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アメリカ資産「トリプル安」…20年国債入札低調で「財政悪化懸念」浮き彫りに

NEWSWEEK 2025年5月22日(木)10時31分

米財務省が5月21日に実施した「160億ドルの20年国債入札」は低調な結果となり、国債利回り上昇(価格下落)や株安、ドル売りという米国資産の「トリプル安」をもたらした。2018年2月撮影のイメージ写真(2025年 ロイター/Dado Ruvic/Illustration)

与党共和党が成立を目指している包括的な歳出歳入法案により、米国財政が一段と悪化するとの懸念が投資家の間に広がっているためだ。

 

16日にはムーディーズが米国のソブリン格付けを引き下げ、これで米国を最上位格付けとする主要格付け会社はなくなった。

「20年国債入札」は、最高落札利回りが5.047%と、前回から約1ベーシスポイント(bp)上昇。

各国政府や資産運用会社、保険会社を含む間接入札者の落札比率は69%と平均より高く、外国人投資家の需要の底堅さは示されたが、全体の応札倍率は過去平均の2.46倍をやや下回り、2月以来の低水準にとどまった。

これを受け、米株式主要3指数は4月21日以降で最大の下げを記録し、米国債の指標となる10年国債利回りは一時4.607%と、2月13日以来の高さに跳ね上がった。

20年国債利回り自体も5.127%と2023年11月以降で最も高くなった。

 

ミシュラー・ファイナンシャル・グループのマネジングディレクター、トム・ディガロマ氏は「昔から引き継がれてきた財政赤字問題が解消されそうになく、過剰な債務が存在する。

市場は今、米政府と対決しながら、わが国がこの赤字を縮小できるかどうかを見極めようとしている」と指摘した。

 

ジェフリーズのチーフ米国エコノミスト、トーマス・シモンズ氏は、今回の20年国債入札は「壊滅的というには程遠い」ものの、長期ゾーンが売られる流れがすぐに反転しそうにないことを示したと説明する。

ペン・ミューチュアル・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジョージ・チポロッニ氏は「(長期債)利回りが5%でまた低調な入札に終わったことは、市場参加者が米経済(の実力)について好感触を持っている兆しとは言い難い」と述べ、財政赤字に関する不安が漂っているとの見方を示した。

 

赤字拡大加速の不安

投資家の不安は、大型減税を含む歳出歳入法案が財政赤字の拡大ペースを以前の想定よりも加速させるのではないかという点にある。

ドイツ銀行のFXアナリスト、ジョージ・サラベロス氏は20年国債入札後に公表したリポートで「現在の予算決議を信頼可能な引き締め的政策をもたらすように急激な修正をするか、外国人投資家が十分割安とみなす水準まで米国債の非ドル建て価格が大きく下がるか、どちらかにならざるを得ない」と分析した。

ジャニー・モンゴメリー・スコットのチーフ債券ストラテジスト、ギー・ルバ氏は「最終的に米国の金利市場は供給よりも経済環境に支配されると信じているので、利回りは今年経済状況が悪化するとともに低下しそうだ」とみているが、当面は米国債を買い向かうタイミングではないと付け加えた。

米財務省は4月、国債入札規模を少なくとも数四半期は維持する見込みだと表明した。

ただ複数のアナリストは、拡大を続ける財政赤字穴埋めのため、長期国債の入札規模はある時点で引き上げる必要が出てくるはずで、来年初めがその時期となる公算が最も大きいと想定している。

20年国債の発行は1986年以降停止していた後、2020年に再開された。生命保険会社や年金基金などには期間10年や30年の国債の方が人気で、「20年国債」は相対的に需要が少ない傾向がある。

 

 

米国のトリプル安で日本にチャンスも

政策調査部 主任研究員 山崎 政昌

トランプ米大統領が2025年4月2日、市場で予想されている関税率を大きく上回る相互関税を発表した。

これを受けて、米国の株式、国債、通貨ドルはトリプル安に見舞われた。

代表的な株価指数である「S&P500」は終値ベースで4月8日までの4営業日で12%急落した。

 

2月19日につけた過去最高値からは19%下落し、弱気相場入り(高値から20%下落)の寸前にまで落ち込んだ。

トランプ大統領が、4月9日に相互関税の上乗せ分を90日間停止すると発表して、株式市場は反発に転じた。

「米10年国債」は、相互関税が発表された4月2日から4日までは投資家のリスク回避姿勢の強まりを受けて利回りが低下(債券価格は上昇)した。

しかし、4月7日から始まる週には市場の混乱が深まるなかで、通常は資金の逃避先、つまり「セーフヘイブン」として買われるはずの米10年国債の利回りが上昇(債券価格は下落)した。

