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長ラン・リーゼントの学級委員長 6 腹一杯事件

 
高校3年生のクラスで、「俺の家はコメ農家だから、いつでもご飯だけは腹いっぱいくえるんだぞ!」と自慢した言葉を口にしたあと、クラスの炭鉱住宅に住む同級生が近づいてきました。
 
 
「お前の家は腹一杯になるほど、いつでもご飯を食べられるのは本当か?」
 
 
おう、本当だとも。
 
 
「だったらよ、俺、お前の家にいってご飯をご馳走になることはできるか?」
 
こう言ったヤツは、普段、それほど仲の良い関係ではないけれど、クラスが落ち込んでいると一人でバカをやって盛り上げるので、誰もコイツを悪く言う奴はいませんでした。
 
いいけど、どうした?お前のお父さんは炭鉱だから、お金はいっぱいもらっているはずだし、いつもお前も親父の自慢をしていたじゃないか?
 
「俺もよ、いつもは親父が炭鉱の仕事から帰ってくると、顔も体も真っ黒になるので、炭鉱の大きな無料のお風呂に入って家に戻り、着替えてから街へ飲みに行くのが普通だと思っていたんだけどよ、この前、小さな落盤事故があってな、ケガをした人も出たし、危うくウチの親父も怪我をしそうだったので、しばらく休めと言われて今は、毎日、朝から家でお酒ばかり飲んでるんだ。
 
それを見て、母さんはいつも怒るわけよ!
 
あんたの稼ぎがないと、この前、買ったテレビも、冷蔵庫も、洗濯機の支払いはどうすればいいのさ!
 
もう、お米も買えないから子供たちに食べさせるご飯もないんだよ!」と怒鳴っているのさ。
 
俺には妹と弟がいるんだけど、俺も毎食、食べられないけど、自分の食べる分を妹と弟にやっているので、いつも、水を飲んで我慢してたんだ。
 
でも腹がグーグー鳴るので、母さんが、「そんなに腹が減ってるなら、どこか他の家でご飯を食べさせてもらってきなさい!」と怒られたんだ。
 
だからよ、お前の家で腹一杯、ご飯を食べさせてもらえるか?」
 
 
「いいよ、じゃあ、今日は、俺の弁当を半分、食えよ。
明日、オフクロがOKを出したら家に連れて行くよ。
 
もし、一緒に行きたいヤツがいたら連れて行っていいぞ。
一人食わすのも、10人食わすのも同じだからさ。
 
そう言うと、自分が住む炭鉱住宅の同級生に声をかけて何人かが集まってきました。
 
そのことを聞いた炭鉱の人間ではないヤツも集まってきたので、どうした?お前の家は公務員だろ?お金は安定しているはずだろう?
 
 
「いやあ、普段はそうなだけど、最近、父さんと母さんが喧嘩ばっかりしていてよ、母さんが頭に来て、ご飯を作ることはしない!」と宣言したのさ。
 
もう、父さんと我慢比べみたいになってるんだ。
 
子供達の食事は、パンを買って食べなさいとお金はくれるけど、パンじゃ、腹一杯にはならないよ。
 
やっぱり、白いご飯を腹一杯、食べたいと最近、毎日、夢に出るほどなんだ。
 
だから、俺もいっていいか?」
 
おう、いいぞ。他にも行きたい奴がいたら明日、一緒にこいよ!
 
 
家に帰り、母に事情を説明すると、そんなにみんな大変なのかい、わかったよ。大したものは作れないけど、連れておいで!10名でも、20名でも!
 
さすが、我が母親と思うほど、でっかく出たと思いましたが、明日は、よろしくお願いしますだけ言いました。
 
翌日、高校へ行くと、朝から俺の家に行く奴は誰がいいかを話し合っているようでした。
 
どうした?何か揉め事か?俺が仲裁してやろうか?
 
 
「いやいや、揉めてんじゃなくて、お前の家に行くのが誰かを話し合っているのさ。
だって、俺たちも見たいな体のでかい奴が何人もお邪魔できるほど、家は広くないだろう?」
 
お前なあ、農家の家を見たことないのか?
 
一番狭い部屋で四畳半だし、他は全部8畳部屋が5室はあるんだぞ!
行きたい奴は全員、来いよ!大丈夫だから!
 
