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トランプ大統領が「ゴールデン・ドーム」の詳細発表…費用1750億ドル

Newweek日本版 2025年5月21日(水)14時25分

トランプ米大統領は20日、次世代ミサイル防衛システム「ゴールデン・ドーム」の設計を選定し、同プロジェクトの主任プログラムマネージャーに米宇宙軍作戦副司令官のマイケル・グートライン将軍を任命したと発表した。同日撮影(2025年 ロイター/Kevin Lamarque)

トランプ米大統領は20日、次世代ミサイル防衛システム「ゴールデン・ドーム」の設計を選定したと発表した。中国やロシアの抑止を念頭に置いた同プロジェクトの責任者に米宇宙軍作戦副部長のグートライン大将を指名した。

トランプ氏が1月に整備を命じていた「ゴールデン・ドーム計画」は、飛来するミサイルを検知、追跡、迎撃するための「衛星ネットワーク構築」を目指し、数百基の衛星を配備する可能性がある。

同氏はホワイトハウスで記者会見し、ゴールデン・ドームが「わが国を守ってくれる」と表明。カナダが同プロジェクトへの参画を希望しているとも述べた。

 

カナダ首相府は声明で、カーニー政権が米国と新たな安全保障・経済関係について協議しているとした上で、「これらの協議には当然、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)のほか、ゴールデン・ドームなど関連計画の強化も含まれる」と述べた。

トランプ氏は同防衛システムの費用は約1750億ドルに上り、「全てを」米国で製造すると述べた。自身の任期が終了する2029年1月までに運用開始されるとの見通しも示した。

また、アラスカ州がプログラムの大部分を占めるとし、フロリダ州、ジョージア州、インディアナ州も恩恵を受けると述べた。

ただ、ゴールデン・ドーム計画は予算の不確実性に直面しているほか、政治的にも厳しい目が向けられる。

 

議会予算局は今月、ゴールデン・ドームの費用が20年間で8310億ドルに上る可能性があるとの試算を公表した。

民主党は同計画の調達プロセスや、トランプ氏に近い実業家イーロン・マスク氏率いる「スペースX」がシステムの主要部分構築でパランティアなどと共に有力候補に浮上していることに懸念を示している。

初期システムの多くは既存の生産ラインから供給される見通しだ。記者会見の出席者は、L3ハリス・テクノロジーズ、ロッキード・マーチン、RTXなどが契約を受注する可能性があるとの見方を示した。

 

トランプを尻目にEU・英国がロシアに停戦圧力、追加制裁の標的「影の船団」とは

欧州委員会のフォンデアライエン委員長は20日、ウクライナ侵攻を続けるロシアに一段の圧力をかけるため、欧州諸国は一段と強力な措置を盛り込んだ新たな制裁を準備していると明らかにした。9日撮影(2025年 ロイター/Piroschka van de Wouw)

欧州連合(EU)と英国は20日、米国の参加を待たずに、ロシアに対する新たな制裁措置を発表した。

ロシアが西欧諸国の制裁回避に使用する「影の船団」に属するとみられる石油タンカーのほか、制裁回避の支援が疑われる金融企業などを標的とする。

欧州はトランプ米政権に対ロシア制裁に参加するよう強く働きかけていたが、EUと英国は米国による措置の発表を待たずに今回の制裁を発表。

ブリュッセルで開かれたEU外相会合に出席したドイツのワーデフール外相は、「われわれはロシアに対し、前提条件なしの即時停戦を期待していると繰り返し明確に示してきた」とし、ロシアが停戦を受け入れないため、対応せざるを得ないと言及。

 

米国もロシアが停戦に応じていないことを「容認しないよう期待している」と述べた。

ウクライナのゼレンスキー大統領は「制裁措置は重要だ。戦争の加害者に(痛みを)実感させるよう尽力する全ての人に感謝する」と対話アプリ「テレグラム」に投稿した。

 

また、米国も加われば望ましいとし、「平和を近づけるプロセスに米国が関与し続けることが重要だ」と強調した。

トランプ米大統領はEUと英国の発表を受け、どのように対応するか検討していると述べたが、詳細は明らかにしなかった。

EUの執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長は制裁措置発表後にゼレンスキー大統領と電話会談を実施。

