【宮古諸島】伊良部島の産婆さんは、誰からも尊敬される女性でした!
2005年の伊良部部落の人だけの「ユークイ(豊年祭)」に初めて参加した時、ある御嶽の中で、ものすごく有名なお婆さんに会いました。
座っている「座(ざ)」を見れば、どういう立ち位置の人かわかるので、神様に向き合う一番前には神様役の「司オバーたち3名」が座って祈っていますが、その左後ろのブルーシートに「一人だけ」ポツンと座っていたお婆ちゃんが、私を手で呼びました。
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初めてのユークイ参加だったので、地元の人にご迷惑にならないように、右手の「下座」の女性たちの端に座っていた私を見つけて、手招きするので困りました。
神様が呼んでいるからと、私をこの「ユークイ(豊年祭)」に入れてくれた島の女性は、「島最高のオバーが呼んでいるから行ったほうがいいよ!」とだけ言うので、腰を低くして、そっと、隣に行きました。
あんた、どっから来た?
あー、北海道かい?ご苦労様だったね。
何名の仲間を連れてきたんだい?
そうかい、そうかい、ご苦労様!
まあ、いいからここに座りなさい!
あんたは自分の仲間を連れてきた「親分」だから、この席に座ってもいいんだよ!
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うしろで、男たちがゴチャゴチャ言うので、元の場所に戻ろうとすると・・・
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お前たち!!誰に物を言っているんだい!!!
私はあんたたち全員をこの手で受け止めて生かしてやった人間なのに、「私が良い」って言っているのに、私に逆らうのかい!!!
あんたたちの子供も孫も、この手で取り上げてやったのに、その恩を忘れたのかい!!
黙って、島酒とビールと、つまみをこの人に持ってきなさい!!
これは、命令だよ!!
さっさとしなさい!!!このノロマ!!!
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ごめんさいね、大声を出して・・・。
だってアイツは、子供の頃から本当にノロマなので、言ったことをすぐやらないし、後始末もできない奴なのに、なぜか、今は、市長になったらしく、威張っているのさ!
あんたのおかげで、今まで溜まっていたウップンを張らせたからスッキリしたわ!
ありがとね!さ!飲もう飲もう!!
ねえ、オバーは、産婆さんなの?
そうだよ!
この島のほとんどの人は私が取り上げた子供たちさ。
だから、私は誰よりも神様に近い位置に座ることになっているのさ!
でもそれはね、もうすぐ「あの世」に行くってことさ!
ま、いつかわからんけどね!(^^)
どうして、オバーは、産婆さんになろうとしたの?
私は12人兄弟姉妹の最後の子供なので、たくさんの兄弟姉妹が世話をしてくれたのさ。
でも、もうその人たちは、世の中へ出て働いているので、「恩返」しができないから、自分ができる「恩返し」を考えた時に、産婆さんになろうと決めたのさ。
オバーの時代に「産婆さんの学校」ってあったの?
産婆さんの資格は、誰が決めるの?
学校なんて、あるわけないさ!
だから私は、小学生の頃から産婆さんのお手伝いをして、自分にできることをさせてもらったのさ。
お湯を沸かすとか、汚れた布を洗うとか、洗った布にアイロンをかけて干すとかね!
そんな子供がお手伝いしても、お金も何も、もらえないでしょ!
どうやって、自分の食いぶちを稼いだの?
この島は、昔から貧乏な島なので、まともな食べ物なんて何もないのさ。
でもセックスすれば、できる人には子供ができるので、誰かが手伝って産ませるしかないでしょ!
私は家に帰っても食べるものが無い家だったので、一人のお母さんが子供を産むと、アメ玉ひとつ、私にくれるのさ。
その時のアメ玉、うれしかったなあ・・・。
なんか、「都会の味」がした気がするのさ・・・。
この島を出て、どこにも行ったことはないけどね(^^)
え!オバーは、この伊良部島を出たことはないの?
どうして?もう、今の時代ならどこへでも行けるでしょ!
お金があるとかないとかの問題じゃなくて、私はこの島の「最高齢の産婆」だから、どこかで妊娠した女性がいたら、まず、自分で見に行くのさ。
腹の張り方とか、歩き方を見ていると、何を食べさせれば良いかもわかるからね。
あとは、私の弟子たちがやってくれるけど、やっぱり、難産な時や、子供を産むお母さんの「覚悟がない時」は、私の出番なのさ。
女はね、子供を産む時は、命懸けなのさ!
