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命のローソク 9  若い修行僧のお礼参り

幼稚園時代に、若い修行僧と話した内容は、👉「命のローソク 7 修行僧」をお読み下さい。

実は、この若い修行僧は、キッチリ10年後に、「御礼参り」のために私の実家までやってきてくれたのです。

ちょうど、私が高校一年生の秋だったと思いますが、珍しく夕暮れの家の前に、誰か知らない男の人が立っていたのです。

私はもう、バリバリの長ランリーゼントでツッパっていましたが、その若い男性は、カジュアルな服ながらも、こ綺麗な洋服を着て、玄関の前に一人で立っていました。

「あなたは、誰ですか?何か、御用ですか?」と質問しながらも、私の目は、思いっきり睨んでいたし、いつでも戦う「戦闘モード」に入っていたと思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「もしかして、あなたがマナブ君???」

はい、私は吉岡マナブです。あなたは、誰ですか?

なぜ、僕の名前を知っているのですか?

そしてなぜ、他人の家の前でずっと立っているのですか?

私は目が良いので、1km先から歩いてくる途中で、家の前のあなたが見えていました。

立ったり、座ったりしながら、何をしているのですか?

他人の家の前で、何か変なことを企んでいるなら、警察へ突き出しますよ!

「僕さ・・・僕、わからないかな・・・?

君が幼稚園の頃に、思いっきり、やっつけられた修行僧さ!」

・・・・・・・・・・・・

あ!思い出しました!あの?あのバカ修行僧???

「そんな、バカって言わなくても良いでしょ、確かにバカでしたけど・・・。」

だって、本当にバカでしょ!

幼稚園児の僕に、言い負かされるし、その上、人間としても最低の挨拶もできない人が、坊主なんて、片腹痛いですわ!

「いやあ、確かに・・・変わらないねえ、あなたのその切れ味の強さは・・・俺だったら、そこまで他人を切りきれないけどなあ・・・。」

あなたは、今の僕の言葉で「切られた」と思ったんですか?

弱いですね・・・、今のは「峰打ち」ですよ。

もし、僕が本気で真剣を出したら、あなたの人生はボロボロになりますよ!・・・。

(霊視して・・・)

???・・・・・???・・・・

あれ???なんだあ?

あなた!誰かと一緒に来ているでしょ!

誰ですか?一緒に来た人は・・・・?

男?いや、女だ!

????でも、子供もいるなあ、二人・・・。

何をしようと思っているんですか?

私と戦って勝って、子供たちの前で私に恥をかかせたいのですか?

そんなこと企んでいるなら、逆に、子供たちの前で、ボロボロにしてあげますよ!!!

さあ、連れてきなさい!

その女性と、子供たちを!!!

 

「良いのか?連れてきても?本当に、良いのか?」

あなたもしつこい人だなあ、「武士」に、二言はありませんよ!

さあ、誰でも良いから連れてきなさい!

・・・・・・・・・・・・

こ綺麗な女性と、男の子と女の子を連れてきたので、まずは、きちんと挨拶をしました。

「初めまして。私は吉岡マナブと申します。あなたのお名前は?」

と、まず、お姉ちゃんの顔を見て挨拶し、そのあと、弟のほうにも同じ挨拶をしました。

お姉ちゃんは、目一杯、全身に力を入れて自分の名前を叫び、90度に背中を倒す「直角お辞儀」をしました。

よし!よし!

弟は、お姉ちゃんの目を何度も見ながら、頑張って、声を振り切るほど大声で、名前を叫び、90度に頭を下げました。

ほほう、なかなか「躾」ができているじゃないか・・・。

さあ、この女性は、どういう人なんだ?

俺が一発、霊視して、コテンパンにしてやろうか?と一瞬、思っていると、背中で声がしました。

 

あらあ?あなたは、昔、向かいのお寺で修行していたお坊さんかい?

その女性と子供たちは、家族かい?

「はい、お母さん、僕を覚えてくれていますか?ありがとうございます。これは、僕の家族で、妻と子供たちです。」

ふうん、立派になったねえ。綺麗なお嫁さんも見つけて、子供二人まで産んだとは、すごいね。奥さん、ありがとうございますね。

今の時代は、子供が減ってきているので、少しでも子供を生んで育てる女性が増えないと、この日本の将来は無くなるかもしれないから、しっかり、子供を産み育てて、家族を大きくしなさいね!