終値ベース利回りは0.5パーセント・ポイント程度上昇し、週間ベースで1980年代以来の大幅な上昇となった。

米ドルの他通貨に対する総合的な動きを示す実効為替レートで、米国市場関係者が重視するドル指数(DXY)(※1)は、相互関税発表前日の4月1日から4月21日にかけて6%下落した。

下落幅が大きかったのは相互関税の90日間の停止を発表した翌日の4月10日とその翌日の4月11日でそれぞれ2%、1%下落している。

過度の懸念が後退して、「ドル売り」の流れが一旦止まっても不思議ではないタイミングで、「米ドル売り」が強まったわけである。

これら一連の動きは、ドルあるいはドル資産に対する市場の信認に傷が入ったと思えるものであった。

とはいえ、「ドルが世界の基軸通貨の地位」から陥落することは、流動性のある米国金融市場の存在などから当面は考えられない。

しかし、グローバル投資家が米ドル以外の資産への分散を考えても不思議はない状況が生まれたとも言える。

 

日本は投資先としてグローバルな資金を取り込むチャンスを迎えていると言えるのではないだろうか。

(※1)ドル指数(DXY)は、ユーロ57.6%、日本円13.6%、英ポンド11.9%、カナダドル9.1%、スウェーデンクローナ4.2%、スイスフラン3.6%で構成されている。

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一時1ドル=140円割れ ドル資産「トリプル安」の背景と今後の見通し 

2025.04.22 野村證券のマーケット解説 野村證券・池田雄之輔

一時1ドル=140円割れ ドル資産「トリプル安」の背景と今後の見通し 野村證券・池田雄之輔のイメージ

4月21日の米国株式市場では、NYダウが4営業日連続で下落し、前週末比971.82ドル安の38,170.41ドルで取引を終えました。一時的に下げ幅が1,300ドルを超える場面も見られました。22日の外国為替市場では、米ドルが主要通貨に対して下落し、対円では一時1ドル=140円を割り込み2024年9月以来の円高・ドル安水準となっています。

さらに、米長期債利回りも上昇(債券価格は下落)しており、株式、通貨、債券がそろって値を下げる「トリプル安」の状況が鮮明になりました。この背景や今後の展望について、野村證券市場戦略リサーチ部長の池田雄之輔が解説します。

 

4月に入って「ドル資産のトリプル安」が目立っている

為替市場ではドル安が目立っています。ほとんどの他通貨に対して減価する「ドル独歩安」となっており、主要通貨に対するドルの総合的な強さを示すドル指数(DXY)は年初から約10%下落しています。

とくに最近の特徴となっているのが、株式、債券と通貨ドルが同時に売られる「ドル資産のトリプル安」の傾向です。

トリプル安ではない弱気相場のパターンとしては、「米株安、ドル安、債券高(金利低下)」の組み合わせがよくあります。

 

これは、景気悪化が懸念される際の正常な相場反応であり、とくに問題にはなりません。2025年1-3月はおおむねこのパターンでした。

しかし、4月以降に目立っているのは債券安(金利上昇)も巻き込むトリプル安です。トリプル安になるマクロシナリオとしては、スタグフレーションへの警戒と、通貨への信認の毀損、の2つに大別できます。

 

スタグフレーションの局面では、景気悪化による株安圧力とインフレ加速による債券安圧力が同時発生します。

このとき、海外投資家がその国の株売り、債券売りに動く際に、通貨売りをともなう形になります。株式・債券→通貨という波及経路です。

このパターンが明確になったのが、4月2日の「関税ショック」からまもなくの4月7日から9日にかけての局面です。

 

トランプ政権が打ち出したショッキングな相互関税は、市場で「米国の自傷行為」とみなされ、関税によるスタグフレーション突入への警戒が高まりました。これが、株売り、債券売り、ドル売りのトリプル安を招きました。

 

米国債売りに危機感を持ったのはベッセント財務長官か

米国債まで売られ始めたことに対し、トランプ政権の中でもとくに危機感を高めたのはベッセント財務長官だったとみられます。

同長官は長くマクロヘッジファンドを運営してきた経験から、グローバル投資家が「ドル資産全部売り」に転じることの危険を察知したのだと思います。

4月9日にトランプ大統領は、その日に発効したばかりの相互関税を、いきなり「90日間停止」にすると発表しました。この舞台裏については、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が4月20日(日本版)の記事で、興味深いことを書いています。

