母が怒ったPTA会議
小学6年生の時、母が珍しく「P TA会議」にいってくるねと、笑顔で言いました。
「PTA会議」なんて、ヒマ人が集まって井戸端会議をしているだけさと言っていた母なのに、なぜか、今日は楽しそうです。
だってね、この前、引っ越してきたお母さんと私は気があってね、そのお母さんが私は皆さんをよく知らないので一緒にいってくれますか?と言われたのさ。
人に頼まれたらイヤとは、言えないでしょ。
父さんにそのことを話すと、「じゃあ、行け!」と許してくれたのさ。
久しぶりに農家の重労働から開放されるので、嬉しいのは当然さ!
と、母は綺麗な着物に身を包んで笑顔で出て行きました。
母のタンスの着物は全ておじいちゃんが買ってくれて、着物の下にお金を隠してタンスごと嫁に来たことは聞いていましたが、お茶も、お花も、花嫁修行を全部してきた母だし、裁縫の仕事ができるほど腕が良いので、冬は、いつも和服の内職の仕事をしている母でした。
でも他人の綺麗な着物はいくらでも作るけど、タンスにある綺麗な着物を着る機会がないことをぼやいていたので、僕も嬉しく思いました。
しばらくすると、あの喜んでいた母が、怒った顔をして家に戻って来ました。
どうしたの?何か、問題でも起きたの?
問題ってもんじゃないよ!あのバカ女たち!!!
私が引っ越してきたお母さんのために初めてPTA会議にいったことは説明したでしょ。
だから、私も最初は静かに会議の話を聞いていたのさ。
そしたらね、勝手に、あんたたちの卒業式の謝恩会で先生たちにお祝い金を出す話になっていて、あなたの家はいくら、あなたの家はいくらと決めている女がいたのさ。
だから私も他の家も貧乏なのに、なんでそんなお金を出す必要があるのか質問したのさ。
そしたらね、あなたはこのPTA会議に一度も来てないので、私たちがどれだけ苦労しているのか、わからないで発言しないで下さいというのさ。
もう、頭にきたよ!
わからないから聞いているのに・・・。
母は、冷静になるのに、しばらく沈黙の時間が必要でした。
私もね、それはすいませんでした。
でも、わからないので聞いているので、お金を出す理由と、それぞれの家が出すお金の金額が違う理由を教えて下さいとお願いしたのさ。
そしたら、そのバカ女が、こういうのさ。
私は皆さんの家の事情は、よく知っています。
普段、皆さんの子供達のことを気にかけて、いろんな子供と対話しています。
それに、先生のご苦労も聞いているし、そのお礼が謝恩会なので、皆さんの家の事情に合わせて金額を決めました。
皆さんも、それで納得してくれたんですよ。
本当に、皆さんはその金額で納得したのですか?
私は今、田んぼを広げるのにたくさん借金したので、家にお金はありません。
そんな事情も、知らないのに、何を理由に勝手に金額を決めるのですか?
それぞれの家には、それぞれの事情ってもんがあるでしょ。
◯◯さんの家は、お母さんが病気がちで仕事を休む時も多いと聞いていますし、◯◯さんの家はお父さんが仕事をクビになったことをまだ親にも子供にも言っていないと聞いています。
あなたはそういう事情を知ったうえで、金額を決めたのですか?!!!
皆さん、もし、納得いかないのでしたら、ここで本音を言い合いましょうよ。
お金が無いならないで、先生に言えば、いいだけでしょ。
なんで、先生に見栄をはってお金を渡すんですか?!!!!
お金の代わりに農家の食べ物を渡したほうが、絶対に先生の奥さんも喜ぶはずですよ!
先生を支えているのは、奥さんでしょ!
私たち妻は、夫を陰で支えているのは同じだからこそ、お金じゃなくてもいいと思うのですが、皆さん、いかがですか?
そういうと、誰も言葉を話せないみたいなので、隣の奥さんに聞くと、あのバカ女に反対意見を言った人は、あとから陰でいじめられるよと教えてくれたのさ。
もう、ほんとに頭に来たので、こんなバカな会議の内容が正しいのか、間違っているのか、先生様に聞いて来ますと言うと、もうPTA会議がぐちゃぐちゃになったのさ。
だから、ご面倒をおかけしました。あとは、皆さんで好きに決めて下さいとだけ言って、私は帰ってきたのさ。
あのバカ女は、本当に子供達のことを考えて行動しているのかい?
いや、ただ自分が気に入った人だけ話しているのを見たよ!
そうかい、やっぱりね。
まあ、女の世界も戦いだってことを覚えておきなさいね。
小学6年生の時に、母が教えてくれたPTA会議の裏の事情でした。