侵攻を続けるロシアに一段の圧力をかけるため、欧州諸国は一段と強力な措置を盛り込んださらに新たな制裁を準備していると明らかにした。

 

また「停戦を実現するためロシアへの圧力を強める時が来た」とXに投稿した。

フランスのバロ外相は「プーチン(ロシア大統領)に帝国主義的幻想を終わらせるよう圧力をかけよう」と表明。

英国のラミー外相は「和平努力を遅らせることは、ウクライナの自衛を支援し、制裁を用いてプーチンの軍事力を制限するというわれわれの決意を倍増させるだけだ」と述べた。

 

ロシア外務省のザハロワ報道官は、ロシアが「最後通告」に屈することはないと言明。

プーチン大統領が19日、将来の和平協定に関する覚書についてウクライナと協力する用意があると述べたことについて、「したがって、ボールはキーウ(キエフ)側にある」と述べた。

トランプ大統領は19日にプーチン大統領と電話会談を実施。プーチン氏からウクライナ停戦の確約を引き出すことはできなかった。

 

ウクライナ国民はしらけムード、トランプ和平交渉への冷めた本音

トルコで待ちぼうけに遭ったエルドアン(右)とゼレンスキー両大統領 UKRAINE PRESIDENTIAL PRESS OFFICE HANDOUTーEYEPRESSーREUTERS

<ロシア側には戦闘を停止すべき理由がない…ロシア人が「既に勝った」と考える訳>

開戦4年目に入ったウクライナ戦争をめぐり、ウクライナ人とロシア人の意見が一致していることが1つある。5月16日のトルコでの直接協議で事態が劇的に改善する見込みはないという点だ。ただし、理由は大きく異なる。

ロシア人がそう考えるのは、ロシア側に戦闘を停止する確たる理由がないからだ。「戦争がどんな形で終わろうと、(ロシアの)プーチン大統領は画期的成果を上げた。

 

今のアメリカは、ヨーロッパよりロシアに近づいているように見える。民主化と文化の力というお題目も取り下げた」と、あるロシア人の知人は言う。

私が初めてロシアに行ったのは2011年。数年後、ロシア政府はアメリカとの高校生の交換留学や人権NGO支援といった「ソフトパワー」関連プロジェクトを次々に停止。アメリカ側の猛反発を招いた。

「今のアメリカはロシアの立場を模倣し、世界中に広めている。プーチンがトルコでの協議を呼びかけながら、自分は参加しないと分かっても、トランプは非難せず、(プーチンとの)会談を模索している。(この勝負は)ロシアの勝ちだ」

別のロシアの知人は、停戦に消極的なプーチンの姿勢は全く意外ではないと語った。

「アメリカとはまだ友人ではないにせよ、間違いなく敵ではない。ロシアは基本的に関税の適用を免除されているし、トランプはロシアに対するサイバー活動を停止させると言っている」。

この知人は、戦争によって新たな富を得たエリート層が戦闘継続を強く支持しているとも指摘した。

つまり、トルコでの協議で事態が大きく改善すると考える合理的根拠はないということだ。

 

世論調査によれば、新たに併合した「領土の返還」を伴う戦争の終結を支持するロシア人はわずか28%。77%がドンバス地方の返還を拒否している。これが戦争に対する普通のロシア人の本音だ。

私は先日、ある国際会議に講師として出席した。そこで会った数十人のウクライナ人の1人は、今回の協議では100%何の進展もないと断言した。

 

この人物がロシア政府の行動から学んだ教訓の1つは、彼らが常に真実とは真逆のことを口にすることだという。

だから、もしプーチンが停戦を望み、そのためにトルコへ行くと言ったら、実際には停戦を望んでいないし、トルコにも行かないということになる。もちろん、この予測は的中した。

もう1人は、ロシアがわざと地位の低い交渉団をトルコに送り込み、まだ支配してもいない土地の割譲など、滑稽な要求をするだろうと正確に予測した。

さらに別のウクライナ人は、ロシアの帝国主義的傾向から見て、少なくともウクライナの東部全体と南部の大半を事実上分割するまで攻勢を止めないのは明らかだと言った。

 

彼は「プーチンの頭脳」と呼ばれるウラジスラフ・スルコフ元大統領補佐官のコメントを例に挙げた。スルコフは最近、ウクライナは「人工的な政治的実体」であり、「ウクライナの軍事外交的圧殺」は不可避だと欧米の雑誌に語っている。