「農家の家って、そんなに広いのか?貧乏なのに?」
 
他の家は知らんけど、うちの家は本家が両親の結婚前に建ててくれた家で、農家は家が顔みたいなもんなんだ。
 
それ以外にも大きな庭があるし、他にも大きな畑があるので、手伝いは大変なんだぞ!
 
他に家より大きい納屋もあるし、石炭小屋もあるし、馬小屋もあるぞ!今は、もう馬はいないけどな!
 
 
「そうなんか、そんなに農家の家って広いのか?
 
俺たちの家なんか、六畳二間に、家族5人が一緒に住んでいんだぞ!
 
壁は薄いし、隣の声は聞こえるし、みんな同じだから文句は言わないけど、いつかはお金をためて家を建てるって親父は言ってるよ。
 
毎日、あれだけお金を使っていたら、いつ建つのかわからんけどな。」
 
大丈夫だから、行きたい奴は全員、一緒にこいよ!
 
学校から6km離れた家まで、毎日、自転車で通学していましたが、この日は同級生を連れて行くのでバスでした。
 
田舎の農村地帯に向かうバスに乗る子供たちは、ほぼ全員が農家の娘や息子なので、顔見知りになってきます。
 
バスターミナルでは、炭鉱地域へ行くバスと、公務員や商人たちが多い地域と分かれますので、誰も他の地域を知らないヤツもたくさんいます。
 
バスを降りて、1km歩くけど、大丈夫か? OK!
 
家まで200mまで近づくと、あの左側に見える家が我が家で、この道路の両側の田んぼは全部、ウチの田んぼなんだ。
 
稲穂が穂を垂れて、美味しそうに見えるのか、よだれを垂らしているヤツもいました。
 
 
身長180前後の奴が6名、ぞろぞろ田舎の道を歩いているので、近所のおばさんたちは「いい男だねえ〜」と羨ましがります。
確かに、かっこいいヤツばかりが揃って家にやってきました。
 
母さん、連れてきたよ!
 
「お帰りなさい」と言った母も、デカイ男たちを見て、絶句していました。
 
あんたたち、本当に同級生?ちょっと老けてない?」
 
「いやあ、お母さん、僕らは正真正銘の同級生で18歳ですよ!」と苦笑い。
 
目つき、顔つきは確かにもう、親父の空気を出しているヤツらばかりでした。
 
 
2階の僕の四畳半の部屋に連れて行き、全員、隅に小さくなれ!と言いましたが、「それは無理!」と言われました。
 
母がご飯を作るまでいろんな話をしましたが、あと数ヶ月で俺たちも卒業するけど、就職組と進学組に別れるし、田舎を出ていく奴が増えることを確認し会いました。
 
 
この時間は、2年間、学級委員長をやってきたけど、一番、嬉しい時間でした。
 
炭鉱組と農家組と公務員、サラリーマン組と商人は、それぞれ価値観が違うので、お互いになるべく近寄らない空気がありましたので、こんなに家族や将来のことを一緒に話し合った時間がなかったからです。
 
 
一人の男が俺に、お礼を言ってくれました。
 
「いやあ、吉岡、ごめんね。
 
2年生の時に、無理矢理、学級委員長をさせてしまって、申し訳ないと思っていたんだ。
 
誰もやりたがらないから俺がやろうと思ったんだけど、あの20歳の先輩に止められて、仕方なかったんだ、ごめんね。」
 
いや、俺は逆にありがたい経験をさせてもらったと思っているよ。
 
自分の性格だと、いいものはいい、でも、理不尽なことは誰が何を言っても、俺は言うことを聞かない性格なので、よくお前たちもついてきてくれたと感謝してるんだ。ありがとうな。」
 
 
初めて、全員が本音で文句を言ったり、冗談を言い合って、大笑いした時間でした。
 
 
母がドアをノックして山のようなオニギリと2リットルのジュースを買ってきましたが、絶対に足りないので、ジュースはもういいから、うちの美味しい地下水の水を飲ませてあげて!
 
それともっと、早くどんどんオニギリを持ってきて!
 
「あんたね、一升のご飯を炊いて、オニギリにするのは時間がかかるんだよ!手伝いなさい!」
 
はい、了解!
 
 
子供の頃から台所の手伝いをしてきたので、母の作業手順も調味料のある場所も全て知っているので、お手伝いしました。
 
母は大きな鍋で味噌汁だけ作って!俺がオニギリを作るから!
 
