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母が私に隠していたこと

中学生の頃、同級生と一緒に見学旅行でお風呂に入ると、こう言われました。

「お前、どうしたの?

背中に刀で切られたような傷が肩口からあるけど、何かやったのか?」

自分の背中は自分では見えないし、全く気づかなかったので初めて知った傷の話は、不思議でたまりませんでした。

毎日、夢の中で過去世の自分を見ていたので、武士の時代に人を切ったり切られた経験があることはわかっていますが、「過去世の夢を見ると現実になるのか?」と恐ろしくなりました。

そう思っていると、頭の中に声が聞こえてきました。

 

「それは違う。過去は過去。

お前の過去世の経験が、今の体に出る場合は、違う形で出るものだ。

例えば、アザやシミがそうだ。

それは、過去の思いを消さないように細胞に記憶されたものが、必要な時期に出てきて学びを与えてくれるものなのだ。

だから、お前の背中の傷は違うので、母親に聞いてみなさい。」

 

やたらハッキリ聞こえたので、確認になりましたが、まあ、幼稚園時代からずっと、大事なことは頭の中で教えてくれる存在がいることは知っていました。

一番印象に残っている体験は、小学一年生になった時の「知能テスト」で優秀な成績が出たようで、先生も親も驚いていました。

「左の図形と同じ図形は、どれでしょう?」という質問の右ページに、いろいろ回転させた図形があって、番号で選ぶだけのものですので、誰でもわかると思います。

こういう「空間認識テスト」から始まり、少しづつ高度になっていくのが「知能テスト」ですが、多分、全て満点だっだと思います。

その理由は、最初のページをめくると、頭の中で答えが聞こえたからです。

 

自分の左脳で考えようとしているのに、勝手に、右脳に答えが聞こえるので、仕方なく隅に答えを書いておいてから、自分の思考で答えを考えてみると、全く同じだったのです。

もう一度、答え合わせをしましたが同じなので、事業が始まって20分くらいで席を立ち、「全部終わったので、教室を出ていいですか?」と先生に聞きました。

先生は「答案を持ってきなさい」と言って回答と比べると、100点満点だったようで、「静かに遊んでいなさい」と言われました。

 

「偶然はある」と思っている先生は、翌週、もっと、難しい「知能テスト」を私だけにやりました。

結果は、前回と同じ全て100点満点。

何度やっても、答えが聞こえるので、私は自分の思考と聞こえる声との戦いの時間でした。

そのあと、先生が母親に電話したようで、急にニコニコしながら、「お前は、やればできる人だから頑張りなさい!」と母が言いますが、何のことか全くわかりません。

まあ、母親が笑顔なことは家の中が平和なので良いことですが・・・。

 

目には見えない存在の声はいつも正解だとわかっていますが、母親にも言ったことはありません。

だって、幼稚園の時に家の中で霊を見て教えると、思いっきり否定されたうえに、二度と言うんじゃないよ!」と怒られたからです。

でも、私の体の傷なので、確信を持って、母に問い詰めました。

 

「ねえ母、僕の体のことで何かお詫びすることない?」

「そんなことあるわけないでしょ。私が産んだんだよ!」

「それはありがたいと思っていますが、何か隠し事があるでしょ。

この前の見学旅行でみんなとお風呂に入った時に、同級生に背中に傷があるぞと言われたんだけど、理由を知らない???」

「あっちゃあー、見つかったのかい・・・。」

気まずそうな顔をした母は、ずるい顔になりました。

 

「いやねえ、傷つける気はなかったんだよ。

あんたが、まだ赤ん坊の時に、背中に背負って玄関を出ようとしたら、何かが引っかかったので、思いっきり強く前に踏ん張ったのさ。

そしたら、あんたが大声で泣くもんだから、服を脱がすと背中から血が出ていたんだ。

どうやら、あの太い針金に引っかかったみたいで、私がそれに気づかず、前に歩いたことが原因みたいなのさ。

だからね、私は悪くないのさ。

悪いのは、あのハリガネさ!」

 

「母さあ、いつも俺には責任逃れはするな!男らしくない!と怒るくせに、今、母は、責任逃れしたよね?

どう、それで言い訳??

母親としての教育方針は??」

さすがに母もこりゃあいかんと思ったようで、初めてちゃんと謝ってくれましたが・・・。

 

「いやあ、ごめんなさいね。

でも、男の子でよかったでしょ。

もし、あんたが女の子なら私も落ち込むけど、男はいいの、傷の一つや、二つあってもいいの!」

結果的に、母は自分が言ったことは曲げない人だとわかっているので、受け入れました。

 

そういえばさ、幼稚園の時に、母の自転車の後ろに乗っていると、自転車の後ろの車輪に足が引っかかって、骨が折れたよね?覚えてる?

 

「あんたそんな古いことをよく覚えているね。

もう、仕方ないから白状するけど、あの時も忙しかったので、あんたを自転車の後ろに座らせて必死に思い自転車を漕いでいたら、急にあんたが泣き出したのさ。

でも、その場所がちょうど診療所の前だったから、すぐに先生に手当てしてもらって、ギプスをはめてもらったの。」

 

「でもあの時も母は、ちょっと傷をしただけだけど、傷が大きくならないように先生がガッチリ止めてくれたからねと、嘘をついたでしょ。僕は覚えているんだよ!」

 

「まあ、確かにあの時は、嘘をついたね。ごめんなさい。」

ちょうどいい機会だから、あと、僕にお詫びした方がいいことがあったら教えておいて!あとで言われるほど、嫌なことはないからね。」

珍しく母が頭を下げたので、そう言いました。すると・・・。

 

「これは絶対に覚えていないと思うけど、一応、言っておくわ。

あのね、あんたが生まれた赤ちゃんの時に、私は兄貴とあんたの二人を連れてお風呂に入ったのさ。

そして、赤ちゃんだったあんたの体を先に洗って湯船に入れてから、にいちゃんの体を洗ったのさ。

あんたには、「ちゃんと、この湯船の端に捕まっていなさいね!と言ったんだよ!

お兄ちゃんの頭を洗っている時に、湯船のあんたを見ようと振り返ると、あんたがいないのさ。

ブクブクって、あぶくを出しながら沈んでいたのさ。

慌てて抱き上げて、息をしていたから安心したけど、そんなことは覚えていないよね?」

 

「覚えています。

赤ちゃんだったけど、声も聞こえるし、言葉もわかるし、大人が何を考えているのかも、僕はわかっていました。

今、断片的に思い出したけど、母さん、その時、鼻歌を歌っていたでしょ!

僕はなんだかわからないけど、息ができないので、このまま死ぬのかと思ったんだよ!」

 

「ごめんね、覚えていたの?

あの時ね、秋祭りの前で歌に合わせて踊る練習をしていたので、つい、お風呂の中で気持ちよかったので、歌を歌ってあんたのことを忘れていたのさ。」

 

「ちょっと待ってよ、歌は普通は1曲3分以上けるけど、まさか、3分、お湯の中にいたわけじゃないよね?」

「そんなにいなかったと思うよ、覚えていないけど・・・。

まあ、生きていたんだから、いいじゃない。

お風呂の話もしたので、これで水に流してね!」

と母は最後は冗談で終わりました。

 

まあ、強気で一生懸命で、失敗も多い母ですが、私はそういう母に育てられたことを心から感謝しています。

親は子を見て、自分に気づき、子は親を見て、自分の生き方に気づくものなのです。

ありがとうございます、お母さん。

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