イーロン・マスクがトランプ政権を離脱…「正直に言ってがっかりした」 2025年5月29日(木)13時41分

5月28日、米実業家のイーロン・マスク氏(写真)がトランプ政権における特別政府職員としての役割を終えることになったと、ホワイトハウス高官が明かした。3月22日、フィラデルフィアで撮影(2025年 ロイター/Nathan Howard)
米実業家のイーロン・マスク氏がトランプ政権における特別政府職員としての役割を終えることになったと、ホワイトハウス高官が28日に明かした。
高官はロイターに、マスクが政権を去ることは事実で「退任は今夜から始まる」と語った。
政府効率化省(DOGE)を率いてきたマスク氏は同日、「特別政府職員としての任期が終わりに近づいているが、無駄な支出を削減する機会を与えてくれたトランプ大統領に感謝したい」とXに投稿。
「DOGEの使命は、政府全体のあり方となるにつれて時間とともに強化されるだろう」と語った。
マスク氏の任期は130日以内とされており、今月30日ごろに終了する予定だった。トランプ政権は、DOGEが行ってきた連邦政府の再構築と縮小の取り組みは今後も継続されると述べている。
トランプ氏とDOGEはこれまで、230万人の連邦政府職員の約12%に当たる26万人を削減した。
一方、マスク氏は27日放送のCBSとのインタビューで、トランプ氏肝入りの税制・歳出法案が米国の財政赤字削減に向けた取り組みを阻害すると批判し、「正直に言って、この巨額の支出法案を見てがっかりした」と述べていた。
[ワシントン 28日 ロイター] – トランプ米大統領は28日、大規模な減税の延長などを盛り込んだ税制・歳出法案の内容について協議する予定だと述べ、一部条項に不満を示した。
同氏が「大きく美しい」とする同法案は、下院が22日に可決。現在、上院で審議が行われている。議会予算局によると法案が成立した場合、今後10年間で連邦債務が3兆8000億ドル程度増える見込み。
米実業家イーロン・マスク氏は27日放送のCBSニュース「サンデー・モーニング」のインタビューで、法案が米国の財政赤字削減に向けた取り組みを阻害すると批判。
「正直に言って、この巨額の支出法案を見てがっかりした」とし、「法案は大きくも美しくもなり得ると思うが、その両方を実現できるかどうかは分からない」と、財政赤字削減ではなく増大につながる可能性に懸念を示した。
トランプ氏はマスク氏の懸念に直接言及せず、「法案について交渉することになるが、幾つかの面については満足していないが、他の面には興奮している」と記者団に語った。
また、上院での可決に向け十分な支持を確保する必要があると強調し、「縮小はできない。多くの支持を得る必要がある」と述べた。
ホワイトハウス当局者は、マスク氏率いる政府効率化省(DOGE)が連邦支出を対象に行った削減策を正式なものにするため、早ければ来週にも法案を議会に送る予定だと述べた。
「利下げしないのは間違い」、トランプ氏がパウエルFRB議長と面会

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は29日、トランプ大統領の招待を受け、ホワイトハウスでトランプ氏と会談し、経済成長、雇用、インフレなどの経済情勢について協議した。2017年11月撮影(2025年 ロイター/Carlos Barria)
[ワシントン 29日 ロイター] – トランプ米大統領は29日、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長と面会し、主要政策金利を引き下げないことは「間違いだ」と伝えた。ホワイトハウスのレビット報道官が明らかにした。
FRBはこれに先立ち、パウエル議長がトランプ大統領の要請を受け、ホワイトハウスでトランプ氏と面会し、経済成長、雇用、インフレなどの経済情勢について協議したと明らかにしていた。
FRBは声明で「パウエル議長は、政策の道筋が完全に今後の経済指標とその見通しへの影響に依存するという点を強調する以外、金融政策に関する自身の見通しについては言及しなかった」と説明。