世論調査の結果を見ても、トランプの調停努力が不公正な和平につながることを懸念するウクライナ人は50%以上。公平なディール(取引)が期待できるという回答はわずか3%だった。

82%はロシア側の停戦案を拒否しており、賛成派は10%にすぎない。回答者の78%は紛争地域からの軍の撤退と領土の割譲に反対している。

この戦争がすぐに終わる可能性は低い。そしてロシアは「凍結された紛争」の達人だ。アメリカが全面的にウクライナと協力しない限り、ウクライナに有利な結果が得られる可能性は遠のくばかりだろう。

 

<空からドローン、海からは海上ドローンで、標的を挟み撃ちに──ウクライナ当局がガス施設「ボイコタワー」の爆破映像を公開した>

ウクライナ保安庁(SBU)の5月19日の発表によると、ロシアが支配するウクライナ南部のクリミア半島付近で、ドローンを使って上空と海上からガス製造施設、通称「ボイコタワー」をドローンで攻撃。ロシアのレーダーシステムを損傷させた。

【動画】空と海から「挟み撃ち」の瞬間…ウクライナがガス施設「ボイコタワー」を爆破、ドローン視点の「緊迫の映像」を公開

ガス製造施設のレーダーシステムと倉庫をまず空からの攻撃で破壊し、即座に水上ドローンで攻撃を続行。同施設はロシア軍が上空と海上の活動監視に使用していたとされており、貯蔵庫と居住棟も破壊したという。

SBU(企業内において独立した事業戦略を策定・実行するための組織単位)が公開した映像は、同施設にドローンが接近する場面とされ、続く爆発で黒煙が立ち上っていた。

黒海で続くロシア軍との戦闘では無人システムを優先的に使用。国産ドローンや無人航空機、長距離ミサイルを使って、クリミア半島やロシア本土のノボロシースク基地で船舶や主要施設を攻撃している。

SBUは過去に海上ドローンと空中ドローンを使ってケルチ大橋やロシアの艦船を攻撃したこともあった。

 

ウクライナ軍は2024年半ばまでにロシア黒海艦隊のほぼ3分の1を破壊または無力化したと当局者は述べており、SBUは「ロシアの侵略者を黒海から排除するため」新しい手段の開発にを力を入れているとコメントしている。

黒海で戦闘が続くなか、アメリカのトランプ政権の強い圧力で和平交渉が行われたが、これまでのところ停戦合意に向けた進展はほとんど見られない。

攻撃の場面とされる映像は広く出回っているが、独自に検証することはできなかった。ロシアはこの情報について公式にはコメントしていない。(翻訳:鈴木聖子)

 

NHK 2025年5月23日 20時17分

 

「プーチン氏はトランプ氏をみずからの方に引き寄せうまく丸め込んだ」

停戦に向けた事態の打開が期待された両者の電話会談についてこう話すのは、エストニアのシンクタンクで研究員を務める保坂三四郎さんです。

トランプ大統領は本当にプーチン大統領に丸め込まれた?仲介外交はこれからどうなる?ロシア・ウクライナの安全保障に詳しい保坂研究員に聞きました。

(国際部記者 有水崇)

※以下、保坂研究員の話(インタビューは5月21日に行いました)

 

米ロ電話会談どう評価する?

停戦が遠のくというか、そもそも、今回のトランプ大統領が仲介している、この和平のディール、取り引きですね、トランプ氏主導の交渉の本質は、和平とか一時停戦ではなくて、ウクライナとロシアのどちらがトランプ氏を満足させることができるか。これが動機になって交渉が進んでいるように見えます。

ゼレンスキー大統領は、プーチン大統領に対してイスタンブールでの協議に参加するよう、最後まで呼びかけて交渉する姿勢を見せていましたが、プーチン氏は結局来ませんでした。

それにもかかわらず、アメリカは当初予定していたはずの対ロの追加制裁のカードを切りませんでした。

トランプ氏とプーチン氏の会談は2時間続いたと言われていますが、両者ともに「建設的な会談だった」と互いに良い印象で電話会談を終えたことからしても、プーチン氏がうまくトランプ氏を丸め込んだのかなと私は見ております。

国際防衛安全保障センター(エストニア) 保坂三四郎 研究員

トランプ大統領なぜ丸め込まれた?

