1. HOME
  2. 天無神人ブログ
  3. 【吉岡一門 頭領の体験談】
  4. 母の教え:不退転の覚悟

母の教え:不退転の覚悟

小学生の頃から母は、ことあるごとに「教え」の時間を作るのが、我が家の習慣でした。

「まなぶ、ちょっと来なさい。ここに正座しなさい。」

また、怒られるのかと思ってドキドキして母の前に正座すると・・・。

 

お前、「不退転の覚悟」って聞いたことあるかい?

これは男なら必ず、必要なことなので覚えておきなさい。

 

私は女だからいいけど、男には絶対に必要だとおじいちゃんから言われたので、教えておくね。

「不退転の覚悟」っていうのは、何があっても引き下がらない覚悟のことで、

「男に二言はない」という武士道の精神からきている言葉なのさ。

男はね、一度、何かをやると決めたら、どんなにつらい状況になっても、どんなに苦しいことがあっても弱音を吐いたら負けなんだよ。

戦争から帰ってきた時におじいちゃんが教えてくれたけど、

「しなばもろとも」って覚悟で一緒にたくさんの兵隊さんたちと敵地にいったんだと。

 

でもね、やっぱりイクジがないヤツもいて、帰りたいだの、腹が減っただのブツブツ、女みたいに文句を言うヤツもいたんだとさ。

 

兵隊さんが出兵する時はね、お国のため、自分を産み育ててくれた両親、兄弟、近所の人の為に死にに行くんだから、「赤紙」が来た家には、どんなに食べ物がなくても、かき集めて兵隊さんの家に持っていって、出兵、おめでとうございます!

どうぞ、少しばかりですが食べて下さい」とお米や野菜を渡すものなのさ。

お金がある家はお祝い金も出すけど、食料も、お金も、もらうのは家族なのさ。

 

中学を出たばかりの男の子は、社会に出ればたくさんお金も稼げるけど、戦争で亡くなってしまうと家族が露頭に迷うでしょ。

だから、近所の人たちが「お祝い」という名前で、家族に何とか生き残って下さいねと、気持ちの食べ物やお金を渡す習慣があったんだ。

 

じいちゃんは、少しだけ食べ物を親から頂いていたけど、泣き虫の兵隊さんんに「食べろ!」って分けてあげたんだって。

一緒に死にに行く覚悟をしている人間には、優しくしなさいね。

 

「今の時代はそんな、死にに行くことってないでしょ!?」

 

だからみんな男だちがボケボケ、チャラチャラしてるアホな男ばかり増えて、社会がおかしくなっているんじゃないか!

よく聞きなさい!

 

男は世の中に出れば「7人の敵がいる」って、昔から言うんだよ!

 

それは、昨日、教わりました。

だからこそ、命をかけてお互いを守りあえる信頼のおける人間を見極めて、一緒に生きなさいって意味なのさ。

 

そして、男が一度、本気で決めたら「不退転の覚悟」で臨むものだと覚えておきなさいね。

なに?「ふたいてんのかくご」って???

 

辞典で調べて文字を見ればわかると思うけど、どんなことがあっても、後ろを振り返らず、前だけ見て生きる覚悟という意味さ。

 

兵隊さんが隊列を組んで歩いている時に、見送る親や家族を振り返ってキョロキョロしてたら、ぶん殴られる時代だからこそ、「不退転の覚悟」で、あんたも生きなさいね。

私も嫁に来た時に、おじいちゃんから言われたのさ。

これから嫁に行くという時に、私はお世話になりましたと両親に言うと、

 

お前もこれからたくさんつらい思いをすると思うが、「不退転の覚悟」で望みなさい。

夫婦は、戦争へ行く兵隊と同じなんだ。

 

お互いに信用しあって、何があっても相手を守らないといけないんだぞ!

頭に来ることもあるだろうし、腹が立って喧嘩することもあるだろう。

ただ、何があっても別れてはいけないぞ。

男も女も、人間は一度、本気で決めたことは振り返ってはいけないのだ。

どんなにつらいことがあっても、これからワシはお前に何もできん。

 

吉岡家に嫁に行くということは、そういうことなんだ。

お前が嫁に行く覚悟をした気持ちはよくわかっている。

 

だからこそ、ワシはお前を喜んで送り出すぞ!

二度と、この家の敷居をまたぐなよ!

勝手に、帰ってきたらぶん殴るからな!って、父さんに言われたんだよ。

 

結婚は出兵と同じだって聞いてビックリしたけど、あの時、父さんに言われた意味が、結婚してよくわかったよ。

お互いに違う家庭環境で育った人間が、一緒に住んでうまくいくわけないでしょ。

兄弟姉妹でも、毎日のように喧嘩するでしょう!?

それと同じさ。

 

だから、あんたも結婚する時は、そういう覚悟でしなさい。

そして、社会へ出たらたくさん敵もいると思うけど、一人でいいから本気で信頼できる人間を見つけなさい。

お前は私と同じで正直すぎるから、きっと、つまはじきになることもあるかもしれないけど、「不退転の覚悟」で生きなさい。

母さんの願いは、それだけだからよろしく頼むね!

 

怒られるのかと思っていると、母が泣きながら人生で一番、大事なことを教えてくれた日になりました。

その理由を別な日に聞いてみると・・・。

 

この前、じいちゃんが兵隊に一緒にいった時に、一緒に生き残って帰ってきたヤツが、あまりにつらくて、自殺したことを兵隊時代の仲間から電話で知らされたんだと。

その時のじいちゃんの声があまりにつらそうで、初めてじいちゃんが涙を呑んで電話してきた思いを感じたので、お前にその覚悟を伝えたかったのさ。

 

「オレは、生きててもいいのか?」

って、じいちゃんが私に聞くんだよ!

 

じいちゃんは、絶対に弱音を吐く人じゃないからこそ、よっぽどだと思ったけど、心配して、もし実家に勝手に戻ったら、殴られるから私は帰ることもできないのさ。

 

だからお前も、親を泣かすようなことだけはするんじゃないよ!

あんたが社会に迷惑をもし、かけるようなことをしたら、私があんたを殺して死んでやるからね!

覚悟しておきなさい!!!

 

小学4年生の時の、母の教えでした。

アーカイブ

Translate »