街中でチンピラ二人に呼び止められた高校1年生
高校1年生になった時、4つ上の兄が札幌に就職して、電気関係の仕事を就いていました。
私は高校1年生になると、幼稚園から付き合った同級生たちと3つの学校に別れ別れになったので、毎日、顔を合わせる幼なじみはいなくなりました。
GWになった頃、母から兄のところの手荷物を持って行って欲しいと頼まれたので、兄貴の様子を見るためとわかっていながらも、快く引き受けました。
札幌に住む兄の寮に荷物を届けると、休日出勤で働いていると先輩社員に言われたので、札幌市西区琴似の商店街の周りを一人でぶらついていました。
最初は、学ラン(学生服)の上下に、長いトレンチコートを着ていましたが、その日は暑かったので、学ランの上を脱いで、白シャツの胸を開いて黒ズボン、ロングトレンチコートでぶらつきました。
当時はもう身長173cmありましたので、遠くから見ると誰が見ても大人に見えるので、街を歩きながらタバコをふかし、缶コーヒーを飲みながら堂々と歩道の真ん中を歩いていました。
すると、遠くの方からヤクザ風のチンピラが二人、肩を揺らしてこちらにやってきました。
ぶつかって揉めても面倒なので、歩道側に1歩ずれると、チンピラも1歩、歩道側にずれました。
なに!と思って、今度は、車道側に2歩ずれると、チンピラも2歩ずれました。
ははーん、ぶつかって、イチャモンをつけたいんだな・・・。
じゃあ、堂々とぶつかってやろうじゃ無いかと思い、道の真ん中を胸を張って歩き続けました。
1歩づつ、近づくたびに私は歩くスピードを上げたので、二人の肩にぶつかった時は、相当痛かったと思います。
農家で鍛えたこの体を舐めるんじゃねえ!と心で思いながら、振り替えって「ぶつかってすいません。遠くしか見てなかったので、お二人が見えなかったんです。」と言い、頭を下げました。
二人のチンピラは、ものすごく肩が痛そうに抑えながら私を見上げてこう言いました。
「おめえ!何考えてんだよ!しっかり、前向いて歩け!
俺たち二人に肩がぶつかったのに、挨拶は無いんかい!!」
先ほど、振り返ってすぐにお詫びしましたが、聞こえませんでしたか?
それはどうも、すいません。もう一度、お詫びしますね。じゃあ!・・・・・。
お詫びの言葉を言ったので、私は振り返って、チンピラ二人を無視して真っ直ぐ歩き出そうとすると、今度は、私の右腕を掴んで「おい!待て!このまま黙って帰れると思うなよ!」とチンピラが叫び止めました。
道の真ん中で口論が始まったため、買い物帰りのおばちゃんたちが通れず困っていたので、「お兄さんたち、ここは歩道の真ん中なので、横にずれて通行者を渡らせましょうよ!」と言いましたが、、、。
「何言ってんだあ、お前!誰にものを言ってんだ!俺たちに命令するのか!!」
と大声を出し面倒だったので、二人の肩をグッと歩道の奥へ押し込み、買い物帰りのおばちゃんたちには早く帰って下さいと伝えました。
「警察を呼びましょうか?」と聞かれましたが、「大丈夫です。ただの揉め事ですので、すぐに終わりますよ。安心して家にお帰り下さい」と言いました。
それを聞いていたチンピラ二人はさらに怒り出して、
「何言ってんだ!お前!誰に、ものを言ってるんだと、さっきから言ってんじゃねえか!
お前バカか!俺たちは〇〇組のヤクザだぞ!お前、よく考えてものを言えよ!」と言いました。
あのう、失礼ですが、お二人は、本当に〇〇組のヤクザですか?
おかしいなあ。
本当のヤクザなら素人に手を出すことは御法度だし、そんなことして警察沙汰になったら組の組長に、どやされるのは誰でも知ってることですよ。
でも、お二人はまっすぐ私をめがけて歩いてきて、私が避けても角度を変えてぶつかってきたでしょ。
つまり、あなたたちはヤクザではなく、ただのチンピラでしょ。
だから、私を殴りたいのか、金をせびりたいのか、何か目的があると思うので、私にどうして欲しいかハッキリ言って下さい。
ただ私、まだ高校生なので、お金は数百円しか持っていません。
「お前が高校生!!!???そんなことあるかい!
こんなにでかい体をしていて、さらにさっき、ぶつかっても、びくりともしないその体は、高校生じゃないだろう!」
いえ、れっきとした高校生です。じゃあ、学生証を・・・。
あ!学生服の上着に学生証を入れたままだった・・・。
まあ、いいか・・・。
「おいお前、ちょっと聞くけど、高校生なら幾つだ?俺の甥っ子も高校生がいるので、すぐに年はわかるから言ってみろ!」
今年高校に入学したばかりなので、15歳です。
僕は早生まれなので、来年にならないと16歳にはなれません。
確か、15歳と16歳で、民放か刑法上、取り扱いが厳しくなると思いますが、いいんですか?
高校生にこんなにダラダラ絡んで・・・暇ですねえ、あなたたちも、、、。
「おめえ、本気で俺たちを怒らせたいのか!(拳を握りしめて)」
いやあ、怒っているのはあなただけですよ。
私は最初から冷静だし、ぶつかったので、お詫びもしたはずです。
だから、今、あなたが言っている意味が全くわかりません。
もし、私が25、26歳ならそれなりに対応しますが、今は、高校生ですよ!
まだイチャモン、つけるんですか?
こんなところを兄貴分たちに見られたら、きっと、あなたたちはバキバキにされますよ!
と話していたところに黒塗りの大きな車が止まって、一人の大きな男が降りてきました。
袖からはモンモン(刺青)が見えるし、胸を大きく開いた白いシャツは、アイロンがかかっていてカッコイイ男でした。
黒い上下のスーツも立派で、生地の良さも一目でわかります。
黒い靴はピカピカで、お店で売ってるより、さらに光っているカッコいい男でした。
おい、なに揉めてんだ?
俺の助けがいるか?
いやあ、兄貴、すいません。
こいつが絡んで困っているので、助けて下さい!
ちょっとお兄さんたち、それは言いがかりでしょ。
ぶつかったのは、お互い様だけど、私は「詫び」をきちんと入れました。
でも、まだお兄さんたちの詫びは聞いていないし、その上で私にどうのこうの言うのは、人間としておかしいでしょ。
僕の言うことが間違っているなら言って下さい。いくらでも、お詫びします。
プロのヤクザ屋さん
おう、兄さん、身長はいくつある?
はい、今、173cmです。
(腕と肩をつかみながら)
良いガタイしてるなあ、俺の組にも欲しいくらいだわ。
お前、喧嘩強いか?
いえ、僕は喧嘩はしません。と言うより、喧嘩にならないんです。
言い合っている時の感情だけの馬鹿な言葉の言い合いで、殴りあうのは嫌なんです。
本気で喧嘩するなら、殺す覚悟でやりますので、すいません、これまで喧嘩はやっていません。
ふーん、そうか、使えるガタイなのに、もったいねえなあ。
ところで、こいつらと何もめてんだ?
お前が何かちょっかい出すわけないと思うが、詫びをすることがあるのか?
先輩、さっきも言いましたが、私はただ道でぶつかった二人の男性と話し合っていただけで、揉めてるとは思っていません。
そうか、揉めてないんか、じゃあ、俺の仕事はないな!
じゃあ、帰るわ!
どうぞ、お帰りください。ここにあなたの大きな黒い車が止まっていると、きっと、警察が来ると思うので、余計面倒になるから、どうぞ、お早めにお帰り下さい。
おい、にいちゃん、いい覚悟だわ。
やっぱ、俺の組に欲しいなあ。
絶対に、他の組には入るなよ。
そんなことしたら、殺すからな!(^^)
そう言うと、二人のチンピラの頬を思いっきり一発づつ殴ってから、「後で事務所に来い!思いっきり、殴ってやるから」と吐き捨てて、車に乗り、急加速で発進していきました。
二人のチンピラは頭にきていたのに、兄貴分に怒られたので何も出来ず、ただ素直にトボトボ帰って行きました。
人生で起きることは、正直に生きるしかないんだと気づいた、高校1年生の時の、ゴールデンウイークの体験談でした。