ジャガイモさん、ごめんなさい。

小学生の頃、母のジャガイモの「植え付け」を手伝いました。
毎年、秋の収穫の時も手伝いますが、初めて「植え付け」をして大事なことを学びました。
畑の土をスコップで掘り起こし、土を盛り上げる「畝(うね)を作りなさい」と、母に言われました。
どれくらい高く土を盛ればいいのかわからないと言うと、「私のを見て覚えなさい」と母は言います。
でも、私は全てに疑問を持つ性格なので、母の畝(うね)と同じ高さのものと、母より高い畝(うね)と、母より低い畝(うね)を作って、発育の違いを見ることにしたのです。
一山づつ高さの違う畝(うね)を作り、ジャガイモを均等に植えてから、水をかけて放置しました。
北海道は、4月に植えたジャガイモの収穫は8月なので、毎月、そっと土を掘り起こしてジャガイモの成長を見比べていました。
母の畝(うね)より高い土の中のジャガイモは、結構いい感じに育っていますが、低い畝(うね)のジャガイモはうまく成長できないみたいです。
成長の違いを母に聞いても説明がわかりづらかったので、「ジャガイモさん」に直接、聞いて見ました。
すると、「ジャガイモさん」は、こう教えてくれました。
いいかい、子供よ。
なぜ、お母さんが同じ高さにしなさいと言ったのか、教えてあげよう。
実は、ジャガイモは隣のイモ同士が通信しているので、お互いに助け合うようになっているのさ。
根っこの伸び方をよく見てごらんよ。
君が高く作った畝(うね)のジャガイモは、必死に、下に根っこを伸ばしているだろう?
一人ぼっちじゃ、ジャガイモは育たないんだ。
だから、一生懸命に根っこを伸ばして、隣のジャガイモと根っこが絡み合うまで頑張っているのさ。
でも栄養分を根っこに取られすぎると、実になる栄養分が無くなるので、彼は辛いと思うなあ。
できれば、彼の下の土を掘ってあげて高さを整えてあげて欲しいなあ。
それとね、君が低く持った土の中のジャガイモをそっと見てご覧よ。
横からそっと土をどかして、見てご覧!
ゆっくり土をどかして、土の中を見てみると、小さいジャガイモがたくさんできていました。
他のジャガイモの土の中と比べると、できてる小芋の数が多いので、また、「ジャガイモ先生」に聞いてみました。
あのね、あまり土が深いと太陽さんの暖かさが下まで届かないので、土がフカフカにならないんだ。
だから深く掘りすぎた芋や、盛り土が少ないと生き残りをかけて、一生懸命に子供たちを増やすんだよ。
でも、あまり小さいジャガイモだと、売り物にならないと捨てられるんだ。
だから、僕たちは、作ってくれる人に喜んでもらえるように大きくなって収穫してもらうのが、楽しみなのさ。
人間に食べられるのは、嫌じゃないの?
嬉しいんだよ、僕らジャガイモは!
人参くんも、里芋くんも、大根さんも、玉ねぎさんのみんな同じさ。
だってね、僕らはもともと自然界にいたんだけど、誰も見つけてくれないし、いくら自分で大きくなっても、食べてもらえないと腐って死ぬだけなんだ。
だから、人間さんに美味しい美味しいって言ってもらえるのは、本当に喜びだから、お母さんにお礼を言っておいてね。
僕は口が聞けないけど、君のお母さんはいつも種芋を植える時に、「大きくなるんだよ!」って、声をかけてくれるのさ。
太陽が暑い日は、心配して日陰を作ってくれた時もあったなあ。
本当に野菜の気持ちがわかるお母さんだから、他の家のジャガイモたちから羨ましいがられてるんだよ!
え!他の家のジャガイモ同士も通信してるの?
あれ、人間はテレパシーって使えないのかい?
君はできると思うけど・・・。
ジャガイモはジャガイモ同士、人参は人参同士、里芋は里芋同士、大根は大根同士で通信してるんだよ。
だからどこかの畑で、化学肥料や農薬をどんどん入れたと聞いた時には、恐ろしいことが大きると、みんなビクビクしてるんだ。
でも君のお母さんは、「私は農薬も肥料も使わないから手間だけど、よろしく頼むね!」って言いながら育ててくれてるんだよ。
でも、もう土が痩せてきているので、お母さんに伝えてほしいことがあるんだ。
何?
もうね、お母さんも田んぼを増やすのに、忙しくて畑に手間をかけられないはずだから、化学肥料を使おうか悩んでいるので、もう、使ってもいいですよって教えてあげてね。
僕らは十分、お母さんに愛情をかけてもらったので、もういいんだ。
だって、他の畑は毎年、たくさん農薬を使うし、化学肥料で強制的に大きくさせられるので、自分で成長する力がどんどん弱くなってきてるんだ。
でも僕らは人間に食べてもらえることが喜びなので、お母さんに、もう、農薬も、化学肥料も使っていいですよって伝えてね。
本当に、ありがとうございますと言葉を添えてね。
お母さんの畑の野菜になれたことは、僕らの一生の自慢なんです。
僕らの思いは、この土にも、小芋にも、水にも記憶されているので、次の野菜君が誰か知らないけど、ちゃんと成長するように伝えておくから安心してね。
あとは、美味しく調理してたくさん食べてね!
僕は、畑の真ん中で大声で泣きました。
知らなかったとはいえ、自分勝手に判断してジャガイモさんを苦しめていたことを知ったので、自分が許せなかったんです。
畑の通路に倒れ込んで大泣きしていると母がやってきたので、ジャガイモ君の伝言を伝えました。
母は、「そうかい、そうかい、優しい子だね」と笑っていました。
晩御飯の味噌汁に、キャベツさんがいたので、また、大泣きしてしまいました。
キャベツさん、ごめんなさい、ごぼうさん、ごめんなさい、ワカメさん、ごめんなさい・・・
もう、涙が止まりません。
そこへ仕事を終えた父と兄が帰ってきて、「学、どうした?」って聞きますが、ご飯は喉に詰まるし、涙は出続けるし、何も答えられませんでした。
すると母が、「いいんだ、放っておきなさい。学は、今、泣きたいのさ。」とだけ言ってくれました。
それから毎朝、学校へ行く前に、畑に言って、「野菜さん、いつもありがとうございます!どうか、大きくて、美味しい野菜さんになって下さい。お願いします!」と大声で言うことが日課になりました。
今、日本中で化学肥料をたくさん使ってたくさんの野菜が作られていますが、その半分近くは捨てられています。
出荷前に規定のサイズに満たない野菜さんや、スーパーのお店に並ぶ時にも残った野菜は捨てられるし、買った野菜を調理もせずに、捨ててしまう人がたくさんいます。
コンビニ弁当に入っている野菜くんは一部ですが、30%の残った弁当は捨てられてしまいます。
だから、どうか、お願いです。
野菜くんたちを捨てないで、調理してあげて下さい!
日本中のわずかな場所で、昔の無農薬のまま野菜を育てている人たちもいます。
無農薬しか買わない奥さんたちが増えれば、農薬漬けの野菜を農家も作らなくなります。
できるだけ、無農薬や減農薬の野菜くんを子供たちに食べさせてあげて下さい。
キャベツにいる青虫君は、野菜くんが元気な証拠です。
大根の葉っぱは、最高に栄養があるので捨てないで食べて下さい。
人参さんの葉っぱも、美味しく食べられます。
どうか、調理をする女性たちは、野菜くんたちを自分で育てて食べてみて下さい。
絶対に、命がつながる生命力とテレパシーを感じるはずです。
ありがとうございます、いただきます!ごちそうさま!と必ず、言ってから野菜くんを食べて下さい。
あなたの声は、畑にいる野菜くんたちい届いて、希望になるのです。
どうか、よろしくお願いします!
小学1年生の時に、母が育てていた畑の野菜たちとの対話でした。
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