トランプ氏は基本的にロシア、プーチン氏のことを理解していないと思います。

ロシア、あるいはプーチン氏に停戦を促すためには何よりも力、圧力が必要です。

 
それが重要なんですが、今回の電話会談の発表を見ても、圧力として用意した追加制裁のカードは切りませんでした。逆に、トランプ氏は、ビジネスのディールを持ちかければ相手はそこに乗ってくる、そういう発想でこの交渉をやっています。

ロシア側、プーチン氏もそれをよく理解して、トランプ氏に対して、ロシアの天然資源を売り込むとか、そっちの方に話を持っていくと。

 

この戦争で最も重要なのは「領土であり主権」なんですが、トランプ氏はその問題をビジネスのディールのようなアプローチで解決しようとしています。それはロシアに対しては通用しません。

それをプーチン氏はよくわかって、今回の停戦交渉でも、ビジネスのディールのように解決できるというトランプ氏の“幻想”を刺激していると思います。

ですので、実際には停戦に向けて技術的な話も含めて何も動いていないと思います。

トランプ氏自身は一定の成果があったように発表はしていますが、実態は何も動いていないというのが現実だと思っています。

 

なぜトランプ政権はそうなるのか?

トランプ政権2期目の特徴というのは、よりトランプ氏個人の意向が政策に明確に反映されるようになって、米ロ交渉でのビジネスの再開やロシアの天然資源の開発の話など、トランプ氏個人が関心ある分野が、よりアメリカの政策に反映されるようになっています。そこをロシアはうまく使っているのではないかなと思いますね。

ただ、トランプ氏自身はそうでも、アメリカは大統領がすべてを決める国ではありません。議会では、「対ロの追加制裁」が用意されています。

プーチン氏はアメリカの内政の状況も見つつ、トランプ氏に対しては引き続き、トランプ氏の主導する停戦、和平交渉に前向きだという姿勢を見せて、トランプ氏を取り込みながら、一方でウクライナでの当面の目標を達成するために軍事侵攻を続ける。これが、今後数か月、特に6月、7月、8月という最も戦闘がしやすい時期に起こることではないかなとみています。

 

ロシアの当面の目標とは?

2022年9月に併合を宣言したウクライナ4州の占領拡大、実効支配強化が当面の目標であり、ここに変化はありません。

客観的に見た時に、ロシアのウクライナ侵攻、2014年2月に始まったとするとすでに12年目、2022年2月の全面侵攻からは4年目に入っていますが、ロシアの戦略目標、ウクライナから実質的に主権を奪って管理下に置くという目標は変わっていません。

ロシア国民の大多数、75パーセントから80パーセントもがコンスタントにロシア軍の行動を支持しています。

そして、ロシアの戦争の継続能力を見てみると、直近では国家予算の4割をこの戦争に投入し北朝鮮軍の参戦を得て、制裁を受けながらも戦闘継続能力を維持しています。

交渉の傍ら、いま戦場で何が起きているかというと、ロシアは攻撃を継続しています。

3月から4月にかけて、ウクライナが侵攻したロシアのクルスク州のスジャを奪還しました。さらにウクライナのスムイ州に一部侵入している模様です。

一方、ウクライナ東部のドンバスでも4月以降、ロシア側が徐々に制圧地を拡大、前進しています。

プーチン氏にとっては最大限時間を引き延ばすことが重要です。

戦場でロシア軍を前進させながら、トランプ氏に対しては最大限時間を引き延ばす。電話会談の後、30日の停戦にはふれない一方、将来の和平合意の可能性に関する覚書というものを作成する用意があると言いましたが、これはもう完全な時間の引き延ばしのための仕掛けだと思います。

 

ロシア国防省が公開した北朝鮮軍の兵士らはウクライナはどう見ている?

