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長ラン・リーゼントの学級委員長 3 同和問題で揉めたクラス

長ラン・リーゼントで学級委員長をしていた時に、一度だけ、クラスが割れるほど大きな問題が発生しました。

社会の授業で「エタ・非民」という言葉が出てきて、その意味をみんなが知った時に、自分の立場と照らし合わせた生徒の質問に、先生が応えきれなかったからです。

この「同和問題」は社会的に深刻な問題ですが、子供達の争点は、

「経済的弱者に同情は必要かどうか?」でした。

今の時代は子供たちの問題に口を挟む親も多いですし、学校側も問題児童を排除するのが通常の対応ですが、私たちの時代はどんな問題が起きても、基本的に「多数決と自己責任」が原理原則ですので、先生の対応を責めるのではなく、自分たちで問題を解決できる人間にならなければと誰もが思っている時代ですので、いちいち学校の問題を親に言う子供はいません。

でも、この時だけはさすがに、男も女もごっちゃになって殴り合いの喧嘩になる一歩手前までなりました。

この状況を見て、一人の女生徒が先生がいる職員室へ走っていったので、私はみんなにこう言いました。

「今の話し合っている問題は、とても深い思いがあるし、俺たちが大人になっても同じ問題が起きるだろう。

その度に、今みたいに感情的に喧嘩しても何も解決はしないぞ!

だから、今日は、トコトン俺たちで話しあおうじゃないか!

経済的弱者を切り捨てるのか、支えながら一緒に生きるのか、どちらが正しいかを一緒に考え切ろう!」

 

こう言ったあと、クラスの問題を聞いた担任の先生のところへ行き、

「先生、今、クラスに大きな問題が起きています。

でも、これは俺たち生徒が一生かかっても学ばないといけないテーマだからこそ、今日はトコトン話しあいたいのです。

だから、次の授業の先生に言って、あなたの授業の時間と交代してもらえませんか?

そうじゃないと、クラスの中で殴り合いが起きるし、きっと、そのあとは、他のクラスにも飛び火して、学校中の問題になりそうなんです。」

 

実は、私が学級委員長に選ばれた最初の報告を担任の先生にした時に、先生の家族に深刻な問題を抱えていることを担任の先生から言われていたのです。

「俺にクラスの揉め事を解決する力はないので、自分たちで解決してくれ。

今、家の問題で妻に毎日、責められて、どうにもできなくてつらいんだ・・・。」

と言われていたのです。

だからこそ、「これは先生ができることなのでお願いします」と伝え、授業の割り振りを変えてもらい、午後の二つの授業を担任の授業にしてもらってトコトン話し会う時間を確保しました。

教室に戻り、クラス全員に告げたことは、

「今、午後の授業を全て俺たちの自習時間にしてもらったから、今日は全員が納得いくまでトコトン話すぞ!

嫌なやつは、家に帰れ!

でも家に帰っても、この問題は解しないから、つらいだろうけど本当は逃げないで、ここにいて欲しい。」

こう話した理由は、経済的弱者の家庭がクラスの中に数名いたからです。

一人の家庭は、親父が大酒飲みでお金も稼がず、夫婦喧嘩が耐えないので、学校給食のお金を払っていない家でした。

もう一つの家は、父親が仕事で大怪我をして退院後、仕事が無くなり、日々、食べるものもないほど苦しい生活をしていました。

もう一人の家は、母親一人で二人の子供を育てていますが、お母さんが体を壊し、生活保護を受けている家庭でした。

そんなことを知らないやつらが、

「社会で一生懸命に働いている人間が、経済的弱者を気にしていたらキリがない!

切り捨てた方がいいんだ!」と言った一言で、全員が爆発したのです。

私が生まれ育った田舎では、全員が貧乏農家なので、誰も貧乏を責めたりしませんが、公務員の家庭や、親が経済的に豊かな家の子供は、それを当然だと思っていますので、お互いの溝が埋まる考え方を学んでいないのです。

働きたい奴は、働けばいい!

働きたくても、働けない人間もいるんだぞ!

 

そんな奴は、世の中から消えて無くなれ!