それによると、9日の朝、相互関税を主導したナバロ補佐官の不在の隙をついて、ベッセント財務長官とラトニック商務長官がアポなしで大統領執務室を訪れたそうです。

そこでトランプ大統領を説得し、すぐに「90日間停止」をSNSで発信するよう求め、その通りになるまで執務室を出なかったということです。他から邪魔が入らないようにする必要があったのだと思います。

 

関税ショックに続いた「パウエル解任シナリオ」

ドル資産のトリプル安相場はいったん、終息したかに見えました。しかし、今度は第2のマクロシナリオが動き始めてしまいました。

トランプ大統領が17日、ECB(欧州中央銀行)が利下げしたことに触発され、利下げに動かないパウエル議長を「遅すぎる!」とSNSで批判しました。

さらにトランプ大統領はパウエル議長について「解任しようと思えばすぐにできる」と豪語しました。この時点では市場はさほど大きくは反応していなかったように思います。

注)ジェローム・ハイデン・”ジェイ”・パウエル(英: Jerome Hayden “Jay” Powell、1953年2月4日 -)は、アメリカ合衆国の銀行家・弁護士。 連邦準備制度理事会(FRB)理事を経て、2018年2月、第16代議長に就任。 アメリカ合衆国、ワシントンD.C.

しかし、ハセット国家経済会議(NEC)委員長が18日、パウエル議長を「解任できるかどうか、トランプ大統領とそのチームが検討し続けている」と述べ、それが週明け21日の金融市場で材料視されました。

「大統領は本気なのではないか」と市場の不安心理を高めたのです。「大統領が利下げを要求し、中銀総裁を解任」というパターンは、まるで専制国家の新興国を彷彿させます。

米ドルは基軸通貨なのでそうはならないはずなのですが、新興国であれば通貨への信認を失墜させ、通貨安とインフレ高騰のスパイラルに見舞われかねない危険な発言です。

 

 

トランプ大統領の介入でFRBはむしろ利下げ困難になる?

当面、「トランプvsパウエル」を巡って、ドル安に警戒が必要です。

第一に、市場はパウエル議長が辞任するテールリスクを意識せざるを得ません。

「FRBの独立性」の危機です。

注)「FRBの独立性」とは、FRBが政治的圧力を受けることなく、金融政策を決定できる状態を指します。

これは、金融政策の安定と経済の安定に不可欠であり、通貨価値の安定にも寄与します。

「FRBの独立性」は、1970年代にニクソン大統領がバーンズ議長に低金利を維持するよう圧力をかけたことで、その必要性が認識され、強化されました。

 

第二に、パウエル議長がかえって機動的に緩和方向に転換できなくなるという側面です。この二点目については、7年前に似たことが起きています。

2018年の米中貿易戦争のさなかにも、自身の関税政策で株安が加速した際、トランプ大統領はFRB(米連邦準備理事会)のパウエル議長をスケープゴートにしました。

注)「スケープゴート」とは、ある集団の不満や怒りを、特定の個人やグループに押し付けて、その責任を負わせる現象を指します。

その年の4回目の利上げとなる12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)をめぐっては、トランプ大統領が激しく抵抗し、かえってパウエル議長が利上げを続けざるを得なくなりました。

今回も、政治介入が、FRBの機動性を奪いかねない点に注意が必要です。

必要な場合にFRBが利下げできないとなると、株安、債券安を招き、金利差では説明できないドル安圧力につながります。

 

日米財相会談で「ドル安志向」が封印されるかは重要

トランプ政権はドルの信認を取り戻せるのか。焦点となるのは、(1)トランプ大統領がパウエル議長への批判を止めるかどうか、(2)ベッセント財務長官が「強いドルは国益」というメッセージを発信できるか、(3)トランプ政権内でベッセント氏が影響力を保てるか、といったところになります。

(2)については、少なくとも最近のドル安を、歓迎する姿勢を見せないことが重要です。

この点は、24日の日米財相会談(日本側は加藤勝信財務大臣)の注目点にもなります。ヘッジファンド出身のベッセント氏は、現局面ではドル安志向を封印すると期待したいところです。