孫を産ませるかどうかは「母親次第」だから、私も今、母親の先輩たちに、どうやって早く孫の顔が見れるかを教わっているところなのさ。

やあ、よかった!よかった!

????あれ?もしかして、今日は、このマナブに会いにきたのかい?

 

「はい、そうです。10年前にコテンパンにやられたので、僕も男の意地で、今日まで必死に頑張ってきました。

仏門の世界にも「御礼奉公」はありますが、このマナブ君とは師匠、部下の関係ではないからこそ、「人間として認められる自分」になってから会いに来ようと、今日まで頑張ってきました。

もし、10年経って、自分が会いに行ける資格がないと思ったら、会いに来るのをもう10年先に伸ばそうと思っていました。

マナブ君に言われたとおり、本当に、あの時の自分は足りない人間だとあとで気づいたからこそ、どうやってマナブ君に認めてもらうか、一人で悩み続けました。

僕の実家は山梨県なのですが、自分の人生をどう生きるかわからなかったので、すぐ実家に帰っても意味がないと思って、その答えが出るまで、托鉢(たくはつ)をしながら北海道から山梨県の実家まで歩いて帰りました。

そして、実家のお寺のすぐ近くまで行った時、わかったんです。

僕は、「甘えて生きていた」ということを骨身に染みて、わかったんです。

頭では、マナブ君に言われてわかったつもりでしたが、約200時間、考え続けて、歩き続けて、やっと、わかったんです。

自分の愚かさ、自分の一方的な視点や考え方、そして、相手の気持ちより自分の思ったことを優先する「自分勝手な考え方」をしている自分が本当にバカだったと、腹の底からわかったんです。

本当に、すいません・・・、すいません・・・

すいません・・・すいませんでした・・・・・・

(涙を流しながら、私に土下座しようとしたので、私が止めました)

 

あのね、あなた、もし、ここに”あの住職”が生きていたら、張り倒されますよ!

あの人は、厳しそうに見えて、本当はとっても優しい人なので、人間としてもプライドまで下げると、すぐに引っ叩かれますよ!

僕も何度か、土下座して謝ろうとした時、幼稚園児の僕の頭を本気で殴りましたもの。

 

だってね、あなた、自分の後ろに奥さんとお子さんがいるのに、一家の主人(あるじ)のお父さんが、公の場で土下座したら、僕があなたを切らなきゃいけなくなるし、それは僕も望んではいません。

それに、後ろを振り返って見て下さい!

子供たちが、必死で涙を堪えているでしょ!

そんな姿を子供の前で見せては、いけませんよ!

僕だったら、その態度自体が「腹切り」ものだと、思います。

実際に、住職は、ご家族の問題を抱えて悩みすぎて、自分で腹を切って、亡くなりましたが、ご存じですか?

・・・・・・・・・

え!本当に!????あの住職が・・・???

本当ですか・・・・本当に・・・・・・。

ほら、泣かないで、自分の足でしっかり、歯を食いしばって立ちなさい!

男は公の前で、決して、泣いてはいけないと、私も父に教わっていますし、私の母はそんなことをしたものなら、あとで私をボコボコにしますよ!

そんなこと・・・するわけないしょ!

・・・でも、一発くらいは殴るかも・・・。

まあ、良いでしょ、私のことは!

 

もう、夕日も落ちる時間だから、家に入りなさい!

外でこんなに大事な話しをしたら、ご先祖様に怒られるわ、私。

男が本気で謝っているのに、あんたも家長みたいに振る舞わないで、この人を許してあげなさい!

さっきから、あんたの言葉を聞いているけど、何も、この人を許した言葉を吐いてないから、この人は頭を下げるし、土下座もしようとしてるんだよ!

これは、あんたの責任だよ!

あんたも、この人に土下座しなさい!

私の言うことが聞けないなら、私があんたの首を刎ねるよ!