仕事をしてお金を稼ぐ気がない奴が、酒を飲んだり遊んで良いわけないだろう!

もう、全ての言葉が真っ向から対立しています。

 

1時間くらいバトルを続けていると、隣のクラスの奴が、私のクラスが授業をせずに口論している理由を聞き、同じようにクラスの中でバトルが始まり、担任は職員室に逃げ帰りました。

大声で叫ぶ声は聞こえるし、女生徒の泣き叫ぶ声も聞こえたので、私は自分のクラスの会話を一時中断して、隣のクラスに行き、こう言いました。

「お前らも同じ問題で揉めてるなら、喧嘩はするな!

俺は担任に交渉して、トコトン話し会う授業時間をもらったので、まずは、担任に相談してから話し合え!

おい、このクラスの学級委員長は誰だ?

お前が担任のところへ行け!

担任がガタガタ言ったら、俺のクラスのことを話せば、きっとわかってくれるはずだ!」

 

隣のクラスが沈静化した後、他のクラスも同じように爆発し始めたので、それぞれの学級委員長に伝令を出して、喧嘩せずに、自分たちで解決する時間をもらえ!と伝えてクラスに戻りました。

「いろんな意見や考えを一切、否定せず、最後まで聞くことをルール」

にして、意見を言いたい奴の話を全員で聞くことにしました。

2時間も真剣にバトルしていると、腹がすきます。

「おい、誰が女子生徒たちの中で食べ物を持ってる奴はいないのか?

持っているなら、だせ!

それと、給食の残りがあるはずだから、他のクラスに取られる前に、誰か取りにいけ!パンと牛乳さえ、あればいいぞ!」

 

数名の女子が給食室に走って行き、給食のおばちゃんに話すと、逆に、

「オニギリを作ってあとで、持っていってあげるから教室で待ってなさい。」

と言われ、私のクラスの全員分の分のオニギリを作って持ってきてくれました。

しばらくすると、他のクラスも大声で討論が始まったので、給食のおばちゃんに申し訳ないけど、2年生の全クラスの人数を伝えてオニギリの追加をお願いしに行くと・・・。

「あんたが親分かい?

親分じゃないけど、学級委員長です。

それは、親分だろう。

親分は、子分の面倒を見るもんだ。

だから、私たちもみんなのクラスの親分たちに恥をかかせないように、今、全員でオニギリを作ってるのさ。

職員室の暇そうな先生たちもおいでと言ったら、手伝いに来てくれたよ。

なんか、大きな問題が起きたんだってね。

親分は、何があっても引き下がるんじゃないよ!

あんたが引き下がったら、先生たちの「いいなり」で生きるしかなくなるよ!

私たちも応援するから、がんばんなさい!」

 

この人は、神様かと思いました。

クラスに戻るとバトルが熱を増して、もう泣き出しそうな女生徒たちとが机にうつぶしています。

そこへ、給食のおばちゃん手作りの「オニギリ」が全員分、届きました。

 

腹が減っては、戦さはできないので、全員、「まず、オニギリ」を食え!

給食のおばちゃんが善意で作ってくれたオニギリだから、ありがたく食えよ!」

家に帰っても、まともなご飯を作ってくれない家の子は、涙を流しながら、オニギリを食べていました。

その子の家の事情を知っている友達は、自分のおにぎりを半分にして分けてあげていました。

それを見た男たちも理由を聞いたので、自分の食べたいおにぎりを我慢して、貧乏な家の子たちにあげていました。

どんどん、机の上におにぎりの山ができたので、

「こんなに一人じゃ食べきれないよ!」

とその子が叫んだので、私がこう言いました。

「今、お前は目の前に、たくさんの食べきれないほどのオニギリがあるだろう?

それはな、お金が余って好きなものを、いつでも買ってもらえる家の内情と同じなんだ。

 

でもよ、その家の親父が、もし事故で一生働けなくなったら、お前の家と同じように、食べたいものさえ、食べられない生活になるんだ。

俺の家も貧乏だが、俺の田舎では決して食べ物が無くて死ぬ奴はいない。

 

だって、必ず、「お金持ちも、貧乏人も、助け合うのがルール」だから、どんな家の子供でも均等に飯だけは食えるんだ。

さっき、ガタガタ文句を言っていた奴がいたが、一生、貧乏を体験することがないから、言いたいことを言ってるけど、一度で良いから、親の親、じいさんや婆さんの子供時代の体験を聞いてみろよ!