パウエル議長は、法律で義務付けられている通り、最大雇用と物価安定を支えるために金融政策を策定し、慎重かつ客観的で非政治的な分析のみに基づいて決定を下すと伝えたとした。
トランプ大統領はFRBが利下げを行っていないとして、これまで繰り返しパウエル議長を非難している。
アメリカの裁判所がトランプ関税を差し止め…「大統領の権限を逸脱している」 トランプ政権は控訴

5月28日、米連邦裁判所はトランプ大統領の「解放の日」関税を差し止めた。
写真は相互関税措置について発表するトランプ氏とラトニック商務長官。4月、ワシントンのホワイトハウスで撮影(2025年 ロイター/Carlos Barria)
米国際貿易裁判所は28日、トランプ大統領が「解放の日」と位置付けて4月2日に発表した貿易相手国に対する関税を差し止めた。
対米貿易黒字を抱える国々からの輸入品に全面的に課税することは「大統領の権限を逸脱」しているとの判断を示した。
米国憲法は議会に他国との通商を規制する独占的な権限を与えており、米経済を守る大統領の緊急権限によってこれが覆されることはないとした。
トランプ政権はこれを受け、直ちに控訴した。
この判断は2件の訴訟で下された。1件は超党派のリバティ・ジャスティス・センターが関税対象国から製品を輸入している米国の中小企業5社を代表して起こした訴訟。もう1件は米国内13州が訴えていた。
関税を巡り、少なくとも5件の訴訟が係争中となっている。
ミラー大統領次席補佐官は裁判所を非難し、「司法クーデターは制御不能だ」とソーシャルメディアに投稿した。
オレゴン州の訴訟を主導している民主党のダン・レイフィールド司法長官は、トランプ氏の関税は違法かつ無謀で、経済にとって壊滅的だと指摘。
「今回の判断はわれわれの法律が重要であり、貿易に関する決定は大統領の気まぐれで行われるべきではないことを再確認するものだ」と述べた。
トランプ大統領は、国家非常事態における「異常な」脅威に対処することを目的とした国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、関税を導入する広範な権限を持つと主張している。
トランプ氏は4月2日、貿易赤字は国家非常事態だとし、全ての輸入品に一律10%の関税を課すことを正当化。米国が抱える貿易赤字が大きい国、特に中国に対してはより高い税率を課した。
これらの国・地域別の関税のほとんどは1週間後に一時停止され、各国が通商協議を行っている。
アメリカの貿易赤字の解消の鍵は関税にあらず「農村」にあり
RENEW RURAL AMERICA

アメリカが貿易赤字を縮小したいなら、1つの答えは農村部の製造業で革新を進めること(写真はユタ州での大豆の収穫) AP/AFLO
注)このユタ州の農業は、私の友人のマイケル・ジョーダンに探してもらい、アメリカNBAの仲間で実家が農家の人間に私が「無農薬大豆の製造」をお願いした農家たちなので、安全な食品を「アメリカのVIPたち」は食べているので健康なのです。
<相手国に高率の関税を課す前に、米国内の農村部への投資を増やせば、輸出実績を大きく高められるかもしれない>
ドナルド・トランプ米大統領は以前から、貿易赤字にはうるさかった。
この4月には貿易赤字は非常事態を迎えていると宣言し、貿易相手国に「相互関税」を課すと発表。その一部は一時停止中だが、貿易赤字に対するトランプの執着は続いている。
「貿易赤字」を減らす方法は基本的には2つ。
輸入を減らすか、輸出を増やすかだ。トランプは前者に重点を置いてきたが、より効果的なのは後者──特に、アメリカの農村部に眠る未開拓の輸出機会に目を向けることかもしれない。
農村部と都市部の違いについては長年にわたって研究が行われており、都市部のほうが技術的に進んでいて成長が速く、経済的にも活発であることが分かっている。
だが地域間の違いが輸出実績にどう影響するかは、あまり注目されてこなかった。
この点に関する新たな研究が始まりつつある。経済学者は最近、都市部の企業の輸出量が農村部より大幅に多いことを発見した。この差は国の貿易にとって重要な意味を持つ。