大きな二つの鍋がシューシュー音をたてながらご飯が炊けたので、私は大急ぎで、オニギリを結びました。
 
手が大きいので、ソフトボールくらいになりましが、男ばかりなので大丈夫だと思って持って行きました。
 
すると、全員の目が点になり、その大きなソフトボールオニギリに食らい付きました。
 
 
「人生でこんなに大きなオニギリは食べたことがないわ。
 
これ二つ持つと、オッパイ見たいだろう?食べたいなあ、オッパイ!」
 
お前なあ、俺の家でエロい話をするなよ、オフクロに聞こえるだろう!
 
そういった瞬間、ドアが開き、母が追加のオニギリを持ってきましたが、目がジッと俺たちを睨んでいます。
 
 
「本当に男って変わらないねえ。それだけ元気なら仕事しなさいよ!
 
私はいいけど、ただでご飯を食べれるのは何もできない子供だけさ。
 
大人はね、必ず、何かを食べさせてもらったり、泊まらせてもらったら「恩返し」をするもんなんだよ!
 
親に恥をかかせるような人間には、なるんじゃないよ!」
 
と言い切って、階段を降りて行きました。
 
 
全員、シーーーーーンとなり、「お前の母さん、おっかないなあ。」と言われました。
 
いや、おっかなくはないけど、真剣なんだと思うよ。
 
俺も子供の頃から言われているけど、「一宿一飯の恩義は必ず、返しなさいよ!」と言われ続けてきたもの。
 
なんだ、農家は、ヤクザと同じか??
 
ヤクザでも、なんでも一緒だって!
 
母は人としておかしい奴は、許さないのさ。
 
それくらい本気に生きている人なので、変な冗談は言うなよ!
冗談が通じない人だからな!
 
 
「何か恩返しできること、あるかい?」
 
大丈夫、あとでして欲しいことがあるか聞いてみるから、まずは、腹一杯、オニギリを食べろ!
 
1階に降りて行くと、母が二つの鍋でご飯を炊いていましたので、私は次に作るオニギリの準備をしました。
 
「こんなに全部、食べれるかね?」
 
と母が聞くので、大丈夫だよ、腹をすかせた妹や弟がいるヤツもいるので、全部オニギリにして包んでおいて!持たせるから。
 
それと、何か母が大変な作業があれば教えて!と聞くと、「あそこにる藁の山を納屋の裏に持っていって欲しいんだけど、頼めるかい?」OK!
 
2階へ行くと全員が満腹の顔をしていたので、さあ、今度は母への恩返しの時間だ。
外へ行くぞ!と連れ出し、藁の山を裏手へ持って行くように言いました。
 
全員学ランのままですが、素直に運んで納屋の裏に大きな藁の山ができました。
 
この藁はとっても気持ちがいいんだぞ!
俺も子供の頃からいつも、この上で昼寝していたんだと言って、藁の山に飛び込みました。
 
すると、次々に飛び込んで全員が藁の山の上に笑顔で寝ていました。
 
 
そんなところに母がやってきて、「あんたたち、デカイからだして、本当に子供だね!」と言われましたが、「子供ですいません!」と真面目なヤツが謝りました。
 
いいんだって、気持ちいい時は目一杯、楽しめよ!
 
また、家に帰ったらお前たちも色々な問題があるんだから、今は、目一杯、楽しめ!
 
お互いが藁の上で子供の頃からのいろんな話をしました。
こんな良い時間になるとは誰も思っていなかったので、最後はお互い無口になりました。
 
さあ、もう帰ったほうがいい時間だろ、帰れ!
 
藁の山から降りると、綺麗な学ランに藁がくっ付いてお互いに笑っていました。
 
 
玄関の前で「帰るよ!」と叫ぶと、母が二個づつ、新聞紙に包んでくれたオニギリを一人づつに渡そうとしました。
 
すると、一人の男が、「お母さん、このオニギリは、さっき、みんなで話し合って、コイツにやることに決めたんです。
 
今、こいつの家は、弟も妹もご飯を食べられない状況なので、きっと、お母さんも腹一杯のご飯はしばらく食べてないと思うんです。」
 
 
それを聞いた母は急いで家に帰り、精米した全てのお米を袋に入れて持ってきました。
 
「いいかい、じゃあ、これは私からお母さんに渡してあげて!
 