(3)については、裏を返せば、ナバロ補佐官とハセット委員長という、いわば「反ベッセント陣営」の影響力がどうなるかということでもあります。

ちなみに、先ほど触れた4月9日の朝のエピソードですが、WSJによればナバロ氏が留守だった理由はハセット委員長を訪れていたから、だそうです。

さらに、ハセット氏はパウエル議長の後任を狙っているといわれています。ナバロ氏、ハセット氏が台頭する場合、市場はドル安を警戒せざるを得ないということになりそうです。逆に、ベッセント財務長官はドル信認の「最後の砦」とみなされていると思います。

 

ドル円の2025年12月末予想は137.5円

ドル円は140円が大きな節目となっており、明確に下抜けした場合は勢いがつくリスクがあります。

一方、日米財相会談が無難な結果に終わり、ドル円は少なくとも一時的に持ち直すというのがメインシナリオです。

野村證券はドル円の先行きについては、2025年12月末:137.5円と緩やかなドル安・円高を予想しています。FRBは12月から利下げ開始、日銀は2026年1月に利上げという金融政策の方向感に沿った見通しです。

 

トランプ大統領の動きを予想することは至難の業ですが、2026年秋の中間選挙が近づくにつれ、景気テコ入れ、株価重視、支持率重視の姿勢が強まっていくというのが基本的な見方です。

政策の重心は、関税から徐々に減税、規制緩和に移っていくとみています。また、パウエル議長の後任選びはこの秋にもスタートするとみられますが、本命視されているウォーシュ元理事が選ばれそうということになれば市場に安心感が出てくると思います。

 

 

2025年6月の注目イベント 日米の金融政策に注目

三井住友DSアセットメントマネジメント 2025年5月28日

■16、17日には、日銀による金融政策決定会合が開催されます。日銀は、5月半ばに公表された前回会合の主な意見で、「米国の関税政策の展開がある程度落ち着くまでは様子見モードを続けざるを得ない」と利上げに慎重な姿勢を示す一方、政策経路は「今後いつでも変わりうる」としています。今会合も政策金利が据え置かれることが予想されますが、今後の展開を見通す上で、声明文や記者会見の内容が注目されます。

■17、18日には米連邦準備制度理事会(FRB)が公開市場委員会(FOMC)を開催します。

市場では、相互関税の一部実施延期や、5月12日に米国と中国が互いに課している追加関税を大幅に引き下げると発表したことなどを受け、トランプ政権の通商政策に対する不透明感は一時的に後退していると見られる一方、税制改革法案により財政が悪化する可能性を懸念する向きもあります。

関税率が低水準であれば年後半に利下げを検討する旨のFRB高官による発言も見られる中、今回の会合で公表される声明文や経済見通しが注目されます。

■15日から17日まで、主要七カ国首脳会議(G7サミット)がカナダで開催されます。

今回は、日本やドイツ、カナダなど多数の参加国首脳が初参加となることに加え、トランプ大統領が4年ぶりに参加します。通商関係に関わる議論などが焦点となると見られ、共同宣言の内容や採択の有無にも注目が集まります。

 

 

日銀 前回会合の主な意見 “トランプ関税次第で見通し変わる” 2025年5月13日 11時56分

 
日銀は13日、前回の金融政策決定会合で出た主な意見を公表しました。
会合では今年度以降の経済成長率と物価上昇率の見通しを引き下げましたが、委員からはトランプ政権の関税措置の動向次第で見通しは大きく変わるといった意見が相次ぎ、慎重に影響を見極めようという姿勢を強めていることがうかがえます。
 
日銀は今月1日まで開いた会合で、アメリカのトランプ政権の関税措置で不確実性が高まっているとして金融政策を維持するとともに、今年度以降の経済成長率と物価上昇率の見通しを引き下げました。
 
日銀は13日公表したこの会合での主な意見では、委員から関税措置の影響に対する懸念が示される一方「現時点での見通しは仮置きにとどまる」とか「不確実性が極めて高い中で見通し自体が上下に変化しうる」など、今後の関税措置の動向次第で見通しは大きく変わるといった意見が相次いでいました。
 
また、金融政策についても追加利上げの姿勢を維持すべきとの意見がある一方で「様子見モードを続けざるをえない」といった意見も出ていて、慎重に影響を見極めようという姿勢を強めていることがうかがえます。
 
アメリカと中国が互いに課している追加関税を大幅に引き下げることで合意するなど、関税措置をめぐる状況が変化する中、今後日銀がどう政策を判断していくかが焦点となります。
 
 

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