ウクライナのゼレンスキー大統領は停戦交渉で物事が解決するとは見ていないと思います。

今回の交渉には応じましたが、そこでウクライナ側が譲ったものはまだ何もありません。ウクライナ側としても、現実的にロシアの侵攻は止まらないということを前提とした上でこの交渉に臨んでいるのです。

ウクライナ側も引き続き、戦闘継続能力を維持して、アメリカからの支援あるいは欧州からの支援を要請し、戦う準備は止めることなく交渉に応じていくと思います。

ゼレンスキー大統領を含め、ウクライナ側が今回のイスタンブールでの交渉でも見せたように、ウクライナ側としては、2月のトランプ氏との会談の二の舞は避ける。

つまり、トランプ政権が主導することに正面から反対すると、軍事支援を止められたりインテリジェンス共有支援を止められたり、トランプ政権がどういう対応をするかわからないので、仮にトランプ氏の思いつきであっても、ウクライナとしては、そこに何らかの形で、自分たちの主権や領土の問題を譲らない形で、アメリカのトランプ政権の政策に付き合っていく、少なくともそういうジェスチャーを見せるのが現実なんだと思います。

そこはやっぱり「外交上のまさにお世辞の世界」だと思いますが、トランプ氏はお世辞に弱いというか、お世辞を言わないと動かない。あるいはお世辞を言わないと逆にお仕置きされるという可能性があります。

そこはへつらってでもトランプ政権の仲介努力に感謝して称賛して、アメリカに引き続きウクライナにコミットしてもらうということなのかなと。

何度も言いますが、トランプ氏の主導する今回の停戦交渉で前向きに前進するというふうにはウクライナは全く思っていないでしょう。

 

戦争終結に自信を見せていたが?

トランプ氏は「この戦争はバイデン政権だったから起きたもので、自分が大統領だったら起きていなかった」と国内向けの宣伝でそういうことを言い始めました。

ビジネスのディール(契約締結)と同じように双方にプレッシャーをかけて交渉のテーブルに座らせる。

そこまではできるかもしれませんが、実際に交渉になったら、領土と主権の問題、ウクライナにとっては何万人の兵士を失い、何百万人の避難民を出しています。非常に大きな部分がロシアに破壊されて荒廃している。こういった中で、両者が妥協できる余地というのは非常に少ないのです。

いくらトランプ氏が、アメリカの大統領が言ったところで、ロシアとウクライナとの間の交渉できる余地、客観的な状況がまだ整っていないと思います。もともと、この和平交渉、トランプが主導するこの“ディール”への期待は低かったですが、その期待をさらに下回る形になったのではないかなと思います。

そして、何よりも重要なのは、ロシア側は春からの戦闘を激化させるためにこの冬に用意をしていたと思うんですが、それがいま、実際にドンバスでロシア軍が制圧地域を徐々に拡大するという形で起きています。

私は、交渉やトランプが主導する“ディール”よりも、戦場の方をもっと見なければいけないなと思っています。ロシア クルスク州 スジャ(3月)

トランプ氏は仲介やめるのか?

電話会談後のトランプ氏の発表を見ますと「交渉の詳細はロシアとウクライナの2国間の間でしかわからない」ということも言っていまして、言ってみれば、「アメリカはもう全部お膳立てはした。あらゆることをやったので、あと細かいことは2国間でやってくれ」と。仲介から手を引くことも示唆しているのではないかなと読めると思います。

トランプ氏にとって、このロシアとウクライナの戦争は最重要の項目ではないと思います。

トランプ氏は「自分が大統領になれば、このロシアとウクライナの戦争を1日で終わらせる」と言って大統領になりましたが、実際に停戦交渉を始めてみると、双方に譲れない一線がたくさんあることに気づいて、いま停戦交渉の仲介から引くことを示唆しているわけです。

トランプ政権にとって、ウクライナの話は必ずしも最重要ではなくて、一番重要なのは「インド太平洋地域の中国」です。

仮にこの和平交渉から手を引いたとしても、トランプ政権は次のディールを探すと思います。

中東の話、あるいは北朝鮮かもしれません。

トランプ氏は自身の手柄、見え、虚栄心を満足させるために、このウクライナ、ロシアの話に参加しています。そこで出口が見えなくなったら、トランプ氏にはウクライナが死活的な利益だという認識はないはずなので、私は手を引く可能性はあると思います。

 

ヨーロッパに求められることは?