さあ、包丁でも持ってくるかな???(^^)

 

もう、本当に怒らせたら怖い母なので、私は謝って、「許します」と言ったあと、こう言いました。

「私は、あなたの10年間は見ていませんが、私の守護を通して、あなたの様子は時々、のぞいて見ていました。

私は一度、会った人なら、時間を超えて、どこにいても様子を見ることも、会話の内容を聞くこともできます。

でも、あなたはいつも一生懸命にやっていたので、ただ、見守っていました。

あなたの実家に向かうまでの道を、歩いて帰ったのも知っています。

そこまでしなくてもと思ったんですが、どうして、実家のお父さんに挨拶もしないで、振り返って他の場所に行ったんですか?

 

見てたんですか・・・、じゃあ、正直に言いますが、この女性は私の子供の頃からの同級生で、いつも私を支えてくれた信頼がおける女性なんです。

もうすぐ実家に着くと思った時、偶然、この女性にあったので、久しぶりと挨拶すると、もう苦しすぎて、涙が出て止まらなくなったんです。

そうしたら、「私の家に来て!」と言うので、お母さんと一緒に食事を食べさせてもらいました。

その日も、翌日も、この女性の家に泊めてもらったので、もう、帰ろうとしたら、この女性が、こう言ったんです。

私、あなたのことを昔から見ていましたが、いつも、「何か足りない」と思っていたんです。

それが何かが、やっとわかったんです。

この人は、長男だから、家のお寺を任せられる責任があるし、でも、自分の好きなこともしたいし、一回でいいから自分の好き勝手な時間を下さいとお父さんに話したことを、あなたのお母さんから聞いたんです。

私は、本当はあなたがお寺に戻ってきたら、直接、会って言おうと思っていたことがあったのに、あなたはいくら待っても帰ってこないので、諦めかけていたんです。

そうしたら、ボロボロの袈裟を着たお坊さんが見えたので、よく見たらこの人だったので家に連れ帰って、お風呂に入れて、食事をご馳走したんです。

そのあと、決意して、「このままずっと、ここにいませんか?私と一緒に・・・?」と言ったんです。

この人、何の意味かをすぐわからなかったみたいで、「しばらく、考える時間をくれ!」、なんて言うんですよ。

私も良い歳になったので、誰かと結婚して子供も産みたいけど、この人のことが気になっていたので、やっと勇気を出して言った言葉の返事が、「待ってくれ!」ですよ!

それって、普通は、断った意味になるじゃないですか!

もう、頭にきたので、「私はあなたと結婚して、子供を産みたいので、その覚悟があるかどうかを教えて!」って、言ったんです。

そう言って、やっとわかったみたいで、「俺で良いのか?こんな俺で?」と言うので、言ってやりましたよ。

あんたのバカ真面目なところも、気がつかないところも十分、子供の頃から見ているからわかってますよ。

ただね、私のことだけは信じてね!

あなたは、今も昔も、自分のことも信じれないし、そして、ご家族の気持ちもわからないバカ者だと思っているので、それは最初から諦めてます。

でも、私のことだけは信じて、一緒に子供を作って育てて下さい!とお願いしたのんです。

そこまで女に言わせて、やっと、「お願いします」ですよ!

もう、頭にきましたよ!

この人、本当に、「バカ長男」を代表するような人だから、私が支えるって決めたんです。

そしたら、ポンポンって、子供が生まれたので、一生懸命に土方をしたり、建設会社で働いて、お金を稼いでくれたんです。

もう、結婚して10年経つから「俺が修行した北海道のお寺に挨拶したいので、家族で旅行するか?」と聞かれたので嬉しかったんです。

それなのに、こんなツッパリ小僧・・・あら、ごめんなさい、言い過ぎましたね・・・。

あなたのような毅然とした年下の男の言葉で土下座するなんて、私も許しませんよ!

子供の手前もあるけど、私にも妻としてのプライドがあります!

私と子供の分を背負って生きてくれていると思ったのに・・・。

本当に、「バカ長男」は扱いが面倒ですね、お母さん!?

 

うちの夫は12人兄弟の10番目だから、もう甘やかされて育ったので、大変ですよ。(^^)

まあ、こんな話をしているうちに、暗くなり始めたし、子供もお腹を空かしているので、今日はうちに泊まっていきなさい。

私は料理が苦手なので、あなたに手伝ってもらうと嬉しいわ、良いかい?