 

戦争で負けてから日本は、過去最低に貧乏な国になったのに、なんで「助け合いの精神」を忘れるんだ!

お前たちは親が稼いだお金のおかげで、学校に来てるんだろう!!俺もそうだ!

だからこそ、学校で揉めて、親や先生を苦しめるようなバカな子供には、ならないでおこうぜ!俺たちは、もう大人だろう!

 

わからんのか、お前ら!

貧乏な暮らしをしている家族は、好き好んで、そうなってると思うのか?

どうしようもなく、仕方がない時期なんだろう。

だったら、俺たちで支えてあげようじゃないか?!

 

それとよ、貧乏人の家の子よ。

お前は、さっきまで飯も食えない家の子だったろう。

でも今、目の前に食えないほど、オニギリがたくさんあるだろう。

どうしてそれを「一人で食うことばかり」考えるんだ。

お前の妹も、確か1年生にいるんだろう。

持っていってやれよ!妹に!

それと、お前が知っている貧乏な家のやつらに、お前がオニギリを配ってまわれ!

いますぐ、いけ!

 

やるけど、貧乏!貧乏って言わないで!

あんたの家も貧乏なんでしょ!もう!(^^)

 

こんな事件はそうそう起きないと思いますが、当時は、1フロア全部が高校2年生だったので、噂はすぐに広がる環境でした。

他のクラスは色々な状況になりましたが、どうやってもまとまらないクラスの学級委員長は、私のところにやって来て、「お前から話してくれないか?!俺じゃあ、誰も話を聞いてくれないんだ。」と、次々に、やってきました。

最後に来たのは、気まずそうな顔をした生徒会長でした。

おう、行ってやるぜ!

じゃあ、一緒に、行くぞ!

 

そう言って、全クラスを回って同じことを伝えて回りました。

私の話を聞いた他のクラスの生徒は、自分の分のオニギリを食べてしまって反省したのか、「俺、今、飲み込んだばかりだから、吐き出すので食べてくれるか?」と言う奴が出るほど、バカ素直な奴もいました。

全てのクラスの激論がほぼ収まった最後に、私は校長先生に呼び出されて、学校中の問題になった責任と対応を質問されました。

「私は間違ったことをしたとは思っていません。

さっきのオニギリで給食のご飯が足りないのなら、私の家は米農家なので、いくらでも持ってきます。

 

学校としては・・・

と校長は話し始めたので、こう言いました。

 

校長先生!先生も、生徒を持っていた時があるでしょ!

そして、悩ましい問題が起きた時は、きっと、あなたたち「大人のルールと理屈」で子供たちを押さえつけたと思います。

だからこそ、僕らは今回、自分たちで考えたかったのです。

 

俺たちは高校を出てすぐに社会へ出て働く奴もいますので、問題が起きた時に、自分の頭で考えて対応できない人間になったら、親を泣かせることになると思います。

だから、申し訳ありませんが、担任の授業時間をもらってトコトン討論させてもらいました。

こういうことこそが、僕は、最も大切な「学校教育の授業」だと思うんです。

間違えているのなら、どこが間違えているのか教えて下さい、校長先生!」

 

僕の心の中は、休学か退学を覚悟していたので、怖いのは「母親の鉄拳」だけでした。

校長先生は真っ赤になって殴りそうな顔をしていましたが、そこに教頭先生が入ってきて、

2年生の全てのクラスの学級委員長が、校長先生に謝りたいと来ています。

と言いました。振り返ると、口の周りにご飯粒をつけた奴もいました。

俺が最後まで言い張り続けたので、校長先生は許したくないようでしたが、このままだと私が責任を取らされて、停学か退学になると心配したヤツらが集まって来てくれました。

校長先生、本当にご迷惑をおかけて、すいませんでした。

私たちが勝手に授業をボイコットしてご迷惑をかけたので、吉岡だけが悪いんじゃ無いんです!