ヨーロッパについては、ことし3月に「ヨーロッパ再軍備計画」を進めることで合意しました。これまでアメリカ製の武器、ヨーロッパの外からの調達に頼っていた武器や弾薬の生産を「ヨーロッパ圏内」でやろうと。

重要なのは、このアクションの中でヨーロッパの軍事産業の活性化にウクライナも取り込むということです。ウクライナの軍事産業の活性化も同時に進め、それを応援していくということも政治的なコンセンサスがある程度、得られている話だと思います。

もう1つはイギリス、フランスが主導していますが、ウクライナでの停戦が達成された場合の、欧州軍、欧州軍というか「平和維持軍」とも呼ばれていますが、ヨーロッパから2万人、3万人の部隊をウクライナに派遣して、停戦の監視にあたるというアイデアです。

これは実際に戦闘が起こりうる前線を監視するのではなく、かなり後方の地域を想定していることや、ロシアとの戦線が1000キロ近くある中で2万人、3万人という数だと到底足らない、実現可能性についてはかなり疑問視する声もあります。

ただ、NATOの外の枠組みでヨーロッパ各国がウクライナへの部隊派遣の可能性を検討し始めたということは大きな1歩だと思います。

NATO=北大西洋条約機構の軍事演習(ラトビア 2024年)

トランプ氏仲介撤退でどうなる?

ウクライナにとって最も重要なのは、アメリカの軍事支援とインテリジェンス共有の継続なので、これが実質的に継続される限りはトランプ氏がこの仲介をやめたところで大きな影響はありません。

一方、ヨーロッパにとっては深刻で、トランプ氏がウクライナとロシアの仲介をやめるということは、トランプ氏がヨーロッパの安全保障に対して関心を持っていない、そういうシグナルをプーチン氏に送ってしまう。

ロシアと国境を接するバルト三国やフィンランドなど、ヨーロッパで何かあった場合にアメリカがどれだけNATOの枠組みで支援してくれるのかという点について、プーチン氏に対して間違ったシグナルを送ってしまうことになります。

ですので、ヨーロッパとしては、アメリカがウクライナとロシアの仲介をすること、少なくとも仲介の努力をして、そこに関心があるということを引き続き示してくれることが、プーチン氏がヨーロッパのほかの国に侵攻しないための抑止力になるため、トランプ氏には引き続きウクライナについて関心を持ってほしいと思っているでしょう。(5月22日 国際報道2025で放送)

 

 

 

日本でも物価高騰 生活への影響続く ウクライナ侵攻1年

ロシアによるウクライナ侵攻の長期化は、エネルギーや原材料価格の高騰につながっています。日本にも記録的な物価高をもたらし、生活への影響が続いています。

侵攻きっかけに…

エネルギー価格や穀物などの原材料価格は、2021年以降、コロナ禍による物流の混乱や経済活動の再開による需要の回復などから上がり始めていましたが、去年2月のロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、さらに上昇しました。これに加えて、円安が進んだことで輸入コストも増加し、食品メーカー各社などでは値上げの動きが広がりました。

家庭で消費するモノやサービスの値動きを見る消費者物価指数も上昇が続いています。1月の生鮮食品を除いた指数では、上昇率が41年4か月ぶりの記録的な水準となっています。

品目別の上昇率を具体的にみるとウクライナ侵攻の長期化による影響を大きく受けているものも多くなっています。

ロシアやウクライナが主要な生産国となっている小麦の価格が上昇し「小麦粉」は去年の同じ月より16.9%上がりました。

また「食用油」も31.7%上昇していて、総務省や農林水産省によりますと要因の1つとして、ウクライナ情勢悪化の影響を背景に、世界的に油脂の需給がひっ迫していることがあげられます。

このほか、ノルウェー産の「サーモン」がロシア上空を避けて迂回した飛行ルートで運ばれているため輸送コストの上昇などで生鮮魚介の「さけ」は29.4%の上昇となっています。

 

「サーモン」価格上昇 すし店は

すし店」を運営する会社ではノルウェー産のサーモンを使った商品の値上げを余儀なくされています。

千葉県にある会社では90余りのすし店を展開していて京都にある会社を通じてノルウェー産のサーモンを年間およそ200トン仕入れています。しかし、去年2月のロシアによるウクライナ侵攻で空輸のルート変更を余儀なくされ、輸送コストの上昇などで商品を値上げしました。

このうち、ノルウェー産のサーモンを使った商品のうち「オーロラサーモン」は1皿2貫で税抜き270円で提供できていました。店舗では値段によって6種類の皿に分類され、当時は上から4番目にあたる赤い色の皿でした。