「自分の命を取られても良いから、子供を救ってくれ!」というお母さんが多いけど、私は自分で、あそこに手を入れて、子供の頭を触るとわかるのさ。
この子を産んだほうがいいのか、堕したほうがいいのかを私が決めて、お母さんと話し合うのさ。
前に一人だけ、私の言うことを聞かないで子供を産んだけど、その子は自殺してしまったのさ。
そういう子供ってね、わかるんよなあ・・・。
だから、堕ろせって言ったのに・・・。
悲しいよう、自分より若い子供が亡くなるのは・・・。
産婆はねえ、技術じゃないのさ。
心と心をお母さんとぶつけ合って、「本気で産む覚悟」をさせるが、産婆の仕事なのさ。
今の助産師の学校で何を教えているかは知らんけど、私を育ててくれた産婆さんは、何も言わない人だったのさ。
だから、私はその分、自分で勉強していろんな産婆さんの意見を聞いてわかったのさ。
動物の世界だって、弱い子供を産めば、親は働けなくなるし、他の子供達のミルクもあげられないでしょ!
お母さんたちは、子供を産んだあとは忙しいので、10月10日(とつきとうか)の休みをくれたんだよ!って女たちは教えるんだ!
女はね、自分のために生きたらダメなのさ。
子供を産んで、社会へ送り出して、「恩返しできる人間」に育てないと、迷惑をかけていることさえ、知らない親が増えて困ったものさ。
あなたは、子供はいるのかい?
いえ、妻に産ませた子供は一人もいません。
他の女が勝手に産んだ子供は、いるかもしれませんが・・・(^^
いいんだよ、男はそれで!
女はね、「健康な種」さえ貰えば、いくらでも子供を育てられるものさ!
だって、考えてご覧よ!
産んで子供にオッパイをあげたあとは、みんなあとは「男たち」に吸われるんだよ!
そのために、二人同時に吸わせるために、神様はオッパイを二つくれたのさ。
オッパイ、二つは神様だったのか・・・知らなかったなあ・・・
男は、そんなくだらないことを知らなくてもいいのさ。
ただ「金」を稼いで、賢く生きていけば、家族が食う飯のぶんくらいは、贅沢しなけりゃ稼げるでしょ!
私も子供はいないので、これからどうしようかと思っているところさ!
え!オバーは、子供がいないの?
ご主人も、いないの?
私の仕事は、いつ呼ばれるかわからないから、男の相手をしていても、セックスしていても呼ばれるので、結婚しようと思った男にも逃げられたのさ。
私の気が強いのが、悪いのかな???
いいえ、それは間違いです!
私の母のほうが、半端なく気が強いので、絶対にオバーのほうが女らしいです!!!
間違いないです!!!
あんたは、優しい男だねえ。
正直だし、大変だと思うけど、私の話をしていいかい?
私ね、今まで誰にも言ったことはないんだけど、自分で、「自分の子供」を殺してしまったのさ。
結婚しようと思っていた男と付き合っている時に、生理が遅れたと思ったら、急に、あそこから子供が流れて出てきたのさ。
必死に、自分で押し込んだけど、もう、ダメだったのさ。
きっと、まともな食べ物も食べてないし、ほとんど寝れないくらい毎日のように出産に付き合った時だったので、誰にも言わずに、海に流して祈ったのさ。
でも、言えてよかったわ!
このことだけは誰にも言えないと思ったけど、あなたのおかげで、肩の荷が降りた気がするわ。
あなたすごいねえ・・・。
90年間、誰にも言わなかったことを言わせるなんて、あんた霊能者かい?
私はその呼び名は好きじゃないですが、人は勝手に私のことをそう呼ぶ人がいます。
生まれた時から、「生まれる前の記憶」もあるし、他人のことも全てわかるので、辛すぎて、誰にも自分のことを言わない人生を生きてきました。
でも、今、オバーが話してくれて、僕も嬉しいです!
きっと、この御嶽の神様が、オバーの思いを感じて、私に言うように仕向けたのだと思います。
昔からそうなのですが、みんな僕に向き合うと、嘘が言えなくなるみたいで、正直になります。
正直になれない心の底からの「嘘つき」は、僕とは付き合えません。
だから、オバー、もう一人で家にいないで、親族の誰かと一緒に住んで下さい!
最後の最後に、オバーが家で一人で死ぬのだけは、僕は嫌です!!
これだけたくさんの人たちの命を取り上げた人が、「孤独死」だけは、絶対に、ダメです!
せめて、ご兄弟姉妹に囲まれて、祝福されて人生の最後を過ごしてください!
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このあと、オバーは、沖縄本島にいる兄弟姉妹を頼って、家を引き払ったと、島の人に聞きました。
人生の大事なことをたくさん教えてくれた90歳の産婆のオバー!
ありがとうございます!!