俺たちみんなの責任です。

もし、責任を問うのなら、俺たち全員を処罰して下さい!

 

全員が大声で何度も何度も、校長先生に謝ってくれました。

こう言っているヤツらの後ろに、他の生徒も続々、集まって来ました。

もう二度としませんので、どうぞ、今回だけは許して下さい!

生徒会長も、全クラスの学級委員長も、全員が頭を下げっぱなしで土下座しようとしています。

僕は涙が出そうなくらい嬉しいヤツらの行動でしたが、あとは、校長の一言だけを待っていました。

校長先生は渋い顔をしながら、最後に「二度と、やるなよ!」とだけ言って、全ての問題は終わりました。

教室に戻る途中の廊下で、各クラスの「番」を張っているヤツらに取り囲まれました。

「おい!イキがるなよ!

何偉そうに、一人で立ち回っているんだ!

そんなに、威張りたいのか!お前は!」

 

胸ぐらを掴まれて、5、6人に囲まれましたが、私はこう言いました。

「おい、お前ら!

何をいまごろ、自己主張してるんだよ!

それだけ、言いたことがハッキリしているなら、なぜ、さっきの討論会で意見を言わなかったんだ!

お前の家も、どうせ、貧乏だろう!

そうじゃなくて、金持ちの子か!

 

おう、金持ちの子なら、貧乏人に飯を食わせてくれ!

それくらいできるだろう!

もし、貧乏人ならお互いに助け合うことくらいしかできないだろう!

そんなことも、この歳になるまでわからんのか!

お前は、ガキか!

 

すぐ、暴力に出るヤツほど、ガキだという証拠だぞ!

殴りたいなら殴ればいいさ!

ただよ、殴っても何も問題は解決しないぞ!

 

これから俺たちは、社会へ出て行く人間なんだ!

なのに、まだ、暴力でしか問題を解決できないのか?!!

お前たちは、バカか!ガキか!

バカは、死ななきゃ治らないから、一度、死んで戻ってこい!

 

全員が最高潮に、頭にきていましたが、そこへ先生がやってきました。

おい、何か問題か?

問題があるなら俺が解決してやろうか?

そう言った先生は、体育の先生で、体はでかいし、力は強いし、どう考えても対等には喧嘩できないタイプなのは、誰が見ても一目瞭然です。

吉岡に文句があるなら、いつでも俺のところに来い!

いつでも、何人でも相手になってやるからな!

この先生は、不良生徒が教室に戻ったあと、私にこう言いました。

「俺もよ、あの校長は大嫌いなんだ。

でも、立場上、喧嘩はできないじゃないか。

でも、お前のさっきのタンカを聞いていてスッキリしたんだ。

ありがとうな

何か問題があったらいつでも言えよ!

帰り道、不良のボスだったヤツの家を聞いて尋ねると、貧乏な自転車屋のオヤジの仕事を手伝っていました。

「さっきは、スマン。

先生が出てくるなんて思ってなかったので、お前も言いたいことがまだ残ってるだろう。

言いたいことは全部聞くから、今、言えよ。」

 

オヤジの前で、こんな話ができるかよ!見たらわかるだろう?

見てのとおり、俺の家も貧乏なんだ。

だから、今日のオニギリは最高に幸せだったぞ!ありがとうな!

俺にできることがあったら、いつでも言ってくれよ!手を貸すぜ!

 

じゃあ、学級委員長になれよ!

俺みたいになりたくない奴もやってるんだからよ!(^^)

お前には、ピッタリだわ。

うちのクラスの学級委員長なんて、先生の使いっ走りだからな。

 

そういうもんだよ、世の中なんて!

俺たち庶民に、「選択権」なんてないんだよ。

だからよ、俺たち貧乏人は助け合わないと生きていけないんだ。

あの時一緒にいた不良たちにも、言っておけよ!

ヤツらも、どうしようもなく葛藤してるはずだから・・・。

 

わかったよ、俺もお前の校長に言ったタンカを聞いて目が覚めたんだ。

ガキは、今日で卒業だ!ありがとうな!

長ラン・リーゼントの生徒会長の体験談は、まだ、続きます(^^

 

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