しかし、去年3月に税抜き330円に値上げされ、皿は「いくら軍艦」や「本まぐろ上赤身」などと同じ3番目に高い分類の銀色の皿に変わりました。

さらに去年9月には税抜き360円に値上げされ、2度の価格改定で90円上がりました。

家族4人で訪れていた母親は「サーモンは息子が好きなので、よく注文します。会計をする時に全体的に値段が上がっていると感じます」と話していました。

すし店を運営する「銚子丸」の経営戦略室の下公祐二課長は「ウクライナ侵攻による影響がここまで長引くと思っていなかったですし、ほんろうされた1年でした。今後も先が見えにくい混とんとした状況が続くと思いますが、臨機応変に対応した仕入れなどを行ってお客様に喜んでいただけるよう努力していきたい」と話しています。

 

“サーモン価格高騰”で仕入れ分散化の動きも

ノルウェー産のサーモンの輸送コストが上昇する中、安定的な供給のために別の産地からの仕入れを増やす動きが出ています。

農水産物の輸入などを行う京都市の会社はノルウェーで養殖されたサーモンを年間およそ1万トン輸入し、スーパーや回転ずしのチェーン店などに卸しています。

ロシアによるウクライナ侵攻を受けてルートの変更を余儀なくされ、トルコや中央アジアの上空を通って迂回するため飛行距離は1.5倍となり輸送コストはおよそ2倍に上昇しています。

このため、コストの上昇分を価格転嫁せざるを得ず、ウクライナ侵攻の前と比較してサーモンの卸売価格を4割近く値上げしました。

会社では、安定供給を図るとともに、輸送コストがノルウェー産よりも低くなったチリ産のサーモンの仕入れに力を入れていて、ことしは、去年と比べておよそ3.4倍に増やすことにしています。

一方で、この会社ではウクライナの水産加工業者との取り引きを続けています。

会社によりますと、ウクライナ周辺を空輸したり、船舶で輸送したりする貨物は保険の対象にならないため損害を受けても補償はされませんが、去年の仕入れは前の年と比べて2倍余り増やしていて、今後もビジネスを通したウクライナ支援を続けたいとしています。

「オーシャン貿易」の金子直樹社長は「卸しているノルウェー産のサーモンの数量は、一番多いときと比べておよそ6割程度となっている。消費者から手が届きにくくなっていてチリ産のサーモンの取り扱いを増やしている。ウクライナの企業と、いままで通りの取り引きをすることが、自分たちにできる最大の支援ではないかと思っている。貿易をするにあたって、地政学リスクは避けられず、情勢を分析して、仕入れ先の分散化などリスクヘッジを図っていくしかない」と話していました。

 

希少金属の価格上昇で“リサイクル”活用も広がる

ロシアのウクライナ侵攻は「金や希少金属の価格上昇」を招きました。

企業の間で資源の安定確保に向けたサプライチェーン=供給網の再構築が課題となる中、宝飾品や電子機器から金属を取り出すリサイクルの活用が広がっています。

去年2月のウクライナ侵攻以降、ロシアが産出国となっている金や希少金属は需給ひっ迫などの懸念が強まりました。

▽産出量が世界3位の金は去年4月に先物価格が初めて1グラム8000円を超え、いまも高止まりしているほか▽世界の産出量の4割を占めるパラジウムも一時、急騰しました。

こうした中、貴金属リサイクル大手のアサヒプリテックは去年4月、およそ60億円を投じて茨城県坂東市に国内で最大規模のリサイクル工場を建設しました。

この工場には、指輪やネックレスといった宝飾品などが集められ、この中から金やパラジウムなどを回収しています。

特殊な薬品などを使って金属の種類ごとに分離させ、純度の高い状態にしたうえで販売していて、商社やメーカーなどから引き合いが増えているということです。

また、「人権リスクへの対応」としてロシア産の資源の利用を避ける動きも広がっているということで、世界的に有名な宝飾品メーカーなどへの販売が増えています。

この会社では、去年12月までの9か月間に▽金を前の年の同じ時期と比べて、1.6倍の19トン▽「パラジウム」を5%多い4.6トン生産したということです。

アサヒプリテックの中西広幸社長は「貴金属の価格が高騰すれば、結果として、消費者が影響を受けるので、リサイクルの貴金属を安定供給することで、市場価格の抑制にもつなげられると思っている」と話しています。

 

パラジウムとは?