研究者らは米国勢調査局の年次企業調査や2017〜20年の貿易統計のデータを基に、都市部と農村部の輸出格差を測定。さらにこの格差の潜在的な要因を「説明可能」と「説明不可能」の2つに分類して、検証を行った。
前者は、経済学で「賦存条件」と呼ばれる要因(例えばデジタルインフラ、再生可能エネルギーへのアクセス、あるいはハイテク分野での雇用機会)の差によるものだ。これらは客観的な観察が可能であることから、「説明可能」な要因とされる。
後者は「構造的優位性」と呼ばれるもの。輸出実績にとって重要な地域特性のことだが、観察ができないため「説明不可能」な要因とされる。
地域ベースの政策が効果的
研究では、都市部と農村部の輸出格差の大部分は「説明可能な要因」の差にあることが分かった。農村部の企業でも都市部の企業と同様の保有資源が与えられれば、この輸出格差を埋めることが可能かもしれない。
驚きだったのは、説明不可能な要因が意外に少なかったこと。
つまり農村部の企業は、その地域特性から予想されるものより大きな成果を上げていたのだ。
これは、まだ農村部では輸出の潜在的可能性が大きいことを意味している。
輸出に関して都市部のほうが有利な背景には、いくつかの要因がある。
都市部には高学歴の科学技術系の労働者が集まっている。企業は規模が大きく、より高度な技術を持っており、ブロードバンドへのアクセスが優れているためにクラウドの利用頻度も高い。
独自の国際的なネットワークを活用していそうな外国出身の経営者も多い。
しかし、これらの格差の多くは政策による解決が可能かもしれない。
例えばクラウド技術の導入はブロードバンドへのアクセスに左右されるため、デジタルインフラへの投資が地方の輸出促進につながると考えられる。
さらに、とりわけ金属製造業のような分野では、農村部の製造業者の労働者1人が生み出す輸出額が都市部と同等か、それ以上であることが分かっている。
農村部の製造業を促進することが、輸出格差の縮小に向けた1つの方法になる。
こうした研究は、政策決定に重要な影響を及ぼすだろう。
第1にこれは、貿易赤字の根本原因を他の国々に求める考え方からの転換を促す。
そして第2に、個人に直接の支援を提供する「人ベース」の政策ではなく、特定の地域を対象とした「地域ベース」の政策の正当性を支持している。
地域ベースの政策の代表例が、ジョー・バイデン前米大統領のものだ。
バイデン政権下ではインフレ抑制法、CHIPSおよび科学法とインフラ投資雇用法という主に3つの法律に基づいて農村部に多額の連邦資金が投入され、そのうち約43%(4400億ドル)が特定の地域を対象にした投資、あるいは農村部特有の課題を解決するための投資だった。
これを受けて研究者や政策立案者は、農村部の輸出実績の低さがブロードバンドへのアクセスなど説明可能な要因にあるのか、それとももっと対処が難しい本質的に不利な条件にあるのかを考えている。
これらの研究は、都市部と農村部の輸出格差の多くが農村部特有の不利な条件ではなく、生産資源の不平等な分配に起因するという有力な証拠を示すものだ。
適切な投資が行われれば、アメリカの農村部は今までよりずっと大きな役割を果たせるかもしれない。一連の研究結果は、連邦政府が農村部振興を継続的に支援することの重要性も示している。
アメリカが貿易赤字を縮小したいなら、その1つの答えは農村部の製造業でさらに革新を進めることかもしれない。
トランプ政権の「ドル高牽制」を受けてじわじわ進む円高 日本株への影響が「内需=株高」「外需=株安」とは一概に言い切れない理由
このところドル円相場は円高基調となっている。ドル安になると、米国にとって「都合のよい」というが、どういうことか。また、円高ドル安の日本株への影響は。個人投資家・投資系YouTuberの森口亮さんによる、シリーズ「まるわかり市況分析」。森口さんが解説する。 投資系YouTuberの森口亮さん
カナダで開催中のG7会議に出席している加藤勝信・財務相とアメリカのスコット・ベッセント財務長官の個別会談や通商交渉が、為替市場にも少なからず影響を及ぼしています。
