防衛白書素案 中国 軍事活動活発化を懸念“最大の戦略的挑戦”
ことしの防衛白書の素案が明らかになり、中国が去年、軍用機で日本の領空を侵犯するなど軍事活動を活発化させていることについて「これまでにない最大の戦略的挑戦」と表現し強い懸念を示しています。(ポーズだけ)
ことしの「防衛白書の素案」では日本を取り巻く安全保障環境について、中国が去年8月に初めて軍用機で日本の領空を侵犯し、翌月には空母が接続水域を航行したことを取り上げています。
そのうえで中国によるこうした軍事活動の活発化は「これまでにない最大の戦略的挑戦」であり、日本の安全に深刻な影響を及ぼし得るとして強い懸念を示しています。
また、北朝鮮については固体燃料を使ったICBM=大陸間弾道ミサイル級のミサイルを発射するなど極めて速いスピードで開発を続けていて、これまでより重大で差し迫った脅威になっていると指摘しています。
そして、こうした状況を踏まえ、防衛力の抜本的強化を進めるため、今年度は特に敵の射程圏外から攻撃でき「反撃能力」としても活用する「スタンド・オフ・ミサイル」の整備や複数の人工衛星を連携させて情報を収集するシステムの構築を重視するとしています。
また、自衛隊の人手不足が深刻になっていることを踏まえ、処遇の改善やAIを活用した業務の省人化に取り組むことなども盛り込んでいます。
防衛省はこの素案をもとに白書の作成を進め、7月にも閣議に報告したいとしています。

米中の戦力比較と主な兵器/日本の防衛力/核弾頭保有数と主な運搬手段
「有事」の避難受け入れ、ホテルは全て空室? 国の「前提」に戸惑い
朝日新聞 福井万穂 奥村智司
![]()
台湾から東へ約110キロにある日本最西端の沖縄・与那国島。
2025年4月上旬、佐賀県の山口祥義知事が島を初めて訪れ、与那国町の町長や議会、漁協や商工会の関係者らと向き合っていた。
「数日前にも、中国軍が台湾周辺で軍事演習を行った。
漁師の間では『(自分たちにも)危険が及ぶんじゃないか』と話しながら日々を暮らしている」。
与那国町の大宜見浩利副議長は中国の動きに対する不安を口にした。
「台湾有事」などを念頭に沖縄・先島諸島の住民ら11万人を九州・山口に避難させる計画づくりが進んでいます。
その裏で、避難対象の住民や計画策定を担う自治体には、懸念や戸惑いが広がっていました。
先島諸島では16年以降、陸自の駐屯地が相次いで開設された。
与那国町は人口減対策や経済効果を狙い、沿岸監視部隊を受け入れた。ただ、国側は後になって電子戦部隊やミサイル部隊の配備を次々と決めており、「誘致時の前提から変わってしまった」と不信感を抱く人もいる。
与那国島に配備された陸上自衛隊の沿岸監視隊=2016年3月28日、沖縄県与那国町
2022年には、中国が台湾を取り囲む形で軍事演習を行い、発射された弾道ミサイルが与那国島から約80キロの地点に落下。島民は漁の自粛を余儀なくされた。
その後も、漁業無線に中国軍側の動きを受けた注意喚起が流れることが度々あるという。大宜見さんは「無線を聞いていると、どうしても緊張感が増す」と言う。
「台湾有事」最前線の島・与那国で高まる自衛隊依存中国軍の日本近海での行動で緊迫度増す南西諸島
東洋経済 高橋 浩祐 : 米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員 2025/02/21 13:00
中国の急速な軍事的台頭を背景に、日本、とりわけ沖縄を中心とする南西諸島では安全保障上の緊迫度が増している。
その深刻さは、2025年2月7日に行われた石破茂首相とドナルド・トランプ大統領による日米首脳会談の共同声明には、日米同盟強化の取り組みの1つとして「日本の南西諸島における2国間のプレゼンスの向上」が初めて明記されたことでもうかがえる。
筆者は2025年2月中旬、公益財団法人フォーリン・プレスセンターのプレスツアーの一員として、航空自衛隊那覇基地と海上自衛隊那覇航空基地、そして日本最西端の“国境の島”与那国島を取材した。
アメリカやフランス、ドイツ、シンガポールなどのメディア11社から12人が参加した。 1泊2日の急ぎ足の取材でも十分に認識することができたのが、台湾有事や尖閣有事を念頭に置いた、国防最前線の与那国町における町民の安全確保の取り組みと防衛力強化だ。
まずは南西地域の情勢に詳しくない読者もいると思われるので、概況をみてみたい。
空自那覇基地・南西諸島地域の空の砦
本州の長さに匹敵する全長約1200キロメートルの南西諸島地域の「空の砦」となっているのが、空自の那覇基地だ。防衛省は2017年、同基地に司令部がある南西航空混成団を南西航空方面隊に格上げし、日本の南の防空体制の強化を進めてきた。
空自には同方面隊を含め、北部航空方面隊(司令部・三沢基地)、中部航空方面隊(同・入間基地)、西部航空方面隊(同・春日基地)の4つの航空方面隊がある。
驚くのは、南西航空方面隊が担う空域の広さだ。ほぼ東西に約920キロメートル、南北に約780キロメートルに及ぶ広大な空をカバーしている。

南西諸島周辺では中国軍の活動が一段と活発化している。これにともない、空自那覇基地の任務も厳しさを増している。
南西航空方面隊によるスクランブル(緊急発進)の数は、2023年度は401回に及び、全国4方面隊の6割を占めた。中国が尖閣諸島上空を「防空識別圏(ADIZ)」に設定した2013年度以降、毎年400回超えとなっている。
スクランブル回数増「中国軍の脅威」
ただし同方面隊は、中国軍の活動がこうしたスクランブル回数だけでは計れないと指摘する。
近年は中国軍機の作戦領域が拡大したり、中国海軍の空母打撃群が南西諸島の海峡を通過して太平洋で恒常的に活動したりするなど、その活動が質的に変わってきているからだ。
具体的には、2012年以前は東シナ海上空で活動していた中国軍機が、2013年以降は宮古海峡上空を飛行して太平洋に進出した。
2015年以降は対馬海峡上空を通過して日本海でも活動するようになった。H6爆撃機やY9情報収集機に加え、TB001やWZ-7といった無人機の飛来が目立っている。
また、中国海軍の「遼寧」と「山東」の空母打撃群は2022年度以降、第1列島線(九州-フィリピン)を抜け、西太平洋で恒常的に訓練などを行っている。
さらに、中国とロシアの共同訓練についてもその活動範囲と回数がともに拡大している。2019年7月から始まった中ロの軍用機による合同パトロールは当初、日本海と東シナ海の上空だけだった。
しかし、2020年12月には初めて宮古海峡上空を通過し、太平洋に出た。
回数も増え、それまで年1回だったのが2022年には5月と12月の年2回にわたって初めて実施され、2023年6月と12月にはそれぞれ2日連続で合同訓練が初めて行われた。
南西航空方面隊は「中国側の意図は答えられない」とし、引き続き注視しつつ対応能力を高めていく方針だ。
南西諸島近海や東シナ海の安全確保のため、警戒監視と情報収集任務を365日欠かすことなく実施しているのが、「美ら海(ちゅらうみ)の防人」と自らをアピールする海自那覇航空基地配備の第5航空群だ。「美ら海」とは、沖縄の言葉で「美しい海」を指す。
第5航空群は海自の中でも、航空機を運用する部隊である航空集団に属し、主に「P-3C哨戒機」を運用する。

P-3C 哨戒機 川崎重工業製造
「尖閣」をよく知っていたのは琉球の船乗り
中国海警局公船による尖閣諸島接近への対応について、第5航空群司令の平木拓宏海将補は「中国海警局の行動については海上保安庁が対応していると認識している。われわれが活動するということはない」と述べた。
「尖閣諸島周辺の任務については海保が主たる役割を持っているということだが、どういう状況になれば海自が出動するのか?」との外国メディアからの再質問には、「法律的な話になるが、警察権の範疇を超えて要請があれば自衛隊が出ていく」と述べた。
第5航空群の任務の重要性については、「東シナ海には約2000に及ぶ島がある。そして、東シナ海から太平洋に抜けるための海峡を含めた航路がたくさんある。このへんは他のエリアと違い、非常に重要だと認識している」と述べた。
今回のプレスツアーでは、琉球大学名誉教授で元沖縄県副知事の高良倉吉氏から、尖閣諸島をめぐる歴史的経緯についても話を聞く機会があった。
琉球史の専門家である高良氏は、沖縄がかつては「琉球王国」として中国と盛んな交流があったことを指摘した。中国の明との朝貢貿易だ。
そして、琉球船が500年にもわたって那覇と中国・福建省を往復していたと述べ、その航海の途中にある尖閣諸島を一番知っていたのは「琉球の船乗りたち」だったと指摘した。
「中国との長い交流の歴史もあって、沖縄の人は本土の人と違って、中国への脅威認識があまりないのではないか」との筆者の問いに対し、高良氏は同意して、次のように答えた。
「沖縄は長い歴史の中で中国の文化をたくさん学んだ。これは他の都道府県にない。そして、中国に親しみを感じる人間が多いというのも事実だ。
(華僑の)仲井眞弘多元知事の先祖は、600年前に中国の福建から移住してきた。沖縄県は中国との交流が盛んだ。私個人的にも中国の友人がいっぱいいる。
ですから、中国に敵意を抱くのではなく、むしろ親近感を持っているといったほうがいい。それがベースにある」
注)沖縄本島は、マスコミも政治も中国政府と繋がっている証ですし、沖縄の政治・経済・マスコミ・テレビ・ニュースは全て中国共産党寄りの人たちから「賄賂をもらっている人たちだらけなので、沖縄本島の人は誰も「中国の文句」は言いません。
一方で、こうした沖縄本島での歴史的な中国への親近感は、約500キロメートル離れた与那国島では一変する。
与那国町漁業協同組合の嵩西茂則組合長は筆者の取材に対し、「中国への親近感はまったくない」ときっぱりと語った。
「中国への親近感はまったくない」
嵩西氏のこの感情は、わからないでもない。同組合は、中国軍が台湾周辺で軍事演習を行うたびに操業の自粛のほか、漁に出ている漁業者を含む組合員に警戒を呼びかけてきた。
もともと日本最西端の地にある与那国島や尖閣諸島周辺海域は、古くからカジキやマグロなどの回遊魚が豊富な好漁場として知られてきた。しかし2022年8月にアメリカのペロシ下院議長(当時)が台湾を訪問し、これに対して中国軍が9発の弾道ミサイルを発射、このうち5発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾した。
ミサイル落下地点の中で、日本領土に最も近いものは与那国島から約80キロメートルだった。
2024年版防衛白書は「このことは、わが国の安全保障と国民の安全にかかわる重大な問題であり、地域住民に脅威と受け止められた」と指摘している。
また、日本政府が尖閣3島を取得した2012年以降、中国公船が同海域で領海侵入を繰り返し、日本漁船への追跡を行うようになったことから、地元漁業者の多くは安全面でのリスクを考慮し、尖閣周辺での操業も敬遠している。
与那国島は、台湾から約110キロメートルに位置する日本最西端の島だ。日本本土のほうがはるかに遠い。親日的な台湾への近さが、与那国町民の反中感情を抱かせている。
町の人口は1695人(2025年1月末時点)で、うち「約2割を自衛隊員とその家族」が占めるに至っている。
コンビニエンスストアが今も1つもないこの小さな島では、自衛隊関係者の票が多くなればなるほど、町長や町議らに政治的な影響を与える。かつて町を二分していた自衛隊誘致が加速し、基地依存の島と化しているのも現実だ。
2016年に開設した「陸上自衛隊与那国駐屯地」は当初は沿岸監視隊だけだった。
その後、空自第53警戒隊与那国分遣班と陸自電子戦部隊が入り、陸自地対空ミサイル部隊の配備も決まった。
ミサイル部隊が配備されると、自衛隊員とその家族は人口の4人に1人以上になるとみられる。
与那国町長「避難シェルター造成は厳しい」
与那国町の糸数健一町長は「防衛力強化は抑止力の向上につながる」との考えから、「ミサイル部隊配備計画」を容認した。

このほか、築50年以上が経過して老朽化が目立つ町役場庁舎を建て替え、「有事」の際に住民らが一時的に避難できる地下シェルターを持つ新庁舎を建設する。