【富士山神事】第六回 頂上祈り・富士山本宮浅間大社奥宮
あきらめて4時起床に変更して床に就くと、寝たり起きたりの熟睡できないまま、突然、3:30に部屋の電気が付きました。ありがたいことです、山小屋の管理人さんの判断なのでしょう。全員一斉に、着替えとトイレなど出発の準備が始まりました。
午前4時過ぎ、32名全員の点呼を取って小屋の出口に並んでいると、山小屋の管理者が、この入口をいったん開けると、たくさんの人が入ってくるので二度と閉められなくなりますので、全員で一斉に出て下さいと言われます。
こんな暗いうちから、そんなに人がいるのかと思い外へ出てみると、山小屋の外には100名以上の方が雨に濡れながら夜明けを待っていました。ヘッドライトを付けて、風速40mの闇の中へ出て、剣が峰へ向かう道に一列に並び人数を数えていると、右へ左へ吹く突風にあおられて倒れそうな人が数名いました。
今のメンバーの体力は、寝不足と疲れと吐き気、それに加えてこの寒さと風では、お鉢巡りどころか、剣が峰までの道を進む事も危険だと判断したので、すぐに「剣が峰はあきらめます。富士山本宮浅間大社奥宮の境内で祈りを行います」と通達しました。
視界が数メートルしかない霧の中を歩く危険をおかしてまで、剣が峰頂上へ行く理由はありません。この風も天候も全てが神の計らいだと感じていたので、自分たちのできる範囲で神事を行う決断をしました。
うっすら空が明るくなってきましたが、太陽が出る気配は全くありません。境内に入り中心に三重の輪を作るように座りながら、32名が祈りを始めました。周りの人たちは何をしているのかと、写真を撮ったり、のぞきこんだりしています。
この頂上神事では、宇宙の大元と地球の核を繋ぎ、光の柱を祈りの力で立てて、北斗七星のエネルギーから新しい八番目のエネルギーを地球に繋ぐ祈りをしました。大きな光の玉が中心で回転しています。その玉をまた地球の核へ納めて、新しい命のエネルギーが生まれるようセットし直しました。
祈り仲間の谷さんは、明日からインドへ向かう事が決まっています。ここで立てた新しい光の柱のエネルギーを地球上の人間の魂の故郷であるインドへ繋ぎ、新しい命の再生が、ここ日本から始まる事を告げに行くのです。
谷さんは以前、3か月かけてインドの聖地を巡り、6本の光の柱を繋ぎ直す神事を一人で行った方です。地球を愛し、日本に生まれた本来の役目を果たせるように世界の祈り繋ぎをして下さるおかげで、私たち日本人は、その役目を果たせるのです。
祈りは、音も寒さも一切の感覚が消えた十数分間でしたが、無事、終えることができました。全員で手を繋いで、感動と感謝を共感しました。まだ霧や風は、一向に収まる気配がありません。
登山道はどんどん登ってくる方と、降りて行く方とが交差して込み合っていました。できれば早く下山したいと思いましたが、体力の無くなっている人が数名いて休みたいというので、一時、山小屋へ避難することにしました。
頂上の登山者の数は、どんどん増えていて現在、200名を超えていますので、山小屋へ入りたい方たちが入口に一斉に列をなしています。中に入れない人は強風にさらされながら体温がどんどん下がるのを我慢するしかない状況でした。この時の体感温度は、氷点下だと思います。
今回、神事参加者全員に完全な寒さ対策を指示していましたが、それでも強風の中に立っているだけで体温は下がります。1時間ほど外で待っていると、6時くらいに奥宮神社のドアが開き、外にいた数十名が中に入り、風をしのげたお礼に奥宮のお札を購入しました。神様、ありがとうございます。
午前7:00、山小屋の一斉清掃の為に全員、外で出るよう言われます。山小屋とお宮の中で風をしのぎ、着替えをしたり軽食を食べて風が止むのを待っていましたが、体力が落ちてきているので、下山を決めました。
女性が飛ばされないように間に男性が入り、身体を支えながら下山の道へ進むと、見える先まで続く人間の大渋滞でした。二、三歩進んでは、立ち止まる動作の繰り返し。前後左右に吹く風にあおられながら、転倒する人もたくさん出ていました。
富士宮口の登山道が、登る方と降りる方が交差するのはわかっていましたが、この渋滞はあまりにおかしいと思いましたが、原因がわかりません。強風に倒れそうな仲間の身体をつかみながら、一歩一歩山を降ります。
2時間ほど降りた場所にある大きな岩場が、渋滞の原因だとわかりました。一方通行しかできない道で、下りの人が登る人を優先しすぎていたようです。何事においても、全体の状況判断ができないとこういう結果になってしまいます。
下りの渋滞の列は、頂上から五合目までおよそ2000人を超える人数が立ち往生していたはずです。やっと山のパトロールの方が来て、交通整理を始めました。それでも渋滞は続いています。7合目を過ぎたあたりから風が少し収まり、温度も上がってきました。厚手の雨具を脱ぎ、体温の調整を始めます。
少し霧は薄れてきたとはいえ、立ち止まるとすぐに体温が下がる寒さの中、どんどん登る人たちが増えていました。きっと、下の天気がいいからなのでしょう。私は登ってくる人の服装や準備物を見て、危険と感じた人には、登山を諦めるよう声をかけました。
数名の方が、自分で判断して下山を決めてくれました。中には、半そでのTシャツにGパンで登ってくる方もいました。自然の恐ろしさをよく知っているラフティングの全日本監督の重ちゃんは、「世界の先進国で、これほど管理しない山も珍しい」と話してくれます。
大切な山の自然を守る意味でも、登山者の安全を考える面でも、登山者の有料化や予約登山制などの規制をすることが必要だと教えてくれました。
案の定、下山してからわかったことですが、同じ18日に頂上へ登った二人の登山者が、あの霧の中をお鉢めぐりして、吉田口へ降りる途中に遭難したニュースが流れていました。とても残念な事ですが、山や自然を甘く考えている人たちが引き起こす事故は、無くなることがありません。
下山してから頂上富士館の管理さんのブログを読むと、今年は噴火口に残雪が多く、お鉢巡りはまだできないと書かれていました。
今回の神事の初日の16日にも北海道のトムラウシ山で、10名の登山者の死亡が報道され、私たちは神の警告と感じて気を引き締めたものです。きちんと登山装備を揃えると、一人十万円以上かかるのが登山ですが、それは自分だけの為ではない事を知っているから重要なのです。
富士山登山は、一般の山をいくつ登っても体験できない辛さがあります。天候の変化、高山病、吐き気、めまい、気圧による体長不調・・・3776mの山は、やはり特別な領域ですので、自分の準備と状況に合わせた対応を心がけるようお願い致します。