またしても中東情勢は混迷の度合いを高めている。イランによるホルムズ海峡での商船攻撃への報復として、米中央軍が7日、大規模な空爆を実行。イランもまた米軍関連施設にミサイルで反撃した。

6月17日に戦闘終結に向けた覚書を結んでから、わずか3週間。60日間の戦闘停止に暫定合意していたが、折り返しにも至らず再び攻撃の応酬となった。国際社会の落胆は大きい。石油タンカーの往来が再び滞れば、私たちの暮らしにも暗い影を落とそう。

イランが海峡の航行ルートを勝手に決めるのは横暴で、さらには商船への攻撃を以前から重ねてきたことは許し難い。一方でまた、米国の報復にも大きな疑問符が付く。

米国とイスラエルが先制攻撃し、殺害したイランの前最高指導者アリ・ハメネイ師の国葬が9日に終わってから、覚書の協議を再開する予定だったはずだ。それを待たず、なぜ空爆に踏み切ったのか。

 

感情が先走るトランプ米大統領は空爆後「(覚書は)終わった。あんなくずどもとは交渉したくない」と、あしざまにイラン側をなじった。

舌の根も乾かぬうちに本格的な戦闘が再び始まることはないと述べ「何が起きてもすぐに終わる」と楽観論を説いた。

2月に米国がイラン攻撃に踏み切って以来、トランプ氏の対応は行き当たりばったりで、中東政策の明確なビジョンはいまだ見えてこない。

火種がくすぶるのは、覚書が根本的な対立点を先送りしたもろい骨組みだからだ。

「核兵器の原料」となる高濃縮ウランの引き渡しを求めた米側の主張は通らず、ホルムズ海峡を巡っても平行線をたどった。

イラン側は将来的な海峡管理権や通航料徴収を視野に入れ、米側は自由航行の完全回復を唱えてきた。戦闘停止は一時的なものという見方は当初からあったが、やはり現実を目の当たりにすると残念でならない。

 

警戒すべきはイスラエルの動きである。

トランプ氏にくぎを刺されているものの、ネタニヤフ首相はイランへの敵意を隠しておらず、今回の事態に乗じて再び軍事行動を本格化させる恐れもある。戦火の拡大を許してはならない。

トランプ氏が本格攻撃を否定する発言をしたことに望みをつなぎたい。秋に中間選挙を控え、原油値上がりに伴う米国内の批判は避けたいはずだ。政治的な打算より、人道的な見地から中東の和平が最優先なのは言うまでもない。

まずは覚書に盛り込んだホルムズ海峡の安全な航行や開放を実現したい。イラン側は商船に矛先を向けず、米側も条件反射のような報復攻撃をやめるべきだ。覚書の最終合意期限は来月16日に迫る。双方とも頭を冷やし、協議のテーブルに着いてほしい。