長ラン・リーゼントの学級委員長 2 高校入学祝いはドス(小刀)

 
 高校入学の時の話です。

普通高校の合格発表の午後、本家の従兄弟の6歳上のお兄さんが、わざわざ、一人で家に来てくれました。

※本家も私の家も、貧乏な米農家です

従兄弟のお兄さんは、「僕と同じ高校に入ったので先輩として一対一で話をしたい」と私の母に伝えて、2階の僕の部屋に上がってきました。

子供の頃から仲が良かったの従兄弟ですが、開口一番、彼はこう言いました。

「学ちゃん、普通高校合格、おめでとう!

これは、俺からのプレゼントだから受け取ってくれ!」

と、黒いボロボロの革の学生カバンを手渡してくれました。

お互いに貧乏農家なので、男の子の洋服や必要なものは、全ての従兄弟のお古が「お下がり」として私に回って来ますので、新品を買ってもらえるのは長男だけなのです。

中学生以上になると、男の子は体の発達が早いので、良い物を買い与えてもすぐに着れなくなるため、パンツ、シャツ、セーター、ジャージ、運動靴など全てがボロボロでもまだ着れるでしょと、親戚中から送られてきます。

分家は本家よりも貧乏だから仕方がないのですが、「お下がりの学生鞄も三つ目ですので、この革カバンが登場する日も近いと思っていました。

すると、従兄弟のお兄さんが、「カバンの中身もあるから見てね!」と笑顔で言うので、ワクワクして開いてみると、鞄の底に1本の白い木の鞘(さや)に入った「ドス(小刀)」が入っていました。

 

勉強ができる普通高校なのに、なぜ、ドスが必要なのかを考えると、普通高校と工業高校のスポーツの試合が終わると、いつも、学校の裏で殴り合いの喧嘩になる話を聞いたことを思い出しました。

「このドスは、最後の最後に相手が卑怯なことをした時に使う物だから、決して、自分で鞘から抜かないように。」と言われましたが、そう言われるほど、抜いてみたくなり、鞘を抜きました。

すると、ドスの歯が欠けていたり錆びたりしてボロボロですが、何かを刺した感じがしました。

このドス、何かを刺したでしょ。

人間じゃないのはわかるけど、何を刺したの?

 

「ほー、それがわかるのかい。さすが、霊感がある学ちゃんだね。

このドスは、俺も信頼のおける先輩から昔、譲り受けたんだけど、その先輩が本当に命が危ないほどの大喧嘩を工業高校と何度もしたそうで、家で、肉の塊やいろんな物を刺して、感覚と覚悟を身に付けるために練習したと言っていたよ。

俺がもらった時より、錆びてるなあ・・・、砥石で研いでから渡そうか?」

 

あのう、気持ちはとっても嬉しいんだけど、このドスを持っていること自体もやばいと思うので、どうか、このドスは、どこかで処分して下さい。

もう時代が変わり、「銃刀法」も厳しくなったので、おじいちゃんが隠し持っていたドスも、最近、警察に没取されたと聞いてます。

だから、どうか、上手に処分して下さい。

先輩からの気持ちは十分、受け継ぎますので、どうぞ、お願いしますと従兄弟に伝えました。

自分がナイフや小刀を持った時に、異常な感覚になるのを知っているからこそ、自分は前世でたくさん人を殺めて来たと思っていたので私にドスを持たせてはいけません。

こんな話が笑い話になるほど「真剣で、まっすぐな大人が多かったおおらかな昭和の時代」に育ったことを感謝しています。

 

そういえば、正統派の右翼のヒットマンが持っていたドスを結婚する時に、指輪の代わりに妻に渡した話を聞いた時もすごかったです。

妻も、ありがたく受け取ります」と言ったそうで、そのドスを見せてもらうと、人間が一人死んでいる「念」を感じたので質問しました。

このドスは一人命を殺めてますが、誰が死んだのですか?

「このドスのもともとの持ち主は御武家さんの奥様で、ご主人が殺された時に、自分で喉をついて亡くなった時のものだそうです。」

「妻の覚悟」って、そういうことなんですね(^^)

男を支えた女のありがたい話をありがとうございます。

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