「船を乗り換える」メンタルマネージメント
あなたが生まれた時は、水を一杯にしたゴムボートの中で遊ぶ子供みたいなものでした。
色々なおもちゃを与えられて、ずっと、楽しむだけで満足でした。
小学生から中学生の時期は、ゴムボートの中で遊ぶことに飽きて、湖に浮かぶような小さな木の小舟を見つけて川へ船を浮かべて冒険に出かけます。
川の流れはゆっくりなので、どこへ行くのかワクワクしながら、周りの景色を楽しんでいます。
途中、同じ様な小さな木の船に乗った人に出あうと、二艘をくっつけて、一緒に楽しい時間を過ごす時期もあります。
社会へ出る時期は、川が大きな海に繋がっていて、流れのままに大海へ出てしまったようなものです。
港には大きな船もたくさん見かけましたが、大海原へ出ると、自分の木の船が余りに小さいので不安になります。
もう少し、丈夫な大きな船さえあれば乗り変えたいと思っているのに、なかなか丈夫な船は流れてきません。
それでも毎日、一人で木の船の櫓をこぎ続けます。
ある時、自分の船より大きな木の船に乗った人を見つけました。
あの船なら5人くらいは乗れるから、私も載せて欲しいと思って近付くと・・・
「乗せてあげてもいいけど、あなたはこの船に乗る資格はあるの?」
と聞かれます。
「????」
船に乗せてもらうのに資格が必要だとは知らなかったので、
「どういう資格が必要なのですか?」と尋ねました。
「この船は5名まで乗れるので、これから色々な人が乗ってくるんだけど、誰かの為に役に立つ人でなければ乗れないルールなんだよ。」
少し、悩みました・・・。
そんなに一生懸命に勉強もしなかったし、誰からも好かれるほど人間付き合いが得意な自分じゃない・・・本当の事を言えば、自分が嫌いな面もあるくらいなんだけど・・・・
そういえば、お母さんがこう言ってくれたことがあったなあー。
「あなたは頭も良くないし、器量も良くないけど、何事も一生懸命にやるところだけは偉いわねー」
「あのー、私、一生懸命だけは自信があるんですけど、そんなんでいいですか?」
「いいいとも!それで、十分さ、だって僕は一生懸命に頑張る事が苦手なんだよ。さー、どうぞ、どうぞ!」
大きめの船に乗せてもらったおかげで、気持ちは少し安心しました。
だって、もうこれからは一人じゃないんだもの!!
二人で船を漕いでいると、自分みたいに小舟に乗った人たちが近寄ってくるので、その男の人は同じ質問をして、あとの3名を自分の船に乗せました。
にぎやかになった船はとても楽しいけれど、なぜか、もっと自分のスペースが欲しいというか、自分らしく船を漕いでみたい気持ちが溢れてきました。
するとある日、鉄製の30名乗りの大きな船が近寄ってきました。
その船の船長は、こう叫ぶのです。
「おーい、そこの小さな船に乗っている人たちよ。
もし、こっちの船に乗りたければ乗せてあげるよー!」
その言葉を聞いてワクワクしたので手を挙げて、私は、一人で鉄製の船に乗り移りました。
今までお世話になった木の船の持ち主にお礼をいうと、
「いいよ、これも出会いだからね!
また、僕らも新しい誰かに出あう事を楽しみにしてるから気にしないでね!」
30名乗りの船に乗ると、何と一人一人の部屋まであって、飲み物も食べ物も自由に食べていいと言うので驚きました。
さっきの木の船では、たまに釣れたお魚を5名で少しづつ分けて食いつないだのに、天国にでもやってきた様な気分になりました。
数か月、大海原を航海していると、台風に直撃されて、なんと、乗組員の半分が波に飲まれてしまった為に、今では、私も船を動かす重要な役目を担っています。