貧乏中学生の初めてのバレンタイン
これは私が中学生の時の体験談ですので、心の学びにして下さい。
それまでにはない「バレンタイン」というチョコレートメーカーの宣伝に載せられた女子たちが、教室の隅に集まってヒソヒソ話しをしていたので、こっそり何を話しているのか聞いてみました。
「男には、関係ない!」と言われましたが、すぐに話している内容と問題がわかりました。
女子たちは、誰にチョコをあげるか相手が被らないように話しているようですが、チョコを買うことも、材料を買うこともできない貧乏な家の女の子が会話に参加できなくて泣き出しそうだったからです。
僕は困った人がいると、いてもたってもいられない性分なので、女子たちのリーダー格の女の子たちにこうお願いしました。
お前たちは自分でチョコとを買う金はあるだろうけど、お金が全くない人もいるんだぞ!どうするんだ!
お前たちの行動は、あの子を仲間はずれにしていることがわからない薄情者か!ばかもん!
確かにそうだよね、どうする?みんな!やめようか?
いや、やりなさい!きっと、男たちは喜ぶから、やり方次第だぞ!
例えばな、誰かの家に集まって一緒にチョコの材料から作れば、少しぐらい、成形ミスや余ったチョコが出るだろう!そのあまりで彼女に何かを作らせなさい。
あー、それいいね、やるやる!
2月14日の当日、全員、何かを隠し持っているのはわかっていましたが、そんな時に限って、先生が「今日は持ち物検査をやるぞ!」と言い出しました!
女子たちの怒りは最高潮ですが、みんな私をじっと見て、どうにかしてよ!と、目で訴えてきました。
「先生、持ち物検査の目的はよくわかっていますが、今日だけはやめて下さい。本当は、あとで先生を喜ばせようと女子たちが準備しているものがあるので、今日だけはご勘弁下さい!」
「何!俺にか???何か、俺にくれる奴がいるのか?」
「いますとも!私は、あまり先生とは気があいませんが、女子たちの中には隠れファンがいて、先に見られるのをとても恥ずかしがっているので、やるなら明日にして下さい!」
よし、明日、持ち物検査をやるぞ!!って先生はおらんだろう!ばかもん!
まあいいわ、俺に何かくれる奴がいるなら、そっと、職員室の俺の机の上に置いてくれな。だから、今日は、持ち物検査はやらんぞ!
女子たちは一安心したようだけど、先生に渡すものなんか、何もないよ!と言ってきたので、私はこう言いました。
いいか、これはお前たちのために俺が言った言葉だから、あとはお前たちが努力しろ!俺に、恥をかかすなよ!
例えばな、みんなが持ってきたチョコを少しづつカッターで削って粉々のチョコをアルミホイルに入れて温めれば、少しは形になるだろう!
先生はアルミホイルの中身を見て驚くと思うので、紙にこう書いて入れておけ!
「私の心は、この粉々のチョコのように、熱い思いで雪が溶けるような思いです」とな!
誰か!女子の中で一番字が綺麗な奴が書いて、丸めて入れておけ!
女子たちは文句を言いながらも、自分が持ってきたチョコをちょっとづつカッターで削り、そっと、担任の机の上に置きました。
午後の授業が始まると、先生は感動しすぎて目頭が赤くなり、
「誰だ!あの詩を書いたのは?
俺はその子にお礼が言いたい!
本当にありがとう!」
とだけ言って、職員室に戻っていき、授業は自習になりました。
全員、必死に笑いをこらえていますが、絶対にバレてはいけないことなので笑いを耐え抜きました。
そういえば、教員住宅で担任の先生が奥さんに怒られている姿を何度か見たので、先生は家で奥さんに優しい言葉をかけられたことがないんだろうなと思いました。
担任の先生には小学生の女の子もいますが、その子に果物を渡そうとすると、「あんたみたいに私の家は貧乏じゃないので、貧乏人から物をもらうことはできません!」と、果物を突っ返そうとしました。
自分が小学生で、幼稚園の女の子でなければ引っ叩きますが、さすがに担任の子供なので、こう言いました。
良いかい、可愛い女の子よ。
これはね、神様があなたのお母さんにあげなさいと言ったので、僕が持ってきたのさ。
僕の家は貧乏だけど、野菜も果物もたくさんできるのも、神様のおかげなんだ。
だから、僕の母親が、「神様のお裾分けをしないと天罰が当たる」と言って、「担任の先生の家に持って行きなさい」と言われたのさ。
だから、お願いだから、もらって!(^^)
人に物をあげるときに、周りの人のことや、もらう人の気持ちまで考えられる人間と、自分だけの価値観で好き勝手にやる人間の差を、この話しからどうか、気づいて下さい。
当時は、「義理チョコ」なんて言葉は無かった真面目な時代だったので、私もオマケチョコをみんなからもらいましたよ!(^^)
ありがとう、気の優しい同級生の女子たち。
きっと、素敵なお母さんやおばあちゃんになっているんだろうなあ・・・(^^)