パラジウム

パラジウムは希少性の高いレアメタルのひとつです。

たとえば金に比べると、産出量・埋蔵量は圧倒的に少ないと言えます。また、産出地がロシアと南アフリカのみという点も、希少性の高さを示しています。

なお、パラジウムは1802年に、イギリスの科学者・物理学者W.H.ウラストンが発見しました。同年に発見された小惑星パラスが、名称の由来です。元素記号は「Pd」です。

 

パラジウムの性質

パラジウムには「水素を内部に吸着できる性質」があり、その量は自身の体積の935倍。「水素を貯蔵」するのに役立つと考えられています。
また、融点は1,555℃と、他の金属に比べると比較的低いのも特徴。これは鉄の融点と同等です。そのため、工業用に加工しやすい貴金属として重宝されています。

パラジウムの用途

パラジウムとは
人体にアレルギー性があり、装飾品・歯科治療用品として海外ではパラジウムフリーの製品を選ぶ流れの国もあります。

ジュエリーなどの装飾品

パラジウムの時計
パラジウムは、ジュエリーなどの装飾品の素材としても活用されています。とくに、プラチナの割金(金やプラチナなどに混合する金属のこと)として使い、強度と色味の調整を行うのが一般的です。

そもそもプラチナは強度が低く、そのままアクセサリーとして利用するのには心許ない素材です。パラジウムを割金として使うことで、強度が高められます。ちなみに、「Pt900」と表記されたジュエリーは、9:1の割合でプラチナとパラジウムを混合しているという意味になります。

 

そのほか、ホワイトゴールドの素材や、シルバーアクセサリーの割金にもパラジウムは活躍。加えて、傷がつきにくいという特性が評価され、近年ではパラジウム100%の結婚指輪も人気を集めています。

 

化学反応の触媒

パラジウムがもっとも多く使われるのは、自動車排ガス触媒(三元触媒)です。

自動車の排気ガスには窒素酸化物や炭化水素、一酸化炭素といった有害な化学物質が含まれます。パラジウムを触媒にすると、たとえば一酸化炭素を二酸化炭素へと変換できます。ちなみに、プラチナにも触媒効果がありますが、コスト面からパラジウムの利用が進められています。

そのほか、パラジウムはクロスカップリング反応・ヘック反応といった有機合成の触媒にも利用できます。そのため、医薬・電子材料の開発・研究分野での用途も進んでいます。

 

歯科治療の材料

歯科治療で用いられるかぶせ物、詰めものの素材にはプラスチックやセラミックなどがありますが、なかでも多く利用されているのが銀歯です。これは、パラジウム20%・金12%を含んだ合金のこと。ただし、金属アレルギーの懸念から、世界的には別の合金の使用が推奨されています。

 

電気・電子工業用部品

パラジウム
電子機器の接点やコンデンサーの材料など、パラジウムは電気・電子工業用部品の素材としても活躍しています。なお、近年はコンデンサーの部品としてニッケツを代替するのが世界的な流れとなっています。

 

パラジウムと「プラチナ」の違い

プラチナとパラジウム
美しい銀白色や優れた耐食性、展延性など、パラジウムとプラチナには多くの共通点があります。どちらも白金族元素に分けられるため、元素的にも似た性質があるのです。一方、相違点がないわけではありません。以下の表に、それぞれの違いをまとめます。

  パラジウム プラチナ
比重 12 21.4
硬度 高い 低い
価値 低い(※) 高い

※近年は、パラジウムのほうがプラチナより高値で取引される場合もあります

パラジウムの価格は高騰中?

高騰している
従来、パラジウムはプラチナなどに比べ、高い評価を受ける金属とは言えませんでした。しかし近年は価格が高騰してきています。

理由はガソリン車の需要増と、産出国であるロシアに向けられたアメリカ・EUによる経済制裁です。電気自動車の普及もありますが、まだまだガソリンは主要なエネルギーのひとつです。また、今後もロシアとEU・アメリカの緊張関係は継続すると考えられるため、パラジウムの価格高騰は続くと予想されます。

 

今日の買取相場価格 ※1gあたり

金相場

16,698 円(+0

プラチナ相場

5,373 円(+0

銀(シルバー)相場

162 円(+0

パラジウム相場

4,620 円( +0

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