5月21日の会談では、両氏が「為替相場は市場で決まるべきであり、現時点の為替相場はファンダメンタルズを反映しているという『共通の信念』を改めて確認した」と報じられています。
5月24日の、3回目となる日米関税協議の交渉では「為替」が直接の議題にはなりませんでしたが、実際には円安の流れに変化が出始め、ドル円は142円台前半までじわじわと円高方向に振れています。
今回は、「なぜ直接“円安牽制”をせずとも流れが変わっているのか?」「円安是正がアメリカにとってどんなメリットをもたらすのか?」「日本株にはどのような影響があるのか?」、この3点をわかりやすく整理してみます。
間接的に“円安を牽制する”形に
トランプ政権は、表向きは「通商政策」に集中しています。日本や中国、EUに対する関税の引き上げをちらつかせ、貿易不均衡の是正を狙っています。
5月24日の3回目の日米関税交渉において、「為替」という言葉は一切出ていません。ただし、円安が長引くと、日本の輸出企業が価格競争力を持ちすぎるため、米国の貿易赤字が拡大しやすくなります。
米国にとってそれは不都合な事態。だからこそ、「関税交渉の強化」「日本の政策対応への遠回しな圧力」といった形で、間接的に“円安をけん制する環境”を整えようとしているようにも見えるのです。
なぜ米国は「円安是正」を望んでいるのか?
まず、円安が米国に不利な理由は、米国製造業の競争力が落ちるからです。
日本や中国の企業が円安・人民元安で価格を下げてくれば、海外市場で米国企業は太刀打ちしづらくなります。
トランプ大統領は、再就任から半年を迎えた今も、「米国第一」を前面に押し出し、製造業や労働者層へのアピールを強化しています。
関税強化やドル高牽制といったスタンスは、再選直後から一貫して政権の柱となっており、円安是正の流れは、そうした背景とも無関係ではありません。
つまり、トランプ政権にとって表向き為替には触れずとも、実際には円安是正の環境が整う方が都合がいいのです。
日本株への影響、「内需か外需」だけでは語れない
では、この「静かな円高傾向」が日本株にどう響いているか。円高になると、最も打撃を受けやすいのは海外売上高比率の高い企業群です。
自動車、電子部品、精密機器、工作機械などは、売上の多くがドル建てで、円に換算した際の収益が目減りします。
たとえばトヨタやキーエンス、ファナックといった企業は、売上の6~8割が海外です。円高が進むと、この“円換算ベースの業績”が下方修正されやすく、株価の下落要因になります。
一方で、内需株や生活インフラ系(通信・小売・不動産)などは、円高の影響を受けにくく、むしろエネルギー・輸入コストの低下で利益が改善する可能性もあります。
ただし、内需関連株=すべて安心かというと、実はそうでもありません。
たとえば、インバウンド需要が追い風になっている小売・外食・ホテル業などは、円高によって訪日外国人の減少や旅行コスト上昇が引き起こされる可能性があり、想像以上に影響を受けるセクターです。
逆に、原材料や燃料を海外から輸入している業種(電力・鉄鋼・食品など)では、円高は仕入れコストの低下につながり、利益改善に寄与することがあります。
さらに、海外展開している企業でも「現地生産・現地販売」のモデルをとっている企業(ユニクロや資生堂など)は、為替の影響をある程度吸収できる体質になっています。
このように、「円高=輸出に悪い」「内需=安全」といった単純な構図では読み解けないのが、今の日本株市場の特徴です。
投資家が意識すべき“為替の空気感”
為替レートは株価同様に「未来を先取り」して「期待」で動きます。たとえ為替が直接、議題に上がらなくても、関税・通商・格付けといった別のテーマの中で、為替の流れが変わることはよくあります。
今は、米国にとって「円安では困る」タイミングに入っています。それが、政策という形ではなく、“市場の流れ”としてじわじわと出始めています。
株式の投資家としても、為替レートそのものだけでなく、その裏にある「米国の都合」を見極めておくことで、次の株式市場の方向性を読みやすくなるはずです。