はい、お願いします、お母さん!

 

この会話を聞いているだけで、本当に、「割れ鍋に綴じ蓋の夫婦」だと思いました。

翌朝、私が高校へ行く前に、まだ、遺骨が入っていない空の仏壇でお経をあげてもらいました。

少しは修行したはずだと思ってお願いしましたが、お経は読み間違えるし、声も変だけど、魂からの「本気のお経」だとすぐにわかりました。

自分でお経をあげながら、昔を思い出して、自分で泣いている若坊主の目の前には、「あの自害した住職」が、やってきていました。

ただじっと、若坊主のお経を聴きながら、ウンウンと首を縦に振っていました。

お経が終わると、若坊主は、真っ直ぐ僕を見て「今のお経、どうでしたか?」と涙目で聞いてきたので、素直に、こう答えました。

今、亡くなられた住職が、あなたの目の前に座っていて、あなたのお経を聴きながら、首を縦に振っていましたよ。

あの住職は、言葉で人を褒めることはしませんが、相手を認めた時は、首を縦に振るんです。

そして、自分で言葉にできないので、私にこう、言葉を託してくれました。

 

よう、頑張ったな・・・、よう頑張った・・・、うんうん、俺も、嬉しいぞ・・・。

わかったろ、寺でお経を上げることが、「坊主の仕事」じゃないんだぞ!

「坊主の仕事」は、いつでも、どこにいても、何をしていても、御仏様と一緒にいる人間として生きることなんじゃ。

だから、お前のこの10年間は、十分、坊主の仕事をしていたぞ!

あとは、家に戻って、親父に「恩返し」をしなさい。

俺は、最後まで自分の親父に褒めてもらえなかったから、お前を、お前の親父に褒めてもらって欲しいのさ。

俺も自分の息子は社会的に褒められないことをした奴だから、悔しくて辛くて自害したが、「自殺は足りない人間」のすることだから、真似をするなよ!

 

全国の俺に「禅問答」で負けた坊主たちにも、言っておけよ!

坊主は、自分で死んではいかんとな!

あの京都のバカ坊主に言えば、きっと、全国の奴らに広まるさ。

 

俺はな、「坊主」として死んだんじゃないんだ。

俺はな・・・俺は、「武士」として死んだんだ!!!

だから、腹を切る前に、お釈迦さまにもらった名前をお返しするお経をあげてから、「武士」として死んで行ったと、みんなに伝えておくれ。

このマナブを通して、このことを今、伝えられる俺は、今、最高に幸せだ!

もう、十分、成仏したから、二度と俺のことを思い出すなよ!

坊主の俺は死んだが、「武士の俺」は、こちらの世界で生きているぞ!

お前たち坊主が習った「あの世の仕組み」は、ほとんど間違っていると、自分がここへ来て、よくわかったのさ。

でもまあ、生きるのには金も必要だから、上手に「恩返し」しながら賢い坊主になりなさい。

これが最後に、お前に教えられる言葉だ。

じゃあな!

 

あとから母に付き添われて、お寺の本堂の扉を全て開いて、住職と同じ形で、「修行坊主を正式に認めるお経」を、息子さんが唱えていたよと聴き、安心しました。

 

今、人生で出会った人に「恩返し」をきちんとしてきた人は、どれくらいいるのでしょうか?

子供を育てていない人は、「親に育ててもらった恩を子供に返していない」ので、人間として、他人の子供を育てる覚悟で生きて下さい。

私も、ずっと、そうしています。

「10年後の自分」を見せてあげる相手が、親以外にいるのなら、きっと、あなたは大きな成長をしている人だと思います。

今日のブログを読んで、本気で自分に言い訳をしない生き方をして下さる人が増えることを願って私の体験談を書いています。

「命のローソク」に関わってくれたご先祖たち、そして、現実の出逢った人たちに感謝すると共に、今も若坊主を支えてくれている奥様やご家族や檀家さんたちに心から感謝をいたします。

本当に、ありがとうございます、大好きですよ!住職!!!

 

 

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