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【ダイエー】病院の事務局長とプロパーの対話 2

▶️「病院の事務局長とプロパーの対話 1」の続きです。

目の前に、日本酒が6本、揃ったところで乾杯して、課長がゆっくり口を開きました。

俺が若い頃、同期でいつも売り上げを争っていた奴がいてなあ。

いつも、そいつには、負けることが多くて、二人で飲みに行った時に、「接待のコツ」を聞いてみたのさ。

そしたら、そいつが、「お前には話したくない!」と言ったので、理由を聞くと、同期のお前に知られたら、一生、この会社で笑い者になるので、話したくないと言ったのさ。

だから、一生涯、今から聞く話は誰にも言わないと約束して、話してもらった内容だから、覚悟しろよ!

その同期は、入社当時は、お前(部下)みたいにいくら接待費を使っても、全く薬も機材も買ってもらえず、毎月、最下位の成績だったので、いつも上司に怒られていたのさ。

俺は、毎月、売り上げトップをいつも維持していたので、給料もガンガン、上がったさ。

3年も経った頃だったかな、売り上げが上がらないままの同期が、突然、とんでもない実績を作ったのさ。

その商売相手の病院は、どこの製薬会社が行って話しさえ聞いてもらえず、事務局長にも会えないまま、窓口の女性に「お帰り下さい」と言われる大きな総合病院だったのさ。

多分、他の会社もやっていると思うけど、「名刺だけ置かせて下さい」と言った封筒に現金を入れておくと、次に行った時には、病院の事務の女性が封筒と渡した金額のまま、返されるってわけさ。

だから、どこの製薬会社も、「あの病院の事務局長だけは、どうやっても切り崩せない。」と言っていた有名な病院なのさ。

そんな、大きな厄介な病院だぞ!!

それを、3年間も実績が出なかった奴がなぜ急に売上を作れたのか、会社の上司たちも驚いたので聞いたみたそうだが、絶対に、契約内容は課長にも教えなかったのさ。

1ヶ月だけのたまたま「まぐれ」の売上だろうと思っていると、毎月、同じくらいの巨額な注文が入るので、そこから毎月、同期の奴は、ずっと、トップさ。

俺はずっと、二番になったので、だから悔しくて、頭を下げて頼みに行ったんだ。

でも、その同期の奴に、「絶対に言わない約束」をしたので、さっきは、悩んで話せなかったのさ。

兄ちゃんよ(天無神人のこと)、本当に、こいつのために言わないとダメか?

俺、辛いのよお・・・あいつとの約束を裏切るのが・・・。

 

私:課長、大丈夫ですよ。彼はもう、あなたに話したあと、部長にだけは正直に契約内容を話したので、もう二人だけの秘密では無くなっているので、安心して下さい。

課長:本当か?本当に部長に話したのか?悔しいなあ、俺には言うなって言ったくせに・・・。

わかった、じゃあ、覚悟したわ。

(部下に向かって)

これから俺が話すことは、誰にでも通用する方法じゃないので、お前はそのまま真似をしようとするなよ!

そんなことをしたら、俺の同期に失礼だからな!

わかるな!約束は破るなよ!

じゃあ、話すわ・・・。

あれ?もう、俺の3本の日本酒はないのか?俺が飲んだのか?

 

私:はい、課長、グビグビ飲んでいたので、もう無くなりました。

俺の分も含めて、あと6本、追加しましょう!

(部下に向かって)平(ひら)のお前は、まだ飲むなよ!

課長の話が全部終わった時に、感動の乾杯をしようぜ!

それまでは、水で我慢してろよ!

 

課長)俺の同期が話してくれたことは、あの大きな総合病院の事務局長との話なんだ。

奴も、何度も名刺を置いて行くのが精一杯だったので、いつも、「ありがとうございます」と、誰も見ていない病院の玄関に向かって、一礼してから帰っていたそうだ。

ちょうどその日、事務局長が奥にいたらしく、同期の奴の後ろ姿を見て、後から携帯に電話が入ったそうなんだ。

同期:はい、◯◯です!あ!あの病院の・・・、いつもお世話になっています!ありがとうございます。

事務局長:あのなあ、まだ、お前の会社からは何も買っていないので、俺にお礼を言っても意味がないぞ!

それよりな、お前を見込んでちょっと話があるんだが、時間は取れるか?

同期:はい、いつでも、どこへでも飛んで行きますので、場所と時間を指定して下さい!

事務局長:おい、若いの!

手土産とか、一切、持ってくるなよ!

持ってきたら、一切、話をしないで帰るから、手ぶらでこいよ!いいな!

 

二人は、病院から離れたある公園で待ち合わせたそうなんだ。

事務局長:俺はいつも、いろんな製薬会社の人間が名刺やお菓子やお金を持ってくるけど、俺は一切、受け取る気は無いので、全部、どの会社の奴にも、突っ返してきたのさ。

でもよ、この前、お前が帰る背中を見ていて、話しをしたくなったのさ。

おまえは、きっと、大した”うだつ”も上がらず、営業成績も悪い社員だろう?

同期:はい、おしゃるとおり、3年間、最下位の成績ばかりで、後輩にも抜かれて、今、この会社をやめるかどうかを悩んでいるところなんです。

事務局長:そうさ、俺に気に入ったのは、その正直ささ。

お前は、なんで自分の営業成績が上がらないか、わかるか?

お前は、いつも良い成績を上げる先輩や同期の奴らと戦っているだろう。

その戦っている匂いが身体中からプンプン出ているので、誰だって、お前からは買いたく無いさ。

わかるか?

実際の匂いじゃなくて、空気って言うのかなあ。

人が初めて会った時に、何だかわからないけど、気になって話したい奴と、そうでない奴がいるものなのさ。

お前だって、女の子と会っていればわかるだろう?

また会いたい女と、もう会いたくない女の違いのことさ。

俺たち病院の関係者に会う時も、それは同じなのさ。

お前は、空気が悪い!でも、正直者だ!

それを俺が気に入ったのさ。

だから、お前に電話をかけたんだけど、いいか、これから話すことは絶対に他人に話すなよ!

お前の正直さを信じて話すので、商売も抜きで、ただ、聞いてくれ。

 

俺なあ、この歳まで結婚するつもりはなかったんだけど、その理由は、以前、若い頃に付き合った女と別れたあとに、彼女が妊娠していたってことを、友達から聞いたのさ。

その時は、自分のことばかり考えていたんだけど、一応、電話して「その子供の養育費を出そうか?」って言ったら、「あなたのお金なんか、絶対に、いらないから、もう金輪際、電話してこないで!」と怒られたので、今まで、一度も電話はしなかったのさ。

それがよう、その昔、別れた女から、突然、電話がきたのさ。

ちょうど、お前が俺の病院に名刺を置いて、帰って行ったあとにな・・・。

 

俺、今、結婚しようかと思っている女がいるのさ。

病院の中にいる女なんだけど、今まで上司と部下の関係だから異性として見たことはなかったんだが、年のせいか、自分一人で老後を迎えるのに、いくらお金を貯めても意味がないって気づいたので、その話を彼女にすると、彼女も将来を考えたら、一人は寂しいって言うので、結婚しようかって、この前、言ったばかりなんだ。

そのタイミングで、大昔の女から電話だぞ・・・、困ったさ。

 

「昔の女」の話はなあ、実は、娘が今度、高校に上がるんだけど、ちょっとだけお金が足りないので援助してもらえないかと言われたのさ。

普通、高校って、そんなにお金はかからんはずだろう。

何かあると思ったんだが、俺が動くと彼女を信用してないみたいなので、お前にお願いがあるんだ。

今度、その娘の学校へ行って、できれば昔の女が住んでいる家も見てきて、俺に報告してくれないか?

どうだ、こんなことをお前に頼むのは失礼なんだが、お前の正直さを信じて、頼む!

頼まれてくれ!!!

同期:わかりました、事務局長の娘さんも気になりますが、それより、その「昔の女性」が電話してきたのは、きっと、何か言えない理由がある気がするので、僕も気になります。

大事な役目ですが、私もやらせて頂きたいので、どうぞ、よろしくお願いします。

 

事務局長は、昔の彼女の住所と電話番号と、娘が通っている学校の名前と娘の名前を書いた紙を若い男に渡しました。

事務局長:もし、詳細がわかったら、電話してくれな。会うのは、この公園で、頼むな!

俺が結婚しようと思っている女が病院にいるので、また会う時は、この公園でよろしく頼むな!

この続きは、次回です!

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