都合のいい女には、なるな!
中学2年生の頃は毎週のように隣町の祖父に会いに行き、いろんなことを教わりに行きましたが、母が嫁に来る時に、父親に言われた言葉をご紹介します。
娘さんを持っているご両親は、覚えておいて下さいませ。
お前は、明日から俺とは他人になる。
だからこそ、俺は親として最後の教えを授ける。
よく心に入れておけ。
まず、女に生まれたからには、男に従え。
しかし、男にとって都合がいい女にはなるな!
父さん、それは意味がわかりません。
父さんも時々、理不尽な怒り方をする時があるし、突然、殴る時もあるけど、私は女だからガマンガマンと母さんを見て見習いました。
生まれた家の苗字を捨てて、他の家に嫁に行くということは、どんなに辛い経験をするか覚悟していますが、最後の日に、さらに男の言いなりになれと言うのですか?
そのうえで、「都合のいい女になるな!」と言われても、私には意味がわかりません。
だから、どうか、わかりやすく教えて下さい。
お父さんはしばらく考えたあと、こう教えてくれました。
良いか、男は常に理不尽な社会の中で生きなければいけないと決まっているものだ。
自分一人で農家を始めても、水はみんなと共有するし、人手が足りない時はお互いに助けわないと、収穫できずに家族は飢え死にするんだ。
だから、家の中がどんな状態でも、絶対に他人とうまくやらないと、農家はできないんだ。
親が農家だからといって、子供たちが親の世代とうまくいくと思うか?無理だろう。
だから、子供は子供で、他人様と、どううまく付き合うのかを身につけないと、家族を飢え死にさせてしまうんだ。
俺の家の周りにもそういう家があって、大きな農家だったのに、息子が勝手なことばかりやって田んぼを人様に売らないと生きていけなくなり、今では自分の田んぼは無くなり、他人様の田んぼのお手伝いすることで、やっと生きている状態だ。
誰が悪いのかは、明確だろう。
これが男の社会を生き抜く方法だからこそ、男たちはいつも理不尽な男社会で生きる知恵を持たないと生きていけないんだ。
そして、お前たち女は、その男の収入と精子をもらって母になれるんだぞ。
いくら健康な体をしていても、男が子供を産ませたい女かどうかは、女次第なんだ。
俺たちの時代にも色気付いた女たちが、着飾ったり化粧してチヤホヤされた女たちもいたが、いろんな男と付き合って、最後は誰にも結婚してもらえず、今も一人もんさ。
馬鹿だとしか思えない女も、たくさん世の中にはいるのさ。
でも、お前にはしっかり教えたはずだから、バカな女にはならないと思うが、ちょっと男勝りのところがあるので教えているんだ。
いいか、どれだけ男より優れたものがあっても、決して、男たちの前(社会)で威張ってはいけないぞ!
男の影になって、夫を立てれば立てるほど、お前の価値は上がるもんだ。
見ている人はよく見ているもので、男が良い仕事をしている人ほど、影に素晴らしい女がいることを知っている。
だから、お前もそういう妻になれよ!
父さん、それはわかったけど、「都合のいい女になるな!」ってどういう意味?
まだわからんのか、お前は、本当にバカだな。
男を影で立てておいて、そして、周りの人たちから褒められたら男は調子に乗るだろう。
だから、その時に今まで言えなかったことを言うんだよ。
ねえ、ご主人様、本当にいつもご活躍、ご苦労様です。
でも、あなたの三度三度のご飯を作っているのは誰ですか?
毎日、あなたの体をお風呂で洗っているのは誰ですか?
あなたがセックスしたい時に眠たくてもさせているのは誰ですか?
あなたが作った子供に教育して育てているのは誰ですか?
と聞いてみるんだよ。
賢い男ならお前に「ありがとう」くらい言えるはずだし、バカな男なら「お前を食わせているのは俺だ!」と威張るはずだ。
そしたら、もう二度とご飯を作りません。
体も洗いません。あなたも一切、受け入れません、と泣いて言うのさ。
男はバカだから、女の涙には弱いんだぞ!
え!ウソ泣きしろってこと?
そうさ、バカな強がりの女ほどウソ泣きできずに苦しんでいるが、賢い女はすぐウソ泣きするものさ。
そうやって上手に男を操って、女は、最後の最後に感謝されるもんだぞ!
え!もしかして、それ、母さんも父さんに言ったの?
大昔な・・・俺も若かったので、兵隊から帰ってきて足も無いのでムシャクシャして、毎日、酒ばかり飲んで好き勝手なことをやっていたのさ。
え!タバコもお酒もやらない父さんがやっていたの?信じられない・・・。
その時よ、普段はおとなしい婆さんが、こう言ったのさ。
お前さん、本当に兵隊で辛い思いをしてご苦労様です。
お国に足を1本寄付して、本当にご苦労様です。
生きて戻ってくれたことは本当に嬉しいのですが、今のあなたを見ていると、私は悲しくて辛くて何も言えません。
あなたがもし、このまま変わらないのなら、私は子供二人を連れて家を出て行きます。
今までありがとうございます。
そう言うと婆さんは、本当に、子供二人を連れて家を出て行ったのさ。
でも、婆さんの実家は、娘3人で上から誰も嫁に行けずにいたので、一番嫁に行けそうもない3番目を俺がもらってやったのに、その俺を見捨てるんだぞ!もう、頭にきたさ。
でもよ、食べ物を作ってくれる婆さんがいないと怒る相手も、愚痴を言う相手もいないことに気づいたのさ。
だから、松葉杖で必死に、婆さんを追いかけたのさ。
どうなったの?お母さんは?
婆さんは、怒った勢いで子供を連れて家を出たけど、実家には行けないし、バスに乗るお金もないし、行くあてなんてないのさ。
そんなことも忘れるほど、本当に頭にきたことを俺も、やっと気づいたのさ。
お金もないくせに、バス停でずっと泣き止まない子供二人を連れて立っていたのさ。
その泣いていた子供って、私とお兄さん?
そうさ、遠くから俺が呼んでも振り向こうともせずに、じっと、先を見つめていたんだ。
だから、初めて婆さんに、頭を下げたよ。
本当にスマン。
自分のことばかり考えて、お前が影で支えてくれていることを忘れていたとな。
だから、金輪際、タバコも酒も一滴も口にしないので、もう一度、俺の妻に戻ってくれと頼んだのさ。
そう言うと婆さんは、
「仕方ないね。食べるものが無くて、ひもじいだけでしょ。
でも、そんな素直な父さんが好きだから戻るよ!」
と言って、家に戻ってご飯を作ってくれたのさ。
だから、お前も嫁に行って相当、辛いこともあるだろうけど、苗字を捨てるってことはそういう覚悟がないといけないんだ。
よく覚えておけよ!
20歳で嫁に出た母に教えた祖父の言葉でした。