私も嫁に来た時は、誰も知り合いがいなくて毎日、泣いてばかりだったけど、一人の優しい近所のオバサンに助けられて、ここまで頑張ってこれたのさ。
 
たぶん、あんたの母さんも今が頑張りどころなんだよ。
 
まず、このお米で腹一杯、ご飯を食べてもらいなさい。
 
妹や弟も、ご飯が食べられないなんて、なんてフビンなの・・・。」
 
と自分のつらい時期を思い出して泣いていました。
 
 
20kg以上ある袋を交代に抱えてバスに乗り、お母さんに事情を説明すると、私の母にお礼を言いたいと翌日、言ったので、こう言いました。
 
「あのなあ、お礼を言いに行くのは普通のことだけど、ウチのお袋の性格を考えると、きっと、怒られぞ。
 
「私はお礼が欲しくてお米を渡したんじゃない!」と言われるのがオチさ。
 
だから俺から十分、お礼の気持ちは伝えておくのでお母さんにそう言ってくれ。
 
弟や妹は、どうだった、腹一杯のオニギリは?
 
いやあ、お前が作った大きなオニギリを見て、泣いて喜んでいたさ。
 
にいちゃん、この大きなオニギリ、私一人で食べていいの?ほんとに???
 
もう、うれし涙でいっぱいの弟と妹の顔を見ると、本当に我慢していたんだと、俺も泣けたさ。
 
 
母さんはよ、自分がしてあげたいことを他人様にしてもらって申し訳ないとばかり言いながら、たくさんもらったオニギリを父さんと一緒に食べて、言いたいことを言って謝って仲直りしてたよ。
 
だから、本当にありがとうな!
 
俺たち子供でも親にしてあげられることがあることを今回は学んだよ。
 
だから俺、社会に出たら、たくさんお金を稼いで、父さんや母さんに恩返しできる人間になるんだ!」
 
 
いいヤツです。本当に俺の仲間はいい奴ばかりだったので、話を聞いていたクラスの女子生徒がうらやましそうな顔をしていました。
 
あのなあ、俺のお袋は女なんてくれてきたら大変なことになるので、俺の家は無理だから、副学級委員長の家に行けよ!
 
俺の家の話をしたら、きっと、お父さんも許してくれるさ。
 
だって、ウチの親父とお前の父さんは、とても仲がいいけど、ライバル意識もあるので、必ず、腹一杯のご飯を食べさせてくれるはずだ!
 
 
数日後、その事情を聞いて、クラスの女子たちが行くことになったので、「いいか、絶対に、オニギリを食べたら「恩返し」しろよ!
 
きっと、この時期だとお母さんは、冷たい水で大根を洗って漬物の準備もあるだろうから、全員、ジャージを持っていって、食べたあとに恩返ししろよ!と伝えました。
 
土地も水も共有して生きている農家は、お互いに好き嫌いだけじゃ生きていけないので、必ず、話しあって物事を決めていますし、その大きな集まりが「農業委員会」なのです。
 
 
農家以外の人間が、農家の土地で農業をしようと思っても、まず、地元の農業委員会の許可が出ないと行政も許可を出せません。
 
 
オニギリをあげたお母さんの言葉と思いをオフクロに伝えると、「お前もわかって来たじゃないか!」と褒められました。
 
私たち子供は、親が口にしない思いをどれだけわかってあげるのかが、「子供の仕事」なのです。
いい歳をして、親の悪口を口にしている人間とは、付き合わないことをオススメします。
 
自分の親に感謝と尊敬がない人間は、必ず、あなたの親御さんにもご迷惑をかける人間ですので、早めに別れて次の相手を探して下さい。
 
「命のつながり」を田んぼと、お水と、空気と、お米で支え合っている農家の気持ちを少しでもわかる人間になることは、「生き残りの方法」でもあるのです。
 
どうか、子供達にもこの記事を読ませて、子供が親に話していない体験や考え方を知って下さい。
 
 
「子は親の良いところを見て育ち、親は子供の悪いところを見て育つ」と昔から言われてきた理由は、親子はお互いに足りないところを学び合って社会へ出て「恩返し」できる人間になることだと母から教わりました。
 
今からでも遅くありません。
 
夫婦でも、親子でも、価値観の違いを学びあうことからお互いを深く理解し合って下さい。
 
ありがとうございます。
 

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