員、頭をコクリと下げたので先生は教室を出て行きました。

「もう大丈夫だ、安心してゆっくり噛んで食えよ!

おい、誰か、喉がつかえそうだから、水かお茶を持ってる奴はいないか!と聞くと、半分、口にサンドイッチを咥えたまま、警察官の子供は、ある!ある!と、カバンの中を指さしています。

お前のお母さんは、本当に優しい人なんだな。

離婚したらお母さんについて行くのか?

お父さんについて行くのか?

今、それも話し合っているみたいで、もしかすると、父さんと一緒にどこかへ転勤になるみたいなんだ。

田舎の警察官は夫婦が決まりらしくて、どこかへ飛ばされるらしいんだ。」

それは仕方ないなあ。警察は庶民に見本を示さないといけない仕事だからなあ。

おい、みんな!こいつの父さんが離婚すると、どこかへ飛ばされるらしいので、残りの時間まで仲良くしてやってくれ!

それと、このことは絶対、親には言うなよ!

話が回り回るとコイツか、コイツの兄ちゃんが怒られるのは確実だから、頼むな!約束だぞ!

 

同級生のほとんどが貧乏農家なので、貧乏の戦いを笑えるくらい食べ物がない貧乏でしたが、米農家は「お米」だけはあるのでまだ、いいんです。

でも、たった3回しかないうちの食事を食べられない成長期の子供は、腹をすかして我慢している子もいるのです。

本当に、お金がないとか、食べ物が無いと、「人は助け合い」を学びます。

子供たちは「子供達だけの親に言わないルール」があることも学んで、見守ってあげて下さい。

子供は「親のルール」に従って生きるしかないからこそ、賢いお母さんたちは、「子供のルール」も尊重してあげて下さい。

そして、その子供が大きくなって、自分が老いたら、「老いては子に従え」を思い出して恩返ししてもらって